アメリカの景気回復期待から2月29日のECBの資金供給は失望売りとまではならず

先週は、上昇が続けば一旦ピークの可能性を想定し、ECBの資金供給日である2月29日(水)が1つ目の転換点になりやすいところだとしました。それは、日銀がインフレターゲットを含む追加の金融緩和を発表した日(2月14日)から2月29日まで、日経平均は9%近く上昇しており、また、騰落レシオ、移動平均乖離率、ストキャストなど、全てのテクニカル指標が過熱感を示したことで、何かキッカケがあれば下落に転じる可能性があったからでした。

そのキッカケとなりうるものがECBの約50兆円の資金供給でした。資金供給よって逼迫した欧州の金融機関にゆとりができることで、欧州信用不安が後退することを期待して上昇してきたため、50兆円レベルでは失望売りの可能性があると考えていました。日経平均は、2月29日に9,866円の高値をつけた長い上ヒゲとなり、引け後の予想通りの50兆円のECB供給額を受けて、翌日に9,865円まで上昇し、ここでも長い上ヒゲとなるダブル天井の形となって▼15の9,707円程度の下げとなっています。NYダウも、2月29日に▼53の12,952ドルとなり、翌日3月1日(木)は△28の12,980ドルと反発しました。

結局、ECBの約50兆円の資金供給についてIMFは一応の評価はするものの、足元の信用動向には完全に反映されておらず、また、欧州全域の銀行間融資の回復にも繋がらず、域内の民間信用が改善する可能性は低いとしています。しかしながら、失望売りとならず、材料出尽し程度で済んだのは、アメリカの経済指標から、景気が市場予想を超えて回復しているとみているからでしょう。2月29日にバーナンキ議長が議会証言でQE3に対する発言をしなかったことは、景気回復を認めてきているとの見方があります。かといって、いずれ市場最高値を試す動きとなるにしても、上昇し続ける相場はありません。一旦下落したあと調整を経て再上昇というのが普通ですので、ここからは、例え行き過ぎの上昇があったとしても、一般投資家は利益確定して次の下げを待つところと思われます。日経平均の調整も、NYダウ待ちといえるでしょう。NYダウは、2月28日(火)は13,005ドルと一時終値で13,000ドルを回復しましたが、上値重く、その後は回復できないでいます。今は過剰流動性相場ですので、資金の流入とテクニカル的な過熱感との綱引きとなっています。日経平均も、先週末3月2日(金)は△69の9,777円となるものの、9,800円台を前に綱引きとなっているといえます。

今週は、下値は限定的だが調整気味の動きを想定

今週は、3月9日(金)のSQを前に調整気味で上値が重い動きとなるとしても、この日に、改善が期待されている2月米雇用統計の発表を控えていることで、日米ともに下値は限定的で、高値圏でのもみあいとなりそうです。

調整としては、日柄調整か値幅調整を伴ったスピード調整か見方が分かれるところですが、一旦の調整の可能性は高いといえます。NYダウは、史上最高値(2007年10月9日の14,164ドル)まであと1,000ドル強で悪年10月からの上昇率は25%、日経平均も11月から21%上昇していますので、たとえ目先行き過ぎの上昇があったとしても、ここは利益確定を優先して次の下げを待ってみるところと思われます。

日経平均の日足をみると、29日(水)は9,866円の上ヒゲ陰線、3月1日(木)も9,865円の上ヒゲ陰線とザラ場でダブル天井の形となり、3月2日(金)は、前日比では△69の9,777円ですが、9,803円の上ヒゲ陰線となり、3日連続の陰線となって目先のピーク感を示しています。

大きく下げれば、絶好の買チャンスとなってきます。先週末で週足のローソク足が、1996年以来約16年ぶりに8週連続で陽線となっています。「底値後の連続陽線は相場の先高感を示す」とされており、3月2日には、株価の長期的な趨勢を示す日経平均の200日移動平均線も約7カ月ぶりに上向きに転じました。需給関係をみても、空売りが大量に膨らんでおり、大きく下げると空売りの買い戻し、勢い付けば踏み上げともなりますので、今回は下げても心配はないと思われます。ただし、頭の隅に入れておかなければならないのは、4月中旬予定のイラン制裁に対するイランの反撃(ホルムズ海峡封鎖)や欧州債務問題の更なる悪化です。

本日は、手掛かり材料不足から利益確定売りに優先となって▼78の9,698円で引けました。今週は、週末にSQを控え、荒い動きとなるケースも考えられます。5日移動平均線(9,746円)を切って引けていますので、短期調整入りの可能性が高くなりました。日柄調整か値幅調整かわかりませんが、値幅調整になると大きな買チャンスと考えられます。

(指標)日経平均

先週2月27日(月)の分析では、先週は上昇が続けば一旦のピークもとし、ECBの資金供給日29日(水)が1つの転換点になる可能性を想定しました。テクニカル的な過熱感や上昇率からみると、9,800~1万円の間で目先のピークとなることも想定していました。

2月29日(水)は、前日のNYダウの13,000ドル台のせと、引け後のECBによる資金供給への期待から9,866円まで買われたものの、長い上ヒゲを出して9,723円で引けました。3月1日(木)も、9,865円まで上昇するものの、ダブル天井のような形となって▼15の9,707円と反落し、高値波乱となりました。週末3月2日(金)は、9,800円を前に膠着相場となって△69の9,777円で引けました。今週は、3月9日(金)にSQを控え、テクニカル的な過熱感を解消する必要もあって、調整気味の動きを想定しています。本日3月5日(月)は、手掛かり材料不足から利益確定売りに押され、後場になると、9,673円まで下げて、大引けは▼78の9,698円でした。ここから日柄調整となるのか値幅調整となるのか、じっくり様子を見るところです。

日経平均

(指標)NYダウ

先週は、2月29日(水)のECBの資金供給の結果によっては失望売りとなって一旦の調整も想定しました。結果的には、ECBの資金供給は市場予想を少し上回る程度で失望売りとなるところでしたが、アメリカの経済指標に好調なものが多く、これが株価を下支えして高値圏のもみあいに終始しました。2月28日(火)には、13,005ドルとフシ目の13,000ドル台にのせたこともあり、その後、ザラ場では13,000ドル台にのせるものの、終値では回復できず、1週間では▼5ドルの横ばいでした。

今週は、3月9日(金)発表の2月米雇用統計が注目となります。市場予想では、増加数が1月の24万3,000人並みとみられていますので、予想を下回ると13,000ドルを前に一旦の調整も考えられます。原油価格が上昇しており、企業のコスト増やガソリン価格の上昇による個人消費へのマイナスが懸念材料となってきます。

NYダウ

(指標)ドル/円

2月27日(月)の分析では、昨年7月8日の81.471円を突破すれば、次の上値のフシは82円となってきますが、そろそろ一服するところであり、81円水準でもみあって、一服するのかは材料次第だとしました。

2月27日(月)は、G20会合でIMFの基板強化が見送られ、リスク回避の円買いとなって80円水準まで円高が進行しました。その後、80円台半ばの動きとなっていましたが、2月29日(水)になると、バーナンキ議長がQE3について発言しなかったことで、ドルが買われて81円台まで上昇しました。週末3月2日(金)は、1月消費者物価指数が4カ月連続のマイナスとなってデフレが収まらず、日本経済の懸念から円売りが進み、さらに、アメリカの雇用環境の改善や中国PMI製造業指数が予想を上回ったことでドル買い・円売りとなり、81.864円と昨年5月26日以来の安値となり、引け値は81.787円でした。今週は、週末に米雇用統計を控え、改善が期待されていることでドル買い・円売りの基調は変わらず、昨年5月24日の82.208円を上に抜ければ83円を目指すという動きが想定されます。80.5~82.5円を想定。

ドル/円