NYダウは連休後半(5月4日・5月5日)に2日連続の大幅安

5月2日(月)のメッセージでは、前週にFOMCで6月までのQE2(量的緩和)が継続され、ゼロ金利が維持されることになり、また、バーナンキ議長も出口戦略にふれなかったことで当面の量的緩和は続くとの見方から、NYダウは2年11カ月ぶりの高値、ナスダックは10年ぶりの高値となったものの、NYダウの株価の上昇角度からはバブル的な動きとなっており要注意としました。

5月2日(月)の日経平均は、前週までのアメリカ株高を受けて上昇が続き、この日はビンラディン殺害のニュースを受けてテロの脅威が後退するとして△154の10,004円と1万円台を回復しました。ただし、大地震後の原発事故を伴った国内の状況をみれば、国内要因での上昇材料はなく(国内大手企業の11年3月期は好決算だが12年3月期はほとんど不透明)、アメリカ株式の上昇から出遅れとして買われているに過ぎません。そこで、5月2日(月)は次のようなことを書きました。
『日経平均が上昇すれば、専門家は上昇についての解説をするために何か材料を探しますので、日本株式も上昇していくのではと思ってしまいますが、そのような雰囲気に巻き込まれないようにしなければなりません。日本株式がアメリカ株式にサポートされているだけだとすれば、アメリカ株式の上昇がどこで止まるのかとなります。アメリカの金融緩和が当面続くという見方がさらに続けばもっと上昇する可能性もありますが、NYダウ、ナスダックともに急角度の上昇となっており、どこかで反動が出てくることは当然想定されます。リスクをとれる人は、そのNYダウの上昇を前提に日経平均の上昇についていくこともできますが、いつ下がるかわからない状況の中では投資を休むべきでしょう。』

結局、NYダウは、5月4日(水)には4月ADP全国雇用者数、4月ISM非製造業景況指数が予想を下回り、中国が金融引き締め方針を公表したことで▼83の12,723ドルとなり、5月5日(木)は新規失業保険申請件数の大幅増と原油価格の10%を超える下落を嫌気して▼139の12,584ドルと2日連続の大幅続落となりました。これを受けて週末5月6日(金)の日本市場は、9,782円まで下げて大引けは▼145の9,859円となりました。この引け後のアメリカ市場では注目の雇用統計の発表がありましたが、非農業部門の就業者数が市場予想を大きく上回ったことで、NYダウは一時△175の12,759ドルまで上昇しました。しかし、財政難に苦しむギリシャがユーロ圏を離脱して独自通貨を行うことを示したことでユーロが売られ、ドルが上昇したことで原油が急落し、NYダウは上げ幅を縮小して△54の12,638ドルとなりました。シカゴ日経先物は9,785円と9,800円を割り込んでいました。

原油価格の急落の意味するもの

先週は、アメリカ株式の下落のほか、原油・金などの商品市況も大幅下落となりました。先々週4月27日(水)は、前日のFOMCの声明で「異例の低金利政策を長期にわたり維持する」「6,000億ドルの米国債購入を計画通り6月まで継続」としたことで実質上のゼロ金利据え置きとなり、この日はバーナンキ議長が金融引き締めの時期(出口戦略)に言及しなかったことで、当面は金融緩和が続くとして株式市場は一段高となりました。しかし、日本が連休中の先週5月4日(水)、5月5日(木)のNYダウは2日連続の大幅安となり、原油価格も5月2日(月)の1バレル=113.52ドルから5月6日(金)の97.18ドルまで急落しています。これは、リスク資産から資金が逃避していることを意味します。

これまでアメリカは景気回復の手段としてジャブジャブとドルを印刷してきました。まず、2009年3月から2010年3月まで量的緩和の第1弾(QE1)、そして現在が2010年11月から2011年6月まで予定の量的緩和第2弾(QE2)です。このQE2が6月を待たないで打ち止めされるのではないかとの見方があったのですが、上述した4月26日(火)、4月27日(水)のFOMCで6月まで計画通りに継続となったことで、当面の買い安心から株が一段高となったところでした。このQE2による過剰流動性(金余り)によって株式だけでなく原油・金などの商品市況も支えられてきたのであり、6月で計画通りに終わる(終わるのは今のところ確実視されているようです)となると、当然その前にリスクマネーは逃げようとするでしょう。

原油も金も株式も目先は買い戻しがあって上下動するでしょうが、これまで過剰流動性を支えに長い上昇を続けてきていますので、QE2が6月に確実に終わることになれば、当然相場の動きは違ってくるものと考えなければなりません。もちろん、それを危惧してアメリカがQE3を出してくれば別ですが、そうでなければどこかで大きな調整が出てくると考えていた方がよいでしょう。

当面は上値の重い展開へ

先週末5月6日(金)のNYダウは△170まで上昇したものの、ギリシャのユーロ圏離脱報道を嫌気し、また原油価格がいったん1バレル=100ドルを回復したものの、すぐに12,100ドルを切る動きとなって1バレル=97.18ドルで引けたこともあり、上げ幅を縮小して△54の12638ドルとなりました。

週明けの日本市場は、△22の9,881円と小高く寄り付くものの、シカゴ先物が9,785円となっていたこともあってすぐにマイナス圏へ転じ、前引けは▼20の9,838円でした。今週は、主要企業の11年3月期決算のピークも多く、好業績ながら今期(12年3月期)予想を大震災の影響が不透明だとして見送る企業も多く、買い手控え状態となっています。後場になると、200日移動平均線(9,819円)を切ってくると下げ幅を拡大し▼64の9,794円で引けました。NYダウと原油価格が戻れば日経平均も多少戻るものの、上値を追う状態ではないと考えられます。

(指標)日経平均

日経平均は、4月19日に9,405円と9,500~9,800円のもみあいを下放れしましたが、NYダウの反発に連動してすぐに9,500~9,800円のボックス圏を回復しました。この中で、4月26日(火)の▼113の9,558円の安値のあと、アメリカでFOMCやバーナンキ議長の金融緩和継続の発表で、NYダウは2年11カ月ぶり、ナスダックは10年ぶりの高値をつける動きとなりました。それに合わせて、日経平均は4月27日(水)に△133の9,691円、4月28日(木)は△157の9,849円となり、連休の合間の5月2日(月)はビンラディン殺害報道を好感し△154の10,004円と1万円台を回復しました。しかし、出来高・売買代金ともに細っており、買戻し中心の上昇だとしました。さらにNYダウは、急角度の上昇はバブル的な動きであり要注意としましたが、5月4日(水)に▼83の12,723ドル、5月5日(木)に▼139の12,584ドルと続落しました。その結果、先週末5月6日(金)は▼145の9,859円とすぐに1万円を割れてしまいました。引け後のアメリカ市場では、雇用統計の改善から△54の12,638ドルと反発しましたが、シカゴ日経先物は大証比△50の9,785円となっていました。本日は△22の9,881円と反発して始まるものの、決算発表のピークを控えて薄商いの中▼64の9,794円となりました。12年3月期決算の予想を控えるところが多く、不透明感から上値は重いと考えられます。

日経平均

(指標)NYダウ

4月25日(月)の週のアメリカ株式は、FOMCやのバーナンキ議長の会見から6月の金融緩和の終了後も金融緩和が継続されるとの期待や、好調な企業業績を受けて高値更新が続きました。特に、4月27日(水)はNYダウが△95の12,690ドルと2年11カ月ぶりの高値、ナスダックは△22の2,869Pと10年ぶりの高値となりました。週末4月29日(金)もNYダウは△47の12,810ドル、ナスダックも△1の2,873Pと高値を更新しましたが、要するに金余りが続いているということです。5月2日(月)の分析では、チャートの上昇の角度からみると、昨年7月2日の9,614ドルからの角度(1)、8月27日の9,936ドルからの上昇角度(2)、今年3月16日の11,555ドルからの現時点までの上昇角度(3)と角度が(1)→(2)→(3)と急角度の上昇となっており、上値抵抗ラインをみても2008年5月2日の戻り高値13,132ドルがあり、そろそろ要注意としました。

結局、この日(5月2日)のNYダウはビンラディンの死亡を受けて12,876ドルとザラ場での高値を更新したあと▼3の12,807ドルと小反落となり、5月4日(水)は経済指標の悪化と中国の金融引き締め方針を嫌気して▼83の12,723ドルの下落となり、さらに5月5日(木)は新規失業保険申請件数の大幅増や原油価格の急落、1ドル=80円を切るドル安を受け▼139の12,584ドルの大幅続落となりました。週末5月6日(金)は雇用統計で非農業部門の就業者数が予想を上回ったことで一時△175の12,759ドルまで上昇するものの、ギリシャのユーロ圏離脱の動きを嫌気し△54の12,638ドルで引けました。

チャートからは、このまま上下動して売りの形ができるか、それとも早い時期に12,201ドルを切ってくるまでは本格調整とはなりません。5月2日の12,876ドルを上に抜けて5月2日の13,132ドルを試すには原油などの商品相場の落ち着きが必要となるところです。

NYダウ

(指標)ドル/円

4月22日(金)は、欧米主要各国がイースター休暇に入り、小動きとなって81.865円で引けました。4月25日(月)の週は、チャート上は81円台がドルの下値での大きなフシになるので、この水準は円高一服としました。4月25日(月)、4月26日(火)は81円台の推移でしたが、4月27日(水)はS&Pが日本国債を格下げ方向で見直すとの報道で円売りが進行し、82.793円までドルが買われました。しかし、4月28日(木)はバーナンキ議長が早急な金融引き締めに対して慎重な見方をしたことでドルが売られて81.396円まで下げ、週末4月29日(金)は経済指標の悪化で81.037円までドルが売られました。

日本が連休中の5月3日(火)までは何とか81円を維持していましたが、5月4日(水)のアメリカで経済指標(4月のADP全国雇用者数、4月ISM非製造業景況指数)が予想を大きく下回り、さらに中国がインフレ対策として一段の金融引き締めを行う方針を公表したことで、ドルはアメリカ市場で80.44円まで売られました。さらに、5月4日(水)は、新規失業保険申請件数が大幅増加し、景気回復の後退から原油需要が減退するとの観測から、原油先物価格が1バレル=100ドル割れとなり、ドルも売られて79.50円台までの円高となりました。

5月6日(金)の日本市場では80円台半ばまでドルが反発していますが、81円を切って下放れとなりましたので、目先は81円台はドルの上値が重くなることになります。80円を下に切ってくると、円売りの介入の警戒感も出るところですので、80円台近辺でもみあって様子見となるところです。5月6日(金)の雇用統計で非農業部門が予想を上回ったことで一時80.948円までドルが買われました。しかし、ギリシャのユーロ圏離脱報道でNYダウが上げ幅を縮小し、リスク回避の円高で80.066円まで円が買われ80.521円で引けました。

ドル/円