分散のカギは、マイルド権威主義・土台あり

 分散先を選択する際に必要なことは「メインと異なる」ことです。値動きについては、しばしば「逆相関が良い」と耳にしますが、逆相関の場合、メインの価格推移が好転した場合に、良かれと思って保有した分散先の商品が足かせになってしまうため、必ずしも逆相関が良いとは言えません。ここで言う「異なる」とは「無相関」のイメージです。相関係数でいえばゼロ近辺です。

 本レポートの前半部分の各国の人口の話から、メインの投資先が米国であるとすると、できるだけ異なる性質を目指す分散先として、「労働人口維持」と「人口増加維持」が実現し得る新興国や次世代の新興国がなじむといえそうです。

 レポート後半部分の豊かさと考え方・思想の話から、メインの投資先が米国であるとすると、できるだけ異なる性質を目指す分散先として、「マイルドな権威主義」と「1人当たりGDPが先進国並み」という特徴を持つ新興国や次世代の新興国が有望であるといえそうです。

 また、「マイルドな権威主義」は、米国などの先進国が採用する民主主義と異なる要素を持っています。

 民主主義の環境下では、高い自由度・民主度を背景に自由な競争が繰り広げられ、経済が活発化することが期待される半面、自由すぎて感情が噴出し、建設的な議論が損なわれて社会全体が停滞するマイナスの側面もあります(2010年ごろ以降の世界的な自由民主主義指数の低下の一因がここにある)。

 その点、こうした民主主義と一線を画す「マイルドな権威主義」は、自由過ぎない環境を維持できるため、過度な大衆化が起きにくく、熾烈(しれつ)な値下げ競争およびそれによるサービスの質の低下が避けられ、主要産業で疲弊が起きにくいメリットがあります。

 自由過ぎる大衆の声に耳を傾けるあまり、リーダーが思い切った行動ができなくなる事態が、複数の先進国で発生しています。マイルドな権威主義であれば、こうした事態を避けることもできるでしょう。

 また、分散先に「土台」となり得る、安定した収入源、労働人口維持・増加、自国の特徴を生かしたプラスアルファ、などがあるとなおよいでしょう。

 本レポートでは、五つの国のさまざまなデータを確認しながら、大乱世における分散投資の考え方を確認しました。五つのうち、分散先になり得る国と強いて挙げるとすれば、サウジアラビアかもしれません。

 近年、脱石油をメインとした経済改革「ビジョン2030」を掲げ、さまざまな自由化がなされた同国は、まさにマイルドな権威主義といえるでしょう。労働人口の維持・増加が期待でき、先進国並みの豊かさを実現している同国は、分散先の有力候補といえるかもしれません。日本人にとって、なかなかなじみがない国かもしれませんが、フラットな目で観察してみると面白いかもしれません。

図:分散先の選び方(筆者イメージ)

出所:筆者作成

[参考]エネルギー関連の投資商品例

国内ETF(上場投資信託)・ETN(NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)成長投資枠活用可)

NNドバイ原油先物ブル
NF原油インデックス連動型上場
WTI原油価格連動型上場投信
NNドバイ原油先物ベア

外国株式(NISA成長投資枠活用可)

エクソン・モービル
シェブロン
オクシデンタル・ペトロリアム

海外ETF(NISA成長投資枠活用可)

iシェアーズ グローバル・エネルギー ETF
エネルギー・セレクト・セクター SPDR ファンド

投資信託(NISA成長投資枠活用可)

HSBC 世界資源エネルギー オープン
シェール関連株オープン

海外先物

WTI原油(ミニあり)

CFD

WTI原油・ブレント原油・天然ガス