実は、小規模宅地の特例は自宅以外の土地にも適用ができます。自宅に適用ができなくても、まだあきらめないでください。よく問題になる、老人ホームへ入居していた場合の適用要件についても解説しています。

老人ホーム入居や入院で留守宅になっていた場合はどうなるの?

被相続人(亡くなった方)が居住していた土地に小規模宅地の特例が使えるかどうか、判断が難しいケースは多々あります。そのうちの代表的なものが、相続が発生したときに「被相続人が自宅にいなかった」場合です。被相続人が入院していたり、老人ホームに入居していた場合にどうなるのか、ということです。

まず、自宅を離れて入院していた場合です。病院はそもそも「住むところ」ではありません。病状が回復したら自宅に戻るというのが前提になるため、小規模宅地の特例は適用可能です。

では、自宅を離れて老人ホームへ入居していて、そこで亡くなった場合はどうなるでしょうか。ポイントは、介護保険法に規定する「要介護認定・要支援認定」を受けていたかどうかです。

もし、健康な状態で老人ホームへ入居し、そのまま要介護・要支援認定を受けずに老人ホームで亡くなった場合は、生活の本拠が自宅から老人ホームへ移転していたと認定され、小規模宅地の特例は適用できません。

一方、要介護・要支援認定を受けていた状態で老人ホームへ入居し、そこで亡くなった場合は、小規模宅地の特例の適用が可能です。

また、健康な状態で老人ホームへ入居したものの、その後要介護・要支援認定を受け、そののちに亡くなった場合も適用可能となっています。

なお、入院中や老人ホーム入居中に自宅を他に賃貸していた場合など、適用が受けられないケースもありますので十分注意してください。

「小規模宅地の特例」は複数の土地を組み合わせることも可能

ここまでは、自宅の土地に対しての「小規模宅地の特例」の概要でした。

でも、「小規模宅地の特例」の対象となるのは、自宅だけではありません。具体的には、以下のような土地についても対象となります。

  • 特定事業用等宅地等
    被相続人個人、もしくは被相続人等が株式の過半数を所有する法人で行っていた事業に使われていた土地につき、要件を満たせば適用があります。
  • 貸付事業用宅地等
    他に貸しつけていた土地(つまり不動産賃貸業としての土地)についても、要件を満たせば適用を受けられます。

詳しい適用要件については、ここでは紙面の都合上省略させていただきます。要件が非常に細かいので、かならず税務署や公認会計士・税理士に確認するようにしてください。

そして、それぞれの土地には適用できる面積の上限がありますが、それぞれの土地の面積によっては、複数の土地に特例を適用することができます。

複数の土地を組み合わせて最も有利なパターンを選択する

具体的には、下記の算式により計算した面積が、合計で200平方メートル以内に収まっていればOKです。

  • 特定事業用等宅地等:(1)
  • 特定居住用宅地等:(2)
  • 貸付事業用宅地等:(3)

(算式)

(1)×200㎡/400㎡+(2)×200㎡/330㎡+(3)≦200㎡

例えば150㎡の自宅の土地と、100㎡の貸家の敷地を所有していれば、上の算式に当てはめると、150×200/330+100=191㎡となります。限度内に収まっていますから、2つとも小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。

もし、自宅の土地が150㎡、貸家の敷地が150㎡という場合は、そのままでは限度を超えてしまいますので、それらの全てに適用を受けることはできません。そこで、自宅土地もしくは貸家敷地の一部を小規模宅地の適用対象から外すことで、上記算式の200㎡以内に収めることが必要となります。

このとき、自宅土地を適用した場合の減税額と、貸家敷地を適用した場合の減税額をシミュレーションし、最も減税額が大きくなるようにすることがポイントです。

小規模宅地の特例の適用対象となりうる土地を複数保有している場合は、それらをどう組み合わせるかにより、軽減できる税額も変わってきます。もちろん円満な遺産分割ができるという前提ですが、どの組み合わせが有利かどうか、あらかじめ確認しておくとよいと思います。

駐車場にはアスファルト舗装をしておこう!

小規模宅地の特例を受けるための要件は、非常に多くあるため、そのすべてをご紹介することはできません。そこで、そのうちの1つをご紹介するとともに、それに対する解決策も示したいと思います。

小規模宅地の特例のうち、貸付事業用宅地等の適用対象となる土地は、家屋の敷地のほか、構築物の敷地も対象になります。そのため、月極駐車場であっても、それが「構築物の敷地」に該当すれば、200㎡までは50%の減額対象となります。

でも、駐車場の敷地にもいろいろあります。土がむき出しになっているもの、砂利が敷いてあるもの、アスファルト舗装をしているものなど・・・。

実は、アスファルト舗装は「構築物」に分類されます。したがって、アスファルト舗装をしている駐車場は小規模宅地の特例の適用対象となります。一方、土がむき出しになっている駐車場は、構築物の敷地ではありせんから、小規模宅地の特例は使えません。そして、砂利敷きの駐車場は、構築物の敷地として認められるケースもあるものの、かなり判断が微妙です。

もし、駐車場の敷地をお持ちで、アスファルト舗装をすることで小規模宅地の特例の適用が受けられるのであれば、早めに実行しておくことが相続税対策につながります。200㎡まで50%の減額を受けられるわけですから、特に地価が高いエリアであれば効果は絶大です。

相続税対策は、何も借金してアパート・マンションを建てることだけではありません。ちょっとした工夫で、簡単に相続税を軽減させることができます。そのためには、公認会計士・税理士に相談し、まずは現状を把握してもらってください。そして、すぐに簡単に実行できる対策がないかどうか、アドバイスを受けることをお勧めします。

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