先週注目としたNYダウとナスダックの上値ポイントを週末に突破

先週は、安値圏でのもみあいを予想し、NYダウで7月14日(水)の終値10,366ドル、ナスダックで2,249Pを抜けなければ急落のパターンができてくるために要注意としました。そうなると日経平均はすぐにも9,000円割れとなる可能性が高かったわけですが、今回もNYダウの上昇に助けられた形となりました。

3連休明けの7月20日(火)の日経平均は▲107円の9,300円となり、7月6日の9,351円の窓を埋めたことで、今回の戻り相場は弱いことを意味するとしました。そして、そのまま終値で7月5日の9,266円を切ってくると下値を試す可能性があるとしましたが、アメリカ株式のチャートをみるとNYダウ、ナスダックともに直近の上げ幅の二分の一押し水準まで下げてきており、普通はいったん反発して戻りを試すことが続くとしました。その場合の上値ポイントとして10,366ドルを超えられるかどうかに注目としていました。

そのNYダウは、4-6月期の企業決算及び経済指標が予想を下回ったり上回ったりとまだら模様となったことで大きな上下動を繰り返し、7月21日(水)は▲109ドルの10,120ドルとなりましたが、7月22日(木)は△201ドルの10,322ドルとなり、短期の買転換出現となりました。そして、週末の7月23日(金)は欧州のストレステストの結果も想定の範囲内であったことやGEの好決算と増配をはじめ主要企業の決算が予想を上回ったことで△102ドルの10,424ドルの終値となりました。ナスダックは△23Pの2,269Pとなりました。これで、NYダウが10,366ドル、ナスダックが2,249Pを超えて引けましたので急落というパターンはなくなりましたが、上値は限定的といえます。その一つの見方として、下げる時に出来高が増加し、反発するときは出来高が少ないという動きになっており、その現象は買い意欲が弱く、きっかけ次第では下落に転じやすいということを意味します。

以上のアメリカ株式の動きを背景にアメリカ経済の景気減速懸念と円高基調から、前週の7月15日(木)の▲109円の9,685円から5営業日連続安となって7月22日(木)は一時終値ベースの安値(7月1日の9,191円)を切る9,176円まであって大引けは▲57円の9,220円となりました。そして、この日の引け後にNYダウが△201ドルの10,322ドルとなったことで、週末の7月23日(金)の日経平均は△210円の9,430円と6日ぶりの大幅反発となりました。

大きな円安とはならない可能性が高い

先週は、NYダウが大きく反発し、欧州のストレステストの結果も発表されたにもかかわらず、為替では依然として円高推移となっています。この理由を簡単に考えてみると次のようになります。

1 ダウの上昇がドル買い・円売りとなっていないこと

7月16日(金)はGEやシティグループの決算内容への失望と7月のミシガン大学消費者信頼感指数の結果が予想を下回り、11カ月ぶりの低水準となったことで▲261ドルの10,097ドルの大幅下落となりました。7月20日(火)は、IBMやテキサス・インスツルメンツやゴールドマン・サックスの決算を失望し、一時▲146ドルの10,007ドルと10,000ドル割れ寸前まで下落しましたが、バーナンキ議長が追加の金融緩和策の可能性に言及したことで引けにかけて切り返し△75ドルの10,229ドルと続伸しました。しかし、翌日の7月21日(水)はインテル、IBMの失望決算とバーナンキ議長の経済見通しについて「引き続き異例に不透明」という発言を嫌気し▲109ドルの10,120ドルの大幅安となりました。7月22日(木)になると、キャタピラー、UPS、3Mの4-6月期決算が予想を上回り、6月の中古住宅販売件数や6月の景気先行指数が予想を上回ったことで△201ドルの10,322ドルとなり、週末の7月23日(金)も好決算が続いて△102ドルの10,424ドルの続伸となりました。その間に1ドル=87円台からは円安は進行していません。今のところ、アメリカ株式は企業決算の好調なところが多いとして上昇していますが、その実体は本当に売り上げが伸びて業績が良いという企業は少なく、リストラやコスト削減の結果の企業回復というものですので、マクロの経済指標が徐々に悪化している中では今後は不透明といえます。FRBはそれをわかっているため追加の金融緩和について言及しているわけですが、そうなると日米の金利差が縮小しドルを買う理由がなくなりますのでリスク回避の円買いが続く可能性があり、それが円安とならない理由といえます。チャートでみても1ドル=90円は大きなフシになってしまっています。

2 欧州の金融機関へのストレステストへの信頼感弱く、ユーロ買いとなっていないこと

バーナンキ議長が“景気の先行きが異常なほど不確実”とした1つの背景に欧州の財政問題があります。ギリシャの財政危機をきっかけに欧州の財政赤字への懸念から株式市場が下落し、金融市場を冷え込ませたことも景気を下支えする効果を弱めているとしています。財政問題への不安から欧州の金融システムへの不安となりました。そこで、ストレステストを実施して金融システムに対する市場の不安を払拭することが資産査定の目的といえます。ストレステストの結果発表の7月23日(金)を前に、欧州各国の金融機関は自信があるといっていることから不安が後退して欧州株式は上昇していました。結果は、91行中7行を資本不足として決定したことで不合格は7行にとどまったとして、目先は想定の範囲内となりました。しかし、査定基準の甘さが指摘されており、ストレステストの結果は消化されていないまま、アメリカ企業の好業績に安心感が広がって株価は上昇した形となっています。今晩のアメリカ株式は注目するところです。

今週は先週末のストレステストの結果を消化する動きとなるかどうか

NYダウは、7月22日(木)に△201ドルの10,322ドルとなって柴田罫線に買法則が出て翌日は△102ドルの10,424ドルと続伸したものの、ここからの上値は重くなります。先週10,366ドルを抜けなければ急落の可能性としたのは、リーマンショックの時と同じような動きの形となってきていたからです。このままもう1~2日の連続の陽線が出て6月21日の10,599ドルを超えることができなければ売りの形となってしまいます。日経平均も7月5日の9,266円の終値を切ってくると下値を試す可能性があるとしたように、ここをいったん切ったあとNYダウにサポートされて週末の7月23日(金)に反発となり、本日もストレステストというイベントの通過を受けて△72円の9,503円と続伸しました。しかし、25日移動平均線の9,560円近辺では上値を押さえられています。出来高、売買代金ともに細っており、きっかけ次第では急落というパターンといえます。

決算発表が今後本格化する中では、今回は特に手出し無用といえます。今期が好業績であっても1~2日伸びると止まり、来期の不透明さに焦点が移って高値掴みとなってしまいます。今はひたすら大きな調整を待つところです。

(指標)日経平均

3連休明けの7月20日(火)の分析では、7月6日の高値9,351円の窓をこの日の▲107円の9,300円となって埋めたために、今回の戻りは弱いことを意味するとしました。さらに7月5日の9,266円を終値で切ってくると、下値模索となる可能性を述べました。先週は、7月22日(木)の▲57円の9,220円(この日終値ベースでの年初来安値9,191円を一時下回る9,176円まで下落)まで5日続落のあと、NYダウの大幅上昇に助けられて7月23日(金)の週末は△210円の9,430円となりました。引け後のアメリカ市場は欧州のストレステストの結果が想定内ということで企業決算の好調さに目が向けられ△102ドルの10,424ドルの続伸となりました。

7月26日(月)の日経平均はストレステストというイベントの通過とアメリカ株高、そしてやや円安基調となっていたことで前場は△89円で寄り付き、一段高となりましたが、25日移動平均線の9,560円近辺では上値重く前引けは△115円の9,546円でした。後場になると利益確定売りで△72円の9,503円と上昇幅を縮めました。出来高、売買代金ともに大きく減少しており、NYダウ次第では要注意となります。引線の終値で9,258円以下で引けると売転換出現となります。

日経平均

(指標)NYダウ

3連休明けの7月20日(火)の分析では、それまで10,300ドル台からは上値は重いとしていたように、ザラ場では7月13日に10,407ドルをつけるものの終値では7月14日の10,366ドルをつけて再下落となり、7月16日には▲261ドルの10,097ドルとなりましたが、そのまま下落していくかどうかはわからないとしました。そして、普通は7月2日の9,617ドルの安値から直近の高値7月13日の10,407ドル(7月20日の時には7月15日の10,379ドルとしていましたが修正します)までの上昇幅の二分の一押し(10,012ドル)から反発し、戻りを試すところですがとしました。

7月20日(火)の日本市場は▲107円の9,300円でしたが、引け後のアメリカ市場でNYダウはIBMやゴールドマン・サックスなどの企業決算への失望売りで一時▲146ドルの10,007ドルまで下げて、上述した二分の一押し水準から反発となって△75ドルの10,229ドルとなりました。7月21日(水)は、FRBのバーナンキ議長が「引き続き異例に不透明」という経済見通しを発表したことで▲109ドルの10,120ドルとなりましたが、前日の10,007ドルは切らず、昨日7月22日(木)は主力企業の好決算と6月の景気先行指数を好感し△201ドルの10,322ドルとなり、柴田罫線で買法則が出現しました。週末の7月23日(金)は△102ドルの10,424ドルと続伸して、7月13日の10,407ドルを上に抜けましたが、柴田罫線ではあと1ドル足らずに陽線が伸びていません。このまま上昇しても6月21日の10,599ドルを超えられなければ売りの形になってきます。

NYダウ

(指標)ドル/円

前週の予測では、前週末(7月16日)に86.259円まであって終値86.690円となりましたが、そのまま昨年11月27日の84.769円を試すには早すぎるとし、NYダウの動きをみてもいったん反発するところとしました。結局、ドルの高値が7月20日(火)の87.556円、安値が7月22日(木)の86.377円という87円をはさんで上下に50銭程度のせまいもみあいとなりました。

7月20日(火)は、FRBの追加の金融緩和期待でNYダウが上昇し買い戻しから87.556円まで上昇、7月22日(木)はバーナンキ議長が景気の下振れリスクに言及したことでドル売りとなって86.337円まで下げ、週末はNYダウの大幅上昇でドルが買われて87.378円となりました。

結局、ストレステストが想定の範囲となり、NYダウが上昇しても金融緩和策からの日米金利差の縮小による円買いの動きもあり、安値圏でのもみあいとなりました。7月2日の終値87.815円を終値で抜けてくると7月13日の88.71円を試す動きとなります。当面は90円前後は大きなフシとなっています。

2年間の動きでチャートを引き直してみますと、2009年4月8日の101.43円を上値の基点とし、2009年11月27日の84.769円を下値の基点とする大きな三角保ちあいとなり、この中で今年4月2日の94.685円、5月4日の94.97円とダブル天井をつけて下落となり、5月20日の88.95円まで急落するものの、いったん反発となって6月4日の92.874円まで上昇しました。しかし、ここを戻り高値のピークに急角度の下落となって再び三角保ち合いを下放れし、下降トレンド(B)を形成して、7月16日の86.259円の安値をつけました。現在は、ここからの反発でもみあっているところです。チャートでは戻り売りの形となっており、戻りのあと7月16日の86.259円を切ってくると、今度は2009年11月27日の84.769円を試す動きが想定されます。

ドル/円