アメリカ株式のリーマンショック後の戻り高値更新を受けて、日経平均も9,000円を試す動きへ

先週は日柄調整続くが、3日(金)のアメリカ株式は金融危機後の高値更新

先週は、日経平均が1月25日に8,911円と約3カ月ぶりの8,900円台のせとなったことで、目先過熱感から一服し、決算発表も本格化することで日柄調整が続くと想定しました。結果、日柄調整となり、シャープに示されるように大手電気メーカー中心に大幅な業績悪化が相次ぐものの、全体としては底堅く推移し、高値8,893円、安値8,774円と狭い範囲の値動きとなり、週間では9円安となりました。

今回の世界同時株高は、欧州債務問題という悪材料が欧州9カ国の格下げで一旦織り込み済みとなり、その後のギリシャ・ポルトガルのデフォルト問題も何らかの対策が出るものとして一旦懸念が薄らぎ、加えてアメリカを中心とする世界的金融緩和の流れから株・商品が買われてきていることが要因です。金価格の上昇は長期的な金融緩和を先取りしているとしました。

しかし、先週の時点では、NYダウがリーマンショック前の高値に接近してきたことで一旦調整する可能性を考え、また、日経平均も騰落レシオが120%を超えていることで過熱感があり、もうしばらく日柄調整が続くことを想定しました。ただ、米雇用統計の結果によって1月25日の8,911円を終値で抜けることができれば、9,000円を試すともしています。

NYダウの上昇止まれば、今週は8,900円前後での値固めも

週末2月3日(金)のアメリカ市場では、注目の米雇用統計で非農業就業者数が2011年4月以来の高水準となり、失業率も0.2ポイント低下して8.3%となったことで、NYダウが△156の12,862ドルと終値ベースでリーマンショック後の戻り高値を更新しました。ナスダックは、ザラ場高値を更新する△45の2905Pとなりました。これを受けて、本日の日経平均は8,939円と大幅高で寄り付くものの、9,000円水準では大きな売り圧力があり、8,949円をつけたあとは、上下30円程度と値動きの乏しい展開となりました。物色は主力株に移っており、これまでの低位材料株は調整に入る可能性があります。NYダウがここでもたつくようですと、日経平均も9,000円を前に8,900円前後の値固めとなるかもしれません。低位材料株は十分な押し目を待つ必要があります。

2012年は日経平均10,000円のシナリオも

過剰流動性から考えられる楽観的シナリオ

1月25日に、FOMCで異例の低金利政策延長を決定したことで、世界は再び過剰流動性(金余り)相場となり、今年は株・商品市場の上昇が起こる可能性が出てきました。欧州債務問題への懸念は繰り返されることになりますが、政治家は分かっている材料ですので、対策が遅れて大きな下落となる場面はあっても、何らかの対策が出て落ち着くことになります。むしろ、今年は、中国をはじめとする新興国も金融緩和を実施していますので、世界的な金融相場となりそうです。金価格の上昇がその流れを先取りしているといえます。また、アメリカ大統領選を10月に控えており、オバマ大統領はその時まで株高を演出する必要があります。

FOMCが超低金利政策を延長して2%のインフレターゲットを導入することを表明したことで、これを達成するために、中央銀行は機動的かつ柔軟に金融政策を変更することができますので、QE3も視野に置いていることになります。これだと、先週末にNYダウがリーマンショック後の高値を更新したことで、次は13,000ドル目標となりますが、最終的には史上最高値(2007年10月11日の14,198ドル)を目指す動きも考えられなくはありません。世界の株式市場の中で、欧州債務問題の影響を直接受けていない米国と英国の株式市場をみると、最高値まで、NYダウで約10%、FTで約20%ありますので、上昇余地は十分に残っています。

一方、米国の金融緩和が続くとドル売りとなって円高が維持され、日本の株価にとってはマイナスという側面があります。しかし、日経平均は長期の底値圏にあり、世界株式が上昇すれば割安感から買われてきます。今年は14兆円を超える復興需要があるため、日本株は見直されてきます。NYダウと比較してみると、NYダウが目先13,000ドルを試す動きになると、日経平均は昨年10月31日の高値9,152円を抜き、そうなると9,351円が上値抵抗ラインとなります。NYダウは13,000ドル水準で一旦調整し、次の上昇で史上最高値14,198ドルを目指す動きが出てくると、日経平均も10,000円を目指す動きが出てきます。

今年はどのような投資スタンスを取るべきか

世界的過剰流動性相場から上記のような楽観的シナリオが描けるものの、欧州債務問題はこれから根本的な解決策が必要になってくるところです。加えてイランの核問題もありますので、楽観的シナリオを前提にして株を長期保有することはリスクがあります。

今年は大きな変動の年です。良くも悪くも世界経済が大きく動けば、株式市場も大きく上下動します。株式市場が動かなければ、投資家は株式市場から去っていきます。昨年の日本市場の後半は、日経平均の値幅で正味500円くらいしか動いておらず、個別株もほとんど動かず、全く面白味のない相場となって投資家が去っていきました。そういう意味では、今年は8,000~10,000円の幅の値動きという可能性があり、面白い相場となりそうです。ただし、8,000~10,000円の幅の中で循環物色しながら上昇していく可能性がありますので、短期売買が基本です。過熱化したところでは利益確定し、空売りできる人は空売りを実行するのがよいでしょう。世界の不透明な動きを考えると、100円以下の銘柄は別として、今年は高値掴みとなってしまわないよう短期売買に徹した方がよいかもしれません。

本来、柴田罫線というものは中長期トレンド分析による転換を表したもので、トレンドがハッキリしない限り、買い・空売りともに長めの保有はリスクがあります。そのため、出島式投資ワールドでは、柴田罫線の転換銘柄を直近のファンダメンタルズを考慮しながら買いと損切りを入れた短期売買に修正し、参考銘柄として提供しています。

(指標)日経平均

先週は、週始めの1月30日(月)に、アジア市場の軟調さや円高を受けて▼48の8,793円の3日続落となりました。しかし、その後は底堅い動きとなって3日連続高したあと、週末2月3日(金)は▼44の8,831円と、週間では9円のマイナスでした。出来高は、4日連続の1兆円超えとなって投資家心理が改善に向かっていることを示しています。週末2月3日(金)のアメリカ株式がリーマンショック後の高値を更新したことを受けて、日経先物は8,910円となっています。今月10日のSQ清算日を控えて9,000円のコールが急上昇しているため、9,000円台前後を見込んだ買いが入っていることになります。

しかし、本日は8,939円と大幅高で寄り付くものの、8,949円の高値をつけたあとは上値重く、上下30円程度と値動きの乏しい展開となって△97の8,929円で引けました。一応、目先の小さなフシである1月25日の8,911円を終値で上回りました。NYダウがここでもたつくようですと、円相場が高止まりしていることもありますので、9,000円を前にもみあいが続くことになりそうです。

日経平均

(指標)NYダウ

1月26日のザラ場高値12,841ドルをつけたあと、目標達成感からの一服やギリシャの債務削減交渉の延期、ポルトガルのデフォルト懸念で1月30日(月)には、12,529ドルまで下げる場面もありましたが、終値では小幅安となって底堅い動きを続けました。そして、週末2月3日(金)は、米雇用統計で非農業就業者数が市場予想を大幅に上回り、また、失業率も0.2ポイント低下して8.3%と5カ月連続で改善し、雇用情勢の大きな変化が示されたことで、△156の12,862ドルとリーマンショック後の終値ベースでの最高値を上回りました。

リーマンショック後の最高値を更新したことで、市場は強気ムードが支配的となり、13,000ドルを試す動きが想定されます。13,000ドル水準は、昨年10月4日の10,404ドルからの上昇トレンド(A)の上値斜線にアタマを押さえられるところとなります。

NYダウ

(指標)ドル/円

先週の予測では、76.5円は下値堅く、再び76.5~77.5円のボックス相場に戻ることを想定しました。しかし、週明け1月30日(月)は、欧州市場で複数のユーロ圏の経済指標が悪化したことでリスク回避の円買いとなり、76.213円まで円が買われました。その後、2月1日(水)の76.039円までの円買い・ドル売りとなり、2月2日(木)まで76.2円台の引け値が続くものの、週末2月3日(金)には、米雇用統計が大幅改善となったことでドル買いが進み、76.734円まであって76.552円で引けました。

下値が堅いとしていた76.5円を切って76.039円までの円買い・ドル売りとなりましたが、週末は76.552円で引け、週の引け値では76.5円を守った形となりました。今週は、76.5~77.0円の狭いボックスの動きが基本となりそうです。

ドル/円