ルネサスエレクトロニクス株の株価チャートから見えてくるものは?

10月15日の8,488円14円を底値に上昇し、10月19日には約1カ月ぶりに9,000円台を回復した日経平均株価。個別銘柄にも強い動きが目立ってきましたが、年初来高値を更新し続けるものもあれば、いまだ年初来安値圏にとどまっているものもあり、銘柄選択が相変わらず重要になっています。

こんな時、銘柄選択の方法の1つとして有効なのが、需給面にスポットを当てるというものです。

ルネサスエレクトロニクス(6723)(以下「ルネサス」)の株価チャートをご覧ください。

ルネサスエレクトロニクス(6723)

9月24日に好材料の出現によりストップ高となりましたが、翌25日の株価は高寄り後大きく下げてしまいました。

ここで注目したいのが、9月25日の売買高を表す棒グラフの長さです。他の日より棒の長さが長いことがお分かりいただけるでしょう。9月25日はかなり売買高が膨らんだのです。

そこから1カ月ほどさかのぼると、8月29日および30日も株価が上昇し、売買高が膨らんでいることが分かります。

このことから推測できるのは、9月25日には多くの投資家が好材料を好感して買いを入れた一方、8月29・30日にルネサス株を買った投資家の多くが売りを出した可能性が高いという点です。

新規買いと戻り売りがぶつかり合った9月25日の大商い

なぜそう言えるのか、それは8月30日にルネサス株を買った投資家の心境を考えてみるとよく理解できます。

8月29日に好材料出現によりストップ高となった翌日8月30日の寄り付きは332円でした。好材料が出て株価が高寄りするときは、寄り付きの売買高が特に突出して多くなりますから、多くの投資家がルネサス株を332円で買ったと推測できます。

ところがルネサス株はその日のうちに289円まで下落してしまいます。買ったその日に1割以上株価が下落しまってはすっかり意気消沈ですね。その後も株価は冴えず、9月21日には249円の安値をつけています。

そんな中、突然の好材料が出現し、9月24日には336円のストップ高比例配分になりました。332円で買った後含み損に苦しんでいた投資家はどう考えるでしょうか。買い値まで戻ったのだからとりあえず売っておこうと考える人が多いのではないでしょうか。

果たして翌25日には、好材料を好感した買いと、戻りを待っていた人たちの売りとがぶつかりあい、大商いとともに344円で寄り付き、その後は買い手不在の中株価が当日中に280円まで急落したのです。

現在(10月26日の終値296円)は、9月25日の寄り付きに344円で買った数多くの投資家が、含み損に耐え株価の戻りを今か今かと待ち望んでいる状況です。

ルネサスエレクトロニクスの「株価の壁」は346円と381円

さらにさかのぼると、6月15日に381円の戻り高値を付けた際も売買高が膨らんでいます。その後7月25日には212円まで下落するなど軟調な値動きでしたから、6月15日近辺で買った投資家の一部は8月30日や9月25日に大商いで戻り高値をつけた際に多少の損失覚悟で売りを出したものと思われます。しかし、損をしてまで売りたくない投資家は売らずに保有しているはずで、彼らは買値の381円付近になれば売りたいと思っているでしょう。

以上より、ルネサス株には9月25日高値の346円付近、そして6月15日高値の381円付近に「株価の壁」が存在しているといえます。そこには、株価が戻ったら売りたい株主が数多く存在するわけですから、これらの水準を超えて上昇するためにはかなりの買いエネルギーが必要であることが分かります。言い方を変えれば、ルネサス株は他の銘柄より大きく上昇しにくい需給環境にあると考えられます。

したがって、需給面からみた「上がりやすさ」という点でいえば、ルネサスのように過去に大商いをした株価水準である「株価の壁」を超えられていない銘柄はできるだけ避けるのが無難です。

株価の壁を超えてからの新規買いが基本戦略

ただし、この「株価の壁」を超えて上昇してきたならば話は別です。戻り売り圧力をこなすだけの強い買いエネルギーが存在することを示しているからです。

できれば、売買高が少しずつ増えながら株価が徐々に上昇して壁を乗り越えていく方が、その後のさらなる株価上昇に期待が持てます。突然の好材料出現により一気に上昇すると、その時点で買いエネルギーを使い果たし、8月30日や9月25日のような「株価の壁」を新たに作ってしまうことにつながりかねないからです。

ルネサスの株価チャートをさかのぼると、381円から上の水準には「株価の壁」らしきものは当面見当たりません。株価の値運びの軽さや資金効率という面から考えると、ルネサス株は381円を超えてから新規買いをするのが得策でしょう。

もしくは、株価の壁に株価が近づいたら売り、株価の壁を上回ったら買い直す、という戦略も有用です。ルネサス株の場合、①時価(10月26日終値296円)で買って346円に近づいたら一旦売る→②346円を超えたら買い直して381円に近づいたら売る→③381円を超えたら買い直す、という順序で売買していく戦略です(②は値幅が小さいので省略も可)。

(例題)NPCの投資戦略を考えてみよう

ではこれらの点を踏まえて例題です。次のNPC(6255)のチャートから投資戦略を考えてみましょう。

NPC(6255)

NPC(6255)も、10月12日に206円の戻り高値をつける過程で売買高が大きく膨らみ、その後株価が下がっています。したがって、206円近辺では戻り売り圧力がかなり存在するものと思われます。しかし、ひとたび206円を超えてくればその後300円近辺までは株価の壁が見当たらないので、上昇しやすいといえます。

したがって、株価の壁である206円を超えてから新規買いをするのが基本戦略です。また、株価が上昇トレンドとなっていない間はお勧めできませんが、時価(10月26日の終値170円)で買い、206円に近づいたらいったん売却、その後の206円超えで買い直し、という戦略も考えられます。

私たち個人投資家は、投資できる資金にどうしても限りがあります。できるだけ資金効率のよい投資をして、投資成果をより高めるようにしていきたいものですね