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多額の有価証券評価損を計上した企業の株は「売り」か?
足立 武志
知って納得!株式投資で負けないための実践的基礎知識
株式投資がうまくいかない、という個人投資家の皆様へ。実践をベースにした「すぐに役立つ真の基礎知識」は、お客様の株式投資戦略に新たなヒントを提供。負けない、失敗しないためにはどのよ…

多額の有価証券評価損を計上した企業の株は「売り」か?

2011/11/2
資産運用に精通した公認会計士として活躍している、足立武志氏による「知って納得!株式投資で負けないための実践的基礎知識」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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投資有価証券評価損の計上企業相次ぐ

3月決算企業の第2四半期決算(中間決算)の発表が本格化していますが、多額の有価証券評価損を計上する企業が相次いでいます。

例えば住友金属工業(5405)は、9月30日に、保有する投資有価証券の減損処理として797億円の投資有価証券評価損を計上する旨を発表しました。

前期末の3月31日の日経平均株価が9,755円10銭であったのに対し、9月30日は8,700円29銭と10%以上も下落しています。個別銘柄であれば、30%、40%と大きく株価が下がったものも珍しくありません。

評価損計上が必要なのはどのような場合?

原則として、企業が保有する上場株式につき評価損を計上する必要があるのは、時価が著しく下落し(一般には帳簿価額より50%以上下落)し、かつ株価の回復があると認められない場合です。帳簿価額と時価の差額(=含み損)を投資有価証券評価損などの科目で損益計算書に計上しなければなりません。これを有価証券の減損処理と呼んでいます。

含み損の割合が50%未満の場合など、減損処理をする必要がない場合は、損益計算書に投資有価証券評価損は計上されないため、損益に影響は与えません。ただし、貸借対照表上の投資有価証券を含み損の額だけ減額し、同時にその他有価証券評価差額金も減額させるため、純資産の減少要因にはなります。

ちなみに含み益の場合も、損益計算書に利益が計上されることはなく、貸借対照表上の投資有価証券とその他有価証券評価差額金が増加することにより、純資産の増加要因となります。

企業が保有する上場株式の時価の変動による影響をまとめると次のようになります(一般例。企業により多少異なる場合あり)。

  • 帳簿価額より50%以上下落:損益計算書に損失計上+純資産の減少
  • 帳簿価額より50%未満下落:純資産の減少
  • 帳簿価額より上昇:純資産の増加

注: 保有する上場株式の時価の変動は、(「包括利益」コラム参照)にも影響を与えますが、包括利益は投資判断上それほど重要視されていないと思われるためここでは考慮しません。

評価損の計上は果たして「業績の悪化」といえるのか?

では、自身が保有する銘柄や買い候補としていた銘柄が多額の投資有価証券評価損によって大幅な減益や赤字転落となってしまった場合、どのように投資判断をすればよいでしょうか。

株価チャートや株価のトレンドといったテクニカルではなく企業業績をはじめとしたファンダメンタルをより重視する専門家・投資アドバイザーの方の多くは、保有株を手放すタイミングの1つとして、「業績の悪化が明らかになった時点」を挙げているようです。

そこで、多額の投資有価証券評価損の計上が果たして「業績の悪化」と呼べるものかどうか考えてみたいと思います。

投資有価証券評価損は一般には特別損失に計上されます。したがって、「当期純利益」の減少要因にはなりますが、「営業利益」「経常利益」には影響を与えません。

当期純利益は、この有価証券の減損をはじめ、企業の経営活動とは直接関係のない要因で生じた利益(=特別利益)や損失(=特別損失)を含めた最終的な利益です。

一方、営業利益は本業で純粋に稼いだ利益、経常利益は営業利益に財務活動の影響(配当金の受け取りや借入金利息の支払い、為替差損益など)を加味した、経常的な事業活動により得た利益です。これらは企業努力が素直に反映される利益といえます。

したがって、もし多額の有価証券評価損を計上したことにより、当期純利益が前年度より減益になったり赤字転落となってしまっても、営業利益や経常利益が増益になっていれば、企業成長が順調に続いていると判断できますから、「業績の悪化」として扱わなくてよいのではないかと考えます。あくまでも企業業績は営業利益や経常利益で判断する、ということです。

評価損計上自体は株価にとってそれほどマイナスではないが…

では、多額の投資有価証券評価損の計上は株価にとってどの程度マイナスの影響を与えるでしょうか。

筆者の感覚では、投資有価証券評価損の計上を発表した企業の株価が、それを理由に大きく下落することはあまりありません。なぜなら、投資有価証券評価損の計上はすでに株価に織り込み済み(株価が大きく下がれば評価損が生じることは予想できる)だからです。

そもそも、投資有価証券評価損の計上に至った理由は、株式市場で株価が大きく下落したためです。ということは、大部分の銘柄は、投資有価証券評価損の計上が発表されるより前に、すでに株価が大きく値下がりしています。

したがって、投資有価証券評価損を計上しようがしまいが、投資有価証券評価損が「業績の悪化」に該当しようがしまいが、自身が保有している株の株価が上昇トレンドから下降トレンドに転じたならば、一旦手放しておくのが大ケガをしない最善の方法です。

筆者はどんなに業績が良かろうとも株価が下降トレンドにあれば買うべきではないし、業績が振るわない(ようにみえる)銘柄でも株価が上昇トレンドならば売る必要はない、むしろ買っていくべきというスタンスです。そもそも誰の目にも業績の悪化が明らかになった時点では、すでに株価が大きく下落してしまっていて、その段階で保有株を手放していては手遅れであることが多いからです。

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