予想外の大幅上昇で9,400~9,800円のボックスの上放れへ

これまで9,400~9,800円というボックス圏を基本とする動きでしたが、先週は、ギリシャ議会での緊縮財政実行法案の可決によってギリシャのデフォルト懸念が当面無くなり、アメリカ市場での経済指標の改善が目立ったこともあって、NYダウは6月27日(月)に△108の12,043ドル、6月28日(火)に△145の12,188ドル、6月29日(水)に△72の12,261ドル、6月30日(木)に△152の12,414ドル、7月1日(金)に△168の12,582ドルと5日連続の大幅高となり、1週間で△645ドルの上昇となりました。これによって日経平均は、国内事情に原発事故解決への不透明さや政局の不透明さがあるものの、日本株式の割安感から先物主導で6月28日(火)の△70の9,648円、6月29日(水)の△148の9,797円、6月30日(木)の△18の9,816円、そして、週末7月1日(金)にはついに△51の9,868円となって200日移動平均線(7月1日時点9,863円)を終値で突破し、9,400~9,800円のボックスも上放れしました。

6月27日(月)の予測では、9,700円水準は目先の上値のフシであり、外国人投資家の2週連続の売り越しやアメリカの経済指標の悪化によっては上値が重くなり、現状の薄商いの中で上値を追うのは難しいとしていました。しかし、上述したように、ギリシャ問題への懸念が遠のき、アメリカの経済指標が改善したことで想定とは逆の薄商いの中を先物主導で上昇して9,400~9,800円のボックス圏を上放れる形で終わりました。原油先物価格も6月27日(月)に一時1バレル=90ドルを切る場面がありましたが、その後は反発となって上昇を続け、週末7月1日(金)は95ドル水準まで上昇してきています。ということは、アメリカの6月末のQE2終了を前に逃避していたリスクマネーが、すでに悪材料織り込み済みとなって回帰しつつあるといえます。NYダウの上昇もエネルギー株によって加速している面もあります。日経平均の上昇は、自律では動けずNYダウ次第ですので、今週は週末の雇用統計が大きな注目となります。

今週も日経平均はNYダウ次第。週末の雇用統計に注目

チャート分析では、先週は相場環境の着実な改善がみられ、今週どこまで戻りを試すことができるのかということになります。「売り方」は、日本の大地震の影響を完全に織り込んでいないとして空売り優先できていますので、さらにアメリカ経済に好材料(特に雇用統計の改善)が出ると空売りの買い戻しを誘って一段高となるところです。

しかし、ここにきて短期的な過熱感を示すテクニカル指標が出てきました。騰落レシオが週末7月1日(金)には120.71%と震災後の最高水準となって買われ過ぎの状態を示しています。7月1日時点で連続4日以上続伸している銘柄が200銘柄以上、逆に、3日以上続落している銘柄は16銘柄しかありませんので、相場は過熱しているとみることができます。過熱しているからといってすぐに下落するとは限りませんが、リスクは高まっていると考えなければなりません。過熱状態が続いてそれに乗れず儲け損なったとしても、それは結果ですので諦めることです。過熱状態の株式市場が下落に転じれば、それまで買っている投資家が多いことになりますので売りが大量に出て大きく下がることになります。このまま上昇が続けば続くほど急落する可能性は高まると考えられます。

ネットや雑誌の株式欄を見ますと、「7月以降サマーラリー突入」「7月にも1万円台定着」「年末には11,000円へ」などといった強気の見方が広がっています。もしかすると、そのようになることもあるかもしれません。ただ言えることは、専門家は現状の株価の動きを見て評価するため、下げ相場では下げの理由を説明して下値の目処を予想し、上げ相場では上がる理由を探して説明し、上値の目処を予想することになります。あまり当たったものを見ることはありませんし、むしろ、そういう記事が出たときが上値や下値のピーク近辺だったりすることがあります。例えば、6月28日(火)の日経新聞の記事に「世界株安が鮮明に」として5-6月景気に懸念、国債へ資金として分析されていましたが、この日から世界的な株高(NYダウ5日連続高)となっています。そして、今度は強気のコメントが多く出てきました。

ここでの投資スタンスの考え方

株式投資を単なるマネーゲームにしないためには自分の投資スタンスを守り続けなければなりません。大きな調整を待って買い、ほどよいところ(買い値の10~20%)で利益確定して次の下げを待つということです。今回は、9,400~9,800円のボックス相場を基本にして、9,400円を割れば9,000円水準が出て、そこが買い場であるという想定をしてきました。結果的には、6月17日の9,318円を安値に反発となっていました。そのため、リスクを取れる人は、9,000円水準の下げがある可能性を前提に9,400円を割ったところで買い下がり方針で買っていくとし、リスクを少なくする人は9000円水準を待つとしました。最近、当サービスでパック銘柄を推奨しておりませんが、パック銘柄というのは大きな調整の時に提供するものです。今回も9,000円水準まで下がることがあれば提供する準備はしていましたが、残念ながら提供するに至りませんでした。しかし、パック銘柄はこれまで推奨してきた銘柄の中から、その時点でそれぞれの株価の位置を検討し、5銘柄ほど厳選しているものですので特別な銘柄ではありません。この9,400~9,800円の上放れは、新規に買っていくというよりこれまで買った株をどこで利益確定していくのかと考えるチャンスがきたと考えるべきところだと思います。

本日は、アメリカ株高と、為替が1ドル=80円台後半・1ユーロ=117円台後半と円安方向にあることから、△112の9,980円で寄り付いて前場は1万円を前に膠着状態となっていました。しかし、後場になると、上海株式が2%弱の上昇となったこともあって一時10005円と1万円台を回復しました。しかし、14時過ぎには先物に大量の売り物が出て9,940円まで下落し、大引けは△97の9,965円となりました。この1万円台を一時回復したことが目先の目標達成となるのか、それとも1万円台のせとなっていくのかは、今週のNYダウの動き(つまり雇用統計などの経済指標)にかかっています。

(指標)日経平均

6月24日(金)のNYダウが▼115の11934ドルで引けていたことで、週明けの日本市場は▼100の9,578円のスタートとなりました。そのため、先週の予測としては、9,700円水準からは上値重く、NYダウが下落すれば再び調整が続くとしました。

しかし、そのNYダウは、ギリシャの財政緊縮案が可決されるとの期待から上昇を開始し、経済指標の改善もあって6月27日(月)から7月1日(金)まで5日続伸となって7月1日は△168の12,582ドルで引けました。日経平均は、6月22日に買転換が出現した後もたついていましたが、6月28日(火)から4日続伸となり、週末7月1日は△51の9,868円となって9,400~9,800円のボックス圏を上放れすると同時に200日移動平均線(7月1日時点で9,863円)も突破して引けました。引け後のアメリカ市場では6月のISM製造業景況指数が予想外の改善となったことで△168の12,582ドルとなりました。本日7月4日(月)は、アメリカ株高と為替の円安を好感して△112の9,980円で寄り付き、一時10,005円をつけましたが、大引けは△97の9,965円と上げ幅を縮小しました。チャートでは、10,200円水準までは真空地帯ですが、1万円水準には大量の売り物が出ています。これを超えるには、NYダウがさらに上昇するのかにかかります。

日経平均

(指標)NYダウ

6月20日に12,080ドルで買転換が出現したものの、週末6月24(金)に▼115の11,934ドルと12,000ドルを切って引けました。しかし、週明け6月27日(月)のアメリカ市場は、ギリシャのデフォルトが回避されるとの楽観的見方から△108の12,043ドルとすぐに12,000ドルを回復しました。その後もギリシャ救済が高まり、原油価格が反発してエネルギー株が相場を押し上げ、6月28日(火)は△145の12,188ドル、6月29日(水)はギリシャ議会での中期緊縮財政法の可決を好感して△72の12,261ドル、さらに、6月30日(木)はギリシャ議会で緊縮財政実行法案が可決され、6月シカゴ購買部協会景気指数が予想を上回ったことで△152の12,414ドルと4日続伸となりました。高値では、6月21日の高値12,248ドルを軽くクリアした上に12,381ドルの関門も突破し、12,427ドルまでありました。12,500ドル前後はフシになるところですので一旦止まるかと思っていましたが、週末7月1日(金)は、6月ISM製造業景況指数が予想外の55.3の上昇となったことで、△168の12,582ドルと心理的フシでもある12,500ドルを突破して一段高となりました。原油価格も戻りを試す動きっとなっており、リスクマネーが再び戻ってきているようです。ここからの上値のフシは5月19日の高値12,633ドル、その上は5月10日の12,781ドルとなります。ここを試すには、週末の雇用統計次第となります。

NYダウ

(指標)ドル/円

先週の予測では、QE2が6月末に終了することで新たなドル売りを仕掛けづらく、月末には輸出企業が円買いに動く可能性があるため膠着状態の強い展開が想定しました。

6月28日(火)は、ギリシャの債務問題についてギリシャ議会で中期財政計画の承認が得られるとの期待からユーロ買い・ドル売りが強まったものの、円に対してはドル買い・円売りとなって81.255円まで買われました。しかし、6月30日(木)は、ギリシャで中期財政計画の関連法案が可決されるとドル売りが強まって80.269円までドルが売られました。週末は、ISM製造業景況指数が予想を上回り、今週末の雇用統計への期待から一気に81.129円の高値をつけましたが、80.821円で引けました。

今週は、週末7月8日(金)の雇用統計が注目となっており、予想を上回ればドル買いとなって81.5円が1つ目のポイントとなります。また、引け値で80.5円を切らなければ80.5~81.5円の中での動きを想定しています。

ドル/円