当面の相場環境の見通し

先週末のメッセージでは、日経平均はろく買が出現して75日移動平均線を抜けたことで、円高一服なら本格的な戻り相場もとしました。いずれそうなる可能性が高いと思いますが、目先のNYダウの動きをみると、一旦調整してもおかしくないところにきています。

10月28日(金)のNYダウの分析で、前日27日(木)に一時△415の12,284ドルまで上昇して△339の12,208ドルで引け、今年2月から東日本大震災が発生した3月11日までのボックス相場の上限(終値では12,288ドル、ザラ場では12,391ドル)にほぼ到達してきており、ここからは、押し上げ材料となった欧州債務問題も一旦材料出尽しになるため、上値は重いとしています。この日の引け後のNYダウをみますと、終値は△22の12,231ドルの小幅続伸となったものの、高値が12,251ドルと前日の高値12,284ドルに届かず、戻り売りで上値が重くなっていることが見て取れます。まして、11月1~2日のFOMCでQE3が打ち出されるとの期待から、上昇を後押しした面があり、QE3が打ち出されても予想の範囲内であれば一旦下落となるところです。今回の急騰で、あたかも欧州債務問題やアメリカ景気後退懸念が無くなったかのような雰囲気になっていますが、欧州債務問題の過剰な不安が一旦解消したことによる大きな反発に過ぎないとみた方がよいでしょう。

欧州債務問題の今後

今回は、EU首脳会議で域内の資本増強やギリシャ国債の50%減免、さらに、欧州金融安定基金(EFSF)の規模拡大に関して包括的戦略が合意できたことから、欧州信用不安が一旦後退して急騰しました。次は、この包括的戦略合意の具体化と進捗状況で好悪材料が入り交じり、乱高下となる可能性があります。ギリシャが一息ついても、次にイタリアやスペインへの波及が懸念され、緊縮財政による景気悪化という状況も出てくることになります。

米国景気の今後

経済の先行きに関して悲観論が強かったものの、最近では経済指標の改善が目立ち(例えば10月27日発表の7-9月期GDPが前期を上回る)、楽観論が増えてきています。個人消費が好調なことがそれを後押ししています。しかし、雇用や住宅市況の改善は遠く、7-9月期GDPの数字は年前半の低成長の反動という見方もあります。そのため、11月1~2日のFOMCで、欧州債務不安も含めた内外の経済状況を見極めた上で、追加の量的緩和第3弾(QE3)を実施するかどうか決めることになります。

日本経済の今後

アメリカがQE3に踏み切れば、円高は一旦材料出尽しとなって円安方向への戻りも期待できますが(昨年は11月のFOMCでのQE2発表後、円高は止まって日本株上昇)、先延ばしにすると円が高止まりのままとなります。そうなると、輸出産業中心の日本経済は厳しい状況が強いられますが、円高については主要企業が想定為替レートを1ドル=75~78円に変更してきています。このため、利益確定を下方修正してきていますが、株価の動きをみると悪材料出尽しとなって反発しているケースが多く、円高をかなりの主要企業が織り込んできているといえます。円高が一服となれば、今後は11兆円以上の復興対策としての景気対策が実行されますので、日本経済にとってはプラスに作用してきます。

今週は様子見、買いは一旦の調整待ち

欧米株式は、上値抵抗ラインを突破して上昇したものの既に過熱感が出ており、このまま上昇しても上値重く一旦の下落を待つところです。日経平均は、75日移動平均線を上回って9,000円台を回復し、強気になるところですが、NYダウが下落して日経平均だけが上昇するという自律的な動きは考えにくく、今週は様子見となります。仮にNYダウが堅調な動きをしても、日経平均の上値抵抗ラインは9,200円と9,300円というところで、このまま上昇しても大した上昇にはなりませんので、次の押し目を待つところです。もし9,200~9,300円水準を試せば、保有株で利益が出ているものを一旦利益確定するのがよいかもしれません。特に、今週は11月1~2日のFOMC、11月3~4日のG20首脳会議、週末の米雇用統計を控えており、相場の乱高下が想定されるところでもあります。

本日の日本市場は、日米共に直近の高値圏まで上昇してきていることもあり、利益確定売り優先となって▼30の9,011円で寄り付き、一時8,988円をつけて8,900円の攻防となっていました。ところが、午前10時25分頃から政府・日銀が断続的な円売り介入を実行し、一時79.50円までの円安となりました。海外市場で31日未明に1ドル=75.35円の史上最高値更新となっていたことで、タイミングをうかがっていたと思われます。これを受けて、日経平均は、前場の後半に一時△101の9,152円まで上昇して前引けは△45の9,096円となりました。しかし、後場になると、出来高が薄いため新規の買いが入らず、戻り売りをこなしきれずに再びマイナスに転じ、大引けにかけて下げ幅を拡大して▼62の8,988円となりました。11月2~3日のFOMCに対する様子見や、月末最終日でかつ主要企業の決算発表が相次いでいることで、新規の買いがなかったともいえます。下げても下値は新しい悪材料が出ない限り限定的で、8,800円台では止まるところです。

(指標)日経平均

10月21日(金)のNYダウが三尊天井を突破したことで、さらに戻りを試す展開が続くとし、先週の日経平均は、8,943円以上で引けるとろく買出現で9,000円台へとしました。先週のNYダウは、さらに一段高となって10月27日(木)は△339の12,208ドル、週末10月28日(金)は△22の12,231ドルとなって、目先は上値抵抗ゾーンに入ってきています。

日経平均は、10月24日(月)に△165の8,843円となったあと、25日(火)は▼81の8,762円、26日(水)は▼13の8,748円と一服しました。そして、27日(木)は△178の8,926円、28日(金)は△123の9,050円となってろく買が出現し、75日移動平均線を上回って引けました。しかし、今回の上昇は欧州債務危機に向けた包括的戦略の合意がなされたことで、過剰な反応の悲観から急反発したもので、買戻しが終われば再び方向感がなくなってきます。

NYダウ、ナスダックともに当面の上値抵抗ゾーンに入ってきていますので、FOMCの結果次第では下落となるところです。日経平均も、先週末は75日移動平均線を少し上回って引けていますが、今週は様子見となるところです。本日は、為替市場で31日未明に75.35円の最高値をつけたことで、午前10時25分頃から政府・日銀が単独で円売り介入に踏み込みました。これを受けて、日経平均は一時△101の9,152円まで上昇するものの、下げ幅を縮小して前引けは△45の9,096円となり、後場になると、再びマイナスに転じて▼62の8,988円となりました。本日は、月末最終日でかつ主要企業の決算発表が相次いでいることで売買代金も低調で上値を追えない状況でした。結局、円高修正で戻りを試す場面もありましたが、FOMCを控えて新規の買いも入らず安値引けとなりました。

日経平均

(指標)NYダウ

10月21日(金)に11,808ドルとなって三尊天井の高値である8月31日の11,739ドルを突破したことで、先週は「三尊天井の崩れ型の暴騰」という形となって戻りを試す動きになるとしました。10月24日(月)は△104の11,913ドルと続伸し、10月25日(火)は▼207の11,706ドルと急反落しましたが、10月26日(水)の分析では急スピードで上昇してきたため当然の一服とみることができるとしました。10月26日(水)は△162の11,869ドルと切り返し、10月27日(木)は、欧州債務危機に向けた包括的戦略が合意され、また、アメリカ7-9月期GDPが予想と一致したものの前期(△1.3%)を上回る年率△2.5%となり、さらに、個人消費も予想を上回ったことで、一時△415の12,284ドルまで上昇して△339の12,208ドルで引けました。週末10月28日(金)は、前日の大幅反動やFOMCを前に積極的な買いは見送られたものの、△22の12,231ドルの小幅続伸となって3カ月ぶりの高値で引けました。

12,000ドル水準のフシで止まるかと思いましたが、今年2月から3月11日の東日本大震災までのボックス相場(A)の上限まで上昇してきました。ここからは、欧州債務問題も一旦材料出尽しとなって国内景気に目が向いてきます。また、過熱感も出ており、11月1~2日のFOMCで「QE3」が打ち出されなければ失望感で下落、何らかの形で打ち出されても想定の範囲内であれば材料出尽しとなるところです。

NYダウ

(指標)ドル/円

先週の予測では、76~77円の間のもみあいとなりそうですが、10月26日の独仏共同声明が失望に終われば、再度最高値挑戦の可能性もあるとしました。結局、10月25日(火)の75.749円、10月26日(水)の75.730円、10月27日(木)の75.678円と3日連続の最高値更新となり、週末10月28日(金)は75.827円で引けました。

10月25日(火)は、10月26日(水)のEU財務相会合が中止になるという報道で75.749円と史上最高値を更新し、10月26日は、安住財務相が「協調介入は大変なこと」と発言したことで、介入警戒感が薄れて75.730円と高値を更新しました。そして、10月27日(木)は、日銀政策金融会合で積極的な緩和策が出なかったことで75.678円と3日連続の高値更新となり、引け値で75.928円と75円台となりました。翌日も75円台で引けています。

チャートをみると、ドルは8月19日に75.95円の長い下ヒゲを出した後、9月9日の77.847円まで戻すものの、9月22日の76.114円まで下落しました。その後、緩やかな短期の上昇トレンド(B)となっていましたが、10月12日に77.463円で戻り天井となり、緩やかな下降トレンド(A)の下値斜線にサポートされた形となっています。ここから多少下げることはあっても、政府・日銀の介入警戒感もあることから、もみあったあと戻りを試す動きが出る可能性があります。31日未明に、円が1ドル=75.35円と戦後最高値を更新したこともあり、本日10月31日(月)の午前10時25分頃に政府・日銀が単独の為替介入を行いました。午後15時頃の時点で79.280円近辺で推移しています。単独介入ですので、持続性がどこまであるのかみるところです。

ドル/円