円安でも日経平均が下がった理由

 先週、円安が進む中で、日経平均が下落した理由として、以下三つが考えられます。

【1】円安が一時的とみられている可能性

 FRBによる利下げが鈍化する見通しから、足元、米金利が上昇しました。確かに、米景気は想定よりも強く、利下げが遅れる可能性はあります。ただし、利下げが遅れるだけで、FRBが利上げする環境にはありません。一方、日本銀行(日銀)は先行き、利上げするスタンスを崩していません。日米金利差が縮小する可能性がある中で、さらなる円安が進むとは考えにくいところです。

 米大統領選でトランプ氏優位の見方が広がったことが、米金利上昇を通じて円安要因となりましたが、トランプ氏自身は「ドル高は災難」と述べており、もし実際に大統領になれば、円安(ドル高)批判を始める可能性もあります。

 1ドル=150円台では、日本銀行が大規模円買い介入を実施しており、介入に対する警戒もさらなる円安を進みにくくする可能性があります。日銀による為替介入に米国政府は批判的ですが、急激な円安が進む時に円買い介入を行うことについては理解を示しています。

 以上の要因から、1ドル=150円台に乗せる円安が進んだものの、さらなる円安は見込みにくいと考えられます。

【2】10月27日投開票の衆院選で自民党苦戦の見方が広がったこと

 石破政権の支持率低迷から、衆院選で自民党が苦戦するとの見方が広がったことも、先週の日本株にマイナス要因となりました。日本株の動きを支配している外国人投資家は、自民党政権への求心力が弱まる局面では、資本主義の成長戦略・構造改革が進みにくくなるとみており、日本株への投資を減らす傾向があります。

【3】海外投機筋が「日経平均先物買い」「円売り」トレードを進めにくくなった可能性

 7月11日まで「日経平均先物買い」「円売り」ポジションを高めていた海外投機筋は、8月5日にかけての急激な「円高株安」で大きな損失を被っています。ここから再び「日経平均先物買い」「円売り」を行うことに慎重になっている可能性があります。

日経平均と、外国人投資家の日本株売買動向(売り越し・買い越し):2024年6月24日~2024年8月30日

出所:東証データ・QUICKより楽天証券経済研究所が作成。外国人売買は、株式現物と株価指数先物の合計

 上のグラフを見ると、7月11日にかけて日経平均を大量に買った外国人投資家は、8月5日にかけての暴落で損切りを強いられており、大きなダメージを被ったと考えられます。上のグラフに示されている外国人売買は、「株式現物の売買」と「株価指数先物の売買」の合計です。驚くべきは、その内訳です。以下をご覧ください。

日経平均騰落幅と外国人売買(買い越し・売り越し):2024年6月24日~8月30日

出所:東証データ・QUICKより楽天証券経済研究所が作成。外国人売買は、株式現物と株価指数先物の合計、億円未満概数のため合計が一致しないことがある

 7月11日~8月5日にかけての「円高株安」について詳しい説明をお読みになりたい方は、以下のレポートを参照してください。

3分でわかる!今日の投資戦略:2024年9月2日 令和のブラックマンデー続報、歴史的暴落にプット売りが影響(窪田真之)