8月9日(火)に8656円の長い下ヒゲを出して反発

先週の予測では、前週末8月5日(金)のアメリカ市場の引け後に、S&Pによる米国債格下げの発表があったことでこの影響を見極めるところとしました。日経平均の下げ止まりは世界同時株安の状況によりますが、目先の下値抵抗ラインとして9000円、9800円、8605円(3月15日の終値)、8225円(3月15日のザラ場安値)があるとしました。

欧米株式の下げ止まりは、欧米当局がどのような株式市場対策を出すかにかかり、8月5日(金)にS&Pが米国債の格下げを発表したことで、世界同時株安が進行しそうな状況だとしました。そして、米国債の格下げを受けて、8月8日(月)のNYダウは▼634の10809ドルの大幅下落となりました。8月9日(火)のFOMC声明でゼロ金利政策を2013年半ばまで維持するとし、必要に応じて追加的な金融政策を実施するとしたことで△429の11239ドルと2年5ヶ月ぶりの上昇幅となりました。翌日8月10日(水)は、フランスの国債格下げ懸念が生まれて▼519の10719ドルと急反落したものの、8月11日(木)は、欧州銀行株の空売り禁止検討報道で△423の11143ドルとすぐに反発し、週末8月12日(金)は、予想を上回る7月小売売上高を受けて△125の11269ドルの続伸で引けました。

1週間を通して欧米が乱高下し、また、為替で円がドルに対して史上最高値を試すという動きとなりました。日本市場の動きは、8月8日(月)は▼202の9097円となり、引け後のNYダウが国債格下げを受けて▼634の10809ドルと大幅下落したことで、8月9日(火)の前場は、400円を超す下げとなって8656円と3月15日の8605円に接近しました。しかし、後場になると、急速に下げ幅を縮小して▼153の8944円となりました。8月10日(水)は、アメリカ株高を受けて反発するものの、円高が上値を押さえて△94の9038円でした。8月11日(木)は▼56の8981円、8月12日(金)は▼18の8963円となって欧米株式の様子見となっています。

テクニカル面からみると、8月9日(火)は8656円の長い下ヒゲを出して、この日の出来高は33億株の大商いとなっており、目先は底打ちの可能性もあります。しかし、結局はNYダウの動きにかかっており、先週末8月12日(金)は買転換の出現で終わっており、期待したいところです。とはいっても、NYダウが当面どう動くか注目するところです。

先週のNYダウが金融危機以来の乱高下となった背景と当面の動き

NYダウは、7月21日に直近高値12794ドルをつけて7月27日に12302ドルで売転換が出現し、2009年3月9日の安値6440ドルからの長期上昇トレンド(A)を下に切って、約3週間で16%下落しました。特に、8月4日(木)に▼512の11383ドルの大幅下落以降、8月11日(木)までの6営業日連続で日中値幅(取引時間中の高値と安値の差)は400ドルを超え、金融危機直後の2008年10月以来の記録になりました。売買高も7月は1日平均で10億株に満たなかったのに対し、この間は連日で20億株の大台を超えています。これは、個人が保有株を処分する一方で、短期の値幅取りを狙った証券トレーダーの売買が急増しているからだということです。

この下落の背景については、6・7月の経済指標が、製造業・サービス業の活動の鈍化や個人消費の伸び悩みを示していたことで、アメリカの景気回復懸念が現実のものとなってきたということ、また、欧州の財務問題や中国の景気に陰りがみえてきたことで、世界景気に悪影響が出てきたというコメントが多くみられます。しかし、NYダウの大きな乱高下のもう1つの理由として、ヘッジファンドや大手機関投資家が損失確定の売りを出したことが大きな下げの要因だという見方もあります。というのは、こうした投資家は、保有株の評価損が一定の水準を切ると、自動的に反対売買するルールを設けており、急激な株安が自動的な売りを誘発して株安に拍車をかけるという負の循環になっているからです。理由がどうあれ、NYダウは3月16日の安値11555ドルを切って下放れしたのであり、当面は反発しても戻り相場が続くことになります。

先週、NYダウは、8月8日(月)に米国債の格付けの引き下げを受けて▼634の10809ドルの大幅下落となり、8月9日(火)に10588ドルまで下げて△429の11239ドルの急反発となりました。しかし、8月10日(水)は、▼519の10719ドルの再急落となって柴田罫線でろく売出現となりました。ここでのろく売は、8月9日の10588ドルを切らずに反発し、8月9日の高値11251ドルを終値で抜けると、買転換が出現するとしました(8月11日のNYダウ分析で)。そして、8月11日(木)に△423の11143ドル、週末8月12日(金)は△125の11269ドルとなって短期の買転換が出現しました。この先週末の反発の背景は、欧州での金融株の空売り禁止で欧州株式が大きく上昇したことを好感したことや、アメリカの主要企業による積極的な自社株買いや企業の好決算が相次いだことがあげられます。空売り規制は、過去にアメリカ市場で導入して一時的な効果で終わっているという経緯があるので注意が必要です。ただし、当面新しい悪材料が出なければ、8月9日の10588ドルがセリングクライマックスだったということになるかもしれません。そのためには、3月16日の安値11555ドルを上に抜くことがポイントとなります。

日経平均は上昇しても円高長期化懸念から上値は重い

NYダウが短期の買転換出現で戻りを試すことになっても、FOMCでのゼロ金利政策が2013年半ばまで維持されるという声明から長期金利が低下し、日米金利差が縮小して円高基調が長期化する懸念から、日経平均の上値は重いことが想定されます。本日8月15日(月)の日本市場は、欧米の株高を受けて、前場に△118の9082円で寄り付いて9117円まで上昇するものの、円高懸念から輸出関連株が上昇幅を縮小しました。しかし、後場になると、ジリジリと戻りを試して△110の9074円となり、8月SQ値9054円を超えて終わりました。ただし、薄商いの中を先物の買戻しで持ち直したものであり、相場が落ち着いたかどうかは、まだ欧米株式の様子を見る必要があります。

(指標)日経平均

前週は、下値の下限とした9300円を切って米国債格下げ発表が8月5日(金)にあったことで、先週は、格下げの影響を見極めるのが基本としました。

先週のアメリカ市場では、米国債の格下げやフランス国債の格下げ懸念といった悪材料、FOMC声明や欧州銀行の空売り禁止という好材料を受けて、日中足で400ドルを超える乱高下が続きました。同時に、為替はリスク回避の円高、日米金利差からの円高となって史上最高値に接近する動きとなりました。これを受けて、8月8日(月)に▼202の9097円、8月9日(火)は、前場に8656円まで400円を超す下げとなったあと、後場に、急速に下げ幅を縮小して▼153の8944円となり、8月10日(水)は△94の9038円と反発しました。その後、8月11日(木)は▼56の8981円、8月12日(金)は▼18の8963円で引けました。NYダウの急落と円高進行の割りには底堅い動きといえます。日銀によるETF買い期待と、東証1部のPBRが1倍を割り込んでいることで、割安感があるためといえます。ただし、円高基調のため上限も限定的で9300円台というところです。本日は、9117円まであって9032円まで下落する場面がありましたが、後場は切り返して△122の9086円となり、8月SQ値9054円を終値で上に抜けました。買いの形になるためには、このまま大きく上昇してしまうか、それとも8944円を終値で切って一旦ろく売を出し、すぐに反発して本日の高値9117円を上に抜ける必要があります。

日経平均

(指標)NYダウ

先週は、前週の8月4日の▼512の11383ドルの大幅下落から、8月11日(木)まで6日連続で日中値幅が400ドルを超える乱高下となり、週末8月12日(金)は、11269ドルで短期の買転換となって終わりました。

8月8日(月)は、米国債の格付け引き下げを受け、▼634の10809ドルとなり、8月9日(火)は、FOMCの声明で2013年半ばまでゼロ金利政策を継続するとしたことで、△429の11239ドルの大幅反発となりました。しかし、8月10日(水)は、フランス国債の格下げ懸念から▼519の10719ドルの急反落となってろく売出現となりました。この法則は、安値圏で出現した時は買転換しやすいとしていましたが、今回は、8月11日(木)に欧州銀行株の空売り禁止で欧州株式が全面高となったことで、NYダウも△423の11143ドルと反発し、週末8月12日(金)は7月小売売上高が予想を上回ったことで△125の11269ドルと短期の買転換が出現して引けました。今週は、欧州債務問題とアメリカの景気の先行きに注目した神経質な展開となりそうですが、今週は8月15日(月)にNY連銀製造業景況指数、8月18日(木)にフィラデルフィア連銀指数が発表されますが、これらがしっかりしていれば、一先ず戻りを試すことになりそうです。上値ポイントは、まずは3月16日の11555ドルとなります。

NYダウ

(指標)ドル/円

先週は、8月4日(木)に日本政府が介入を行って80.216円までの円安となるものの、長く続かず、8月5日(金)は78.498円で引けました。そのため、さらに円安が進むためには、日本政府の介入の持続性と、アメリカのFOMCの金融政策を待つということになるとし、77~80円の間のもみあいが続きそうだとしました。

結局、日本政府の単独介入が欧米から批判的にみられたことで、8月8日(月)の78.436円を高値にドル売り・円買いが進み、8月9日(火)のFOMCでゼロ金利政策を2013年半ばまで継続すると表明したことで長期金利が低下し、日米金利差の縮小から76.698円までの円高となりました。さらに、フランス国債の格下げ懸念まで出てきたことで、リスク回避の円買いが高まり、8月11日(木)には76.324円と再び3月17日の史上再高値76.25円を試す動きとなりました。その後は、77円をはさんだもみあいとなり、8月12日(金)は76.787円で引けました。8月4日に、日本政府の介入によって80.216円まであって78.859円で買転換したものの、介入効果はすぐに消滅し、一転して8月9日の76.938円で売転換となりました。目先は、欧米の債務問題が一服しそうですので下値は堅く、逆に、アメリカの長期金利の低下からドルの上値は重く、76~78円の中で77円を挟んだ動きが続きそうです。

ドル/円