日経平均は一旦上放れするものの、12月8日(木)のEU首脳会議を受けて下落

先週は、8・9日のEU首脳会議に注目とし、日経平均はチャートからは8,700円を終値で上に抜くと下向きの先細三角形の上放れの形となるとしました。ただし、上放れとなっても市場ボリュームが小さいため、上値は限定的としています。

先週は、日経平均は1週間で107円(1.24%)の下落となりました。欧州債務問題を巡ってEU首脳会議で好悪材料が入れ替わる一進一退の展開でした。12月7日(水)は、前日の▼120の8,575円(S&Pがユーロ圏15カ国の格下げ検討)からEU首脳会議でのESMとEFSFの運用拡大期待で△147の8,722円となって買転換が出現すると同時に下向き先細三角形を上放れるという形になりました。しかし、その後、ECB総裁やドイツのESMに対する否定的発言などから首脳会議への失望が高まり、8日(木)にNYダウが急落したことで、週末9日(金)の日経平均は▼128の8,536円と大幅下落しました。

引け後の欧州では、EU首脳会議でEU各国の財政規律を強化するための新条約締結で合意し、IMFを通じて緊急融資の財源を確保することも合意され、アメリカの12月ミシガン大学消費者信頼感指数が予想を上回ったことで、NYダウは△186の12,184ドルと反発しました。前回の下げ分をほとんど取り戻しましたが、他のナスダック、S&P500の3指標とも前日の高値を抜くことはできませんでした。

欧州債務問題一服。年末特有の相場の可能性

今週は、EU首脳会議が終わり、当面の債務危機への対応策としては不十分な見方が多いものの、財政規律強化を目的とした新条約締結を目指すことで合意されたことは、将来の財政統合へと一歩を踏み出したとして評価される面があります。政治的なイベントとして目先の1つのヤマを越えたとすれば、日経平均は再びアメリカ経済の動向に対するNYダウの動きに注目することになります。13日にはアメリカでFOMCが開かれ、年末が期限の給与減税延長問題に注目となり、また、経済指標では13日の11月小売売上高、15日の11月鉱工業生産指数が注目されます。これまでは、足元の米経済指標は堅調な内容が目立っていましたが、欧州・中国経済に減速感が出ており、米国でも実体経済の悪化の兆しが確認されれば、株価にとって重荷になってきます。

日経平均は、下値は堅いものの、高止まりする円高相場や市場ボリュームの無さから上値は追えない状況となっています。トヨタが先週末の発表で、円高進行により2012年3月期の連結営業利益が前期比6割減との見通しを示したことで、日本を代表する主力株は買えないということになってきます。本日はプラスで寄り付きましたが、ジリジリと値を下げてマイナスで引けました。そうなると、低位株や材料株の相場がまだ続くことになります。

本日は、△116の8,652円で寄り付いてしっかりした動きとなり、後場には8,682円まで上昇するものの、手掛かり材料難で売買代金は1兆円を割れる8,772億円の薄商いで、高値圏での膠着相場となって△117の8,653円で引けました。75日移動平均線(本日8,659円)を上回って終わることができませんでした。ムーディーズによるユーロ圏の格下げ示唆の報道がありましたが、本日の株式市場は反応しませんでした。

本日の日本市場の動きを見る限り(引け後のアメリカ市場の動きがどうなるかわかりませんが)、目先的には欧州危機について不透明感が後退したようにもみえます。ここからは年末特有の動きが出てくる可能性がありますので、主力株はあまり動かず、値動きの軽い低位株や小型株が注目されてきます。また、年内までの換金売りが出やすいため、上げ下げが交互に起こる「モチつき相場」となり、そこで飛びつくと高値掴みになる可能性がありますので注意が必要です。

(指標)日経平均

先週は、欧州債務問題を巡って8・9日のEU首脳会議の内容がどうなるかによって、株式市場の動向に与える影響が違うため注目でしたが、失望と期待から一進一退の動きとなりました。日経平均は、8,700円を終値で上に抜くと7月22日の高値10,149円からの下向き先細三角形の下げを上放れするとしました。12月7日(水)に、EU首脳会議でのESMの規模拡充観測から△147の8,722円となって買転換が出現すると同時に上放れの形になりました。しかし、ECB総裁やドイツのESMに対する否定的発言などから8日(木)にNYダウが急落したことで、週末9日(金)の日経平均は▼128の8,536円と大幅下落しました。引け後の欧州では、EU首脳会議でイギリスを除く加盟国26カ国が財政規律を強化するための新条約締結で合意したことが評価され、また、アメリカの経済指標が予想を上回ったことで、NYダウは△186の12,184ドルと前日の下げ分を取り戻す反発となりました。本日の日経平均は、先週末のNYダウの急反発を受けて△117の8,653円となりました。

今週は、先週8・9日のEU首脳会議で打ち出された危機対応策がひとまず不安感を後退させることになれば、NYダウが堅調となり、日経平均も戻りを試すことになります。高止まりしている円相場を考えると上昇しても上値は重いものの、11月4日の8,814円を突破できれば10月31日の9,152円が次の上値ポイントとなります。下げても下値は限定的で、その場合は低位株、材料株の物色が続く可能性が高いといえます。

日経平均

(指標)NYダウ

先週末のNYダウは、注目の雇用統計で失業率が大幅改善したものの欧州債務問題の懸念が根強く、ほぼ変わらずの▼0.6の12,019ドルで引けました。週明けのNYダウは、イタリアが財政再対策を決定し、独仏首脳が欧州連合条約の改正を共同提案することを好感して大幅上昇するものの、S&Pによるユーロ圏15カ国の格下げ検討ニュースから上げ幅を縮小して△78の12,097ドルとなりました。その後、8・9日のEU首脳会議への期待から、12月6日(火)は△52の12,150ドル、12月7日(水)は△46の12,196ドルと続伸しました。しかし、12月7日の分析で8・9日のEU首脳会議の内容が期待ハズレに終われば、失望売りとなって急落する可能性があるとしていました。

12月8日(木)の欧州では、ECB総裁の「国債購入の拡大を示唆した覚えは無い」との発言やドイツがESMとEFSFの共存とユーロ共通債の発行案を否定したことで、NYダウは▼198の11,997ドルとなりました。EU首脳会議2日目の12月9日(金)は、債務危機対策としては即効性に疑問が残るものの、欧州の財政統合強化を好感して△186の12,184ドルの急反発となりました。しかし、前日の急落分をNYダウ、ナスダック、S&P全てわずかに抜けることができずに終わりました。この形ですと、12月7日の12,257ドルを上に抜けずに12月8日の11,966ドルを終値で下に切ると、短期の売転換出現となってきます。

NYダウ

(指標)ドル/円

先週の予測では、8・9日のEU首脳会議の内容次第とし、期待通りであれば78.278円を試す動きとなり、期待ハズレに終われば円買いとなって77円を試す動きとなるとしました。

12月5日(月)~7日(水)は、EU首脳会議を前に77円台後半の狭い値動きとなりました。12月8日(木)は、EU首脳会議への失望感から77.131円まで円が買われましたが、その後、前向きの話が伝わってきたことで77.639円で引けました。12月9日(金)は、新たな財政協定で23カ国首脳が合意したことが伝わると、ユーロが買われてドル売り、円売りとなり、円はドルに対して77.768円となって引けは77.551円でした。今週は、年末を控えてドルが需要面から買われやすくなり、円とドルの関係は綱引き状態で小動きとなる可能性が高いといえます。ただし、13日のFOMCで米経済に対して楽観的な見方が出れば、ドル買いが進む可能性があります。77~78.3円のレンジ内の動きを想定。

ドル/円