先週は世界株式がギリシャでの国民投票の実施があるかないかに振り回される

先週は、NYダウに要注意とし、様子見が基本としました。11月3日(木)の祭日までの週前半は、10月31日(月)に、政府・日銀の円安介入で1ドル=75円台半ばから79円台までの円安進行となったことで、日経平均は、一時プラスとなったものの、終値では▼62の8,988円となりました。そして、週明けの海外では、ギリシャ首相がEU諸国会議で合意された包括戦略について承認を得るために国民投票を実施すると正式に表明したことで、欧米株式は2日続けて大幅下落し、日経平均も、11月1日(火)は▼152の8,835円、11月2日(水)は▼195の8,640円と下放れ寸前のところまできました。

その後、ギリシャの国民投票が見送りとなり、欧米株式もやや持ち直し、NYダウは、11月2日(水)は△178の11,836ドル、11月3日(木)は△208の12,044ドルとなり、休日明けの日経平均も△160の8,801円で引けました。

日経平均の上値が重い第一の理由

日経平均は、NYダウに連動するものの、上昇率は低く、上値の重い展開となっています。また、先週10月31日(月)の政府・日銀の介入で3円以上の円安となったにもかかわらず、ほとんど反応していません。その一番の理由は、2011年度下期の上場企業の業績にあるといえます。今年始めの時点では、ほとんどのアナリストが主力の輸出企業を中心にV字型の回復を予測していました。

各企業は、11年4-6月期決算の時点では、東日本大震災を見込んで下期の「V字回復」を狙っていましたが、急激な円高や世界景気減速で大幅な下方修正を迫られた格好となっています。11月5日(土)の日経新聞によると、みずほ証券が11月2日までに11年9月中間決算を終えた573社を対象にまとめた12年3月期は、前期比14.2%減の見込みとなっています。これは、従来の前年同期比31.0%の増益予想から一転0.7%の減益予想に転落する見通しとなります。各企業は、これまで以上にコスト削減や生産の海外移転をすすめる等円高への対応が求められることになります。ただ、目先的には決算発表で悪材料出尽しとなって業績悪化を織り込んでいるものが多くみられますが、予想以上の悪化でソニーのように一段安となっているものもあります。

日本市場は、上述したように、国内では企業決算の下方修正から上値が重い展開となっていますが、あとはどこまで戻りを試せるかは欧州債務問題が落ち着くことになって欧米株式が堅調となるかどうかにかかっています。先週末は、ギリシャの国民投票が見送られ、ギリシャ議会がパパンドレウ内閣を信認したことで、最悪の事態は避けられました。しかし、イタリアで国債利回りが急騰しており、イタリアの債務問題が浮上してくる可能性が出ています。

今週も上値重く決算を受けて個別株物色の動きを想定

チャートをみると、短期的には9月26日の8359円を安値とし、10月31日の9,152円を高値とするボックス圏内の動きが想定されます。この安値から高値までの1/2押しで8,756円、2/3押しで8,624円ですので、11月2日の安値8,640円は2/3押し水準までの押し目となります。この2/3押しを切るようですと、10月31日の9,152円が当面の天井となってしまう可能性があります。しかし、先週末に△160の8,801円と反発していますので、このまま戻りが続くかどうかに注目となります。8日のトヨタ自動車などの決算発表や9日の中国の主要経済指標が良ければ主力株の買い戻しで9,000円台回復も期待できるところです。10月31日の9,152円を引線の終値で抜ければ一段高もありますが、現状では厳しいといえます。頼みのNYダウも、先週は6週間ぶりの下落で9月下旬以来の上昇相場もひとまず一区切りとなった可能性が高く、12,000ドルの攻防が想定されます。

来年は日本株式相場上昇の期待も

アメリカのエコノミストの間では、QE3は余程アメリカ経済が悪化しない限り無いと言われていましたが、欧州債務問題からの金融危機の懸念で、その実現性が出てきました。10月21日にFRB副議長がQE3を実施する可能性を示したことで、11月2日(水)のFOMC声明文の公表で打ち出されるのではないかとの期待もありましたが、ここでは金融政策は現状維持とされ、そのあとのバーナンキ議長の記者会見でQE3に対する含みが示唆されました。前回のQE2は、国債を大量に買って市場に資金を供給し、過剰流動性を起こすという金融緩和策ですが、今回のQE3は「国債の大量買入れ」に加えて「住宅ローン債権を大量に買い入れる」ことで住宅市場と建設市場の雇用創出を狙うということを、バーナンキ議長が言っています。これは、来年の早い時期に実施することになるかもしれません。その背景には、来年のアメリカ大統領選挙があります。アメリカ大統領が二期目で落選している場合の原因は経済の悪化ですので、来年は何が何でも経済を良くしようとする手を打ってくるでしょう。ただし、QE3が実行されれば日米金利差から円高基調となりますので、輸出企業中心の日経平均の上値は重いといえますが、世界的な出遅れ感からどこまで戻れるのかとなります。しかし、来年に関していえば、日本独自の材料で期待できるのが東日本大震災への復興予算です。

既に12兆円規模以上が想定され、今週にも第三次補正予算が衆議院を通過する予定です。復興相場は、3月15日の安値をつけたあと関連銘柄が2週間ほど急騰しましたが、一部の銘柄を除いて、原子力事故の広がり・政局混乱からの補正予算の遅れなどで息の長い復興相場とはなりませんでした。今回の第三次補正予算による景気浮上効果はほとんど織り込まれていませんので、どこかでこの第三次補正予算を織り込む上昇相場が期待できることになります。それが本格的上昇となるためには、外国人の買いが戻ってくる必要があります。これまでは、欧州債務懸念を前に欧州のファンドなどが日本株を売り続けてキャッシュ化を高めてきていますので、欧州問題が一旦落ち着いて日本株を買い直してくれば、来年は大きな復興相場が生まれるかもしれません。

OECDによる日本の2011年度GDPは▼0.5%とマイナス成長とされていますが、来年は復興対策によって△2.5%の成長としています。相場環境が落ち着けば、この成長率は外国人投資家にとって見逃せないものといえます。今、株式投資家のかなりの人が株式投資を断念していますが、ここは我慢してじっくりキャッシュ化を高めて待っていると、予想以上のチャンスがくる可能性があります。諦めて相場も見ない状況を作れば、せっかくのチャンスを失うことにもなります。将来の年金もあてにならないという現実の中で、いかにリスクを少なくして「お金でお金を作る」かという視点で投資(株式投資に限らず)を考え直す必要があります。

(指標)日経平均

先週10月31日(月)は、政府・日銀の円売り介入で一気に1ドル=79円台の円安となったことで、日経平均も一時9,152円まで上昇したものの、持続せずに▼62の8,988円で引けました。この日の引け後の欧州で、ギリシャ首相が、欧州債務危機対策としての「包括戦略」合意についての承認を得るために国民投票を行うことを表明したことで、欧米株式が急落し、日経平均も、11月1日(火)は▼152の8,835円、11月2日(水)は▼195の8,640円となって短期の売転換が出現しました。しかし、NYダウが2日連続の上昇となり、日本が休場中の11月3日(木)に、ギリシャが国民投票を実施しない可能性が出てきたことや欧州中央銀行が予想外の0.25%の利下げを決定したことで、欧米株式が大幅上昇し、つれて、11月4日(金)の日経平均も△160の8,801円で引けました。

週明け11月7日(月)は、ギリシャ問題からイタリアの債務問題へ焦点が移ったことで欧州債務問題が引き続き不透明要因となり、方向感なく25日移動平均線(8,736円)が意識された動きとなって▼34の8,767円で引けました。今週は、下値では、11月2日の安値8,640円を守れば、キッカケ次第で主力株が買われて9,000円を試す場面も考えられますが、8,640円を切ると8,500円を試す動きとなります。チャートでは、9月1日の9,098円、10月31日の9,152円と二山を形成して11月2日の8,640円で売転換した形ですので、9,000円水準は目先上値抵抗ゾーンとなっています。

日経平均

(指標)NYダウ

10月27日(木)に12,284ドルと上値抵抗ラインに到達していたことで、先週はNYダウに注意としました。週明け10月31日(月)は、利益確定売りで始まったところが、午後には、ギリシャ首相が、EU会議での欧州債務危機に対する「包括戦略」合意についての承認を得るために国民投票を行うことを表明したことで▼276の11,955ドルとなりました。このギリシャの国民投票の結果によってはギリシャのデフォルトが現実のものとなる可能性があることから、11月1日(火)は▼297の11,657ドルの大幅続落となりました。11月2日(水)は、注目のFOMCで、金融政策は現状維持でQE3の示唆はなかったものの、バーナンキFRB議長が記者会見でQE3の可能性に含みをもたせたことで△178の11,836ドルと反発しました。この反発のあと、すぐに11月1日の11,630ドルを終値で切ると売転換となって上昇トレンドが終わるところでしたが、11月3日(木)は、ギリシャが国民投票を実施しない可能性が出てきたことで△208の12,044ドルの大幅続伸となりました。週末11月4日(金)は、10月の雇用統計で非農業部門雇用者数が予想を下回ったことやG20でIMFの資金基盤強化について合意できなかったことから、一時▼194の11,850ドルまで下落しました。しかし、失業率は改善されたことで▼61の11,983ドルで引けました。

先週は週間で▼247ドル(▼2.0%)と6週間ぶりの下落ですので、一旦一服してもおかしくありません。今週は、目立った経済指標もないことから、ギリシャの連立政権の動きやイタリアの債務問題を気にしながら12,000ドルを守れるかどうかの動きとなりそうです。

NYダウ

(指標)ドル/円

先週の予測では、10月12日の77.463円を戻り天井に急落して下降トレンド(A)の下値斜線にサポートされた形となっており、ここからは多少下げても、政府・日銀の介入警戒感もあることから戻りを試す可能性があるとしていました。ところが、10月31日(月)未明に、円が1ドル=75.35円と史上最高値を更新したことで、午前10時25分頃に政府・日銀が単独の為替介入を行い、一気に79.500円までの円安・ドル高となりました。引け値は、78.166円でしたが、どこまで持続性があるのか注目されています。

その後の動きは、ギリシャ首相の「ギリシャはユーロ圏加盟を巡る国民投票も実施する」と述べたことで、円が強含む動きをみせましたが、11月3日(木)に77.890円までの円高となり、介入警戒感から11月4日(金)は78.226円で引けました。今週は、欧州でイタリアの債務問題が浮上して円高圧力がかかりやすいものの介入警戒感もあり、78円を挟んだもみあいが続きそうです。77.5~78.5円を想定。

ドル/円