テスラ車への評価にも変化

 EVの過大評価へ修正が入ったのは、株式市場だけではありません。消費者からの評価にも、修正が入りました。テスラ車を例にお話しします。

 まず、テスラ車の魅力として、以下3点があります。私個人の感想もありますが、多くの方から同じ声を聴いています。

【1】強大なトルクを瞬時に出す、スタートダッシュが痛快

 テスラ車に乗った人が最初に感じるのは、スポーツカー並みの加速のよさです。テスラにかかわらずEV全般のメリットとして、走り出しからギアチェンジ不要で最大トルクが出せることがあります。

【2】大きなパネルに操作機能を集約・オートパイロットの魅力

 コックピットがすっきり見えます。また、テスラに乗った時、オートパイロット(半自動運転)を見せてもらいました。ハンドルから手を離しても、ハンドルが自動で動いて滑らかにカーブを切っていくのに感動を覚えました。自動運転への道筋が感じられます。

【3】走行安定性に優れる

 電池を積載しているので重量がやや大きいが、重心が低く、スムーズな走りです。

 一方、テスラ車の問題も、再認識されるようになってきました。

【1】高額、急な値下がり

 2023年以降、頻繁に値下げをしてきたものの、まだガソリン車、ハイブリッド車に比べて、高額です。

 値下げはテスラ車の一段の普及に必須とはいえ、値下げが続いていること自体が、買い控えを生じている面もあります。頻繁な値下げで中古車価格も下がるため、買いは待った方がよいという感覚につながっています。

【2】充電時間が長い 充電インフラがまだ十分ではない

 テスラにかかわらずEV全体の問題として、充電時間が長いことがあります。急速充電でも20~30分くらい必要だと、忙しい日中には対応できません。充電インフラがまだ十分に整っていない上に、1台当たりの充電時間が長いと、充電ステーションの順番待ちにも時間を取られることがあります。

 こうした欠点を補うものとして、米国でプラグイン・ハイブリッド車を見直す向きもあります。 

【3】極寒に弱い ヒーターを使うと電費が著しく低下する

 今年厳寒の北米で、テスラ車が充電できないまま急速充電ステーション近くで大量に乗り捨てられる問題が起こりました。

 寒冷地では、電池をヒーターで温めないと充電性能が落ちます。テスラ車は、充電前にヒーターを適温まで温めるプレコンディショニング機能がありますが、それが十分に生かしきれませんでした。充電の待ち時間が長く、ヒーターに電気を取られて動けなくなったテスラ車が出ました。

 ヒーターを適切に使用すれば寒冷地でもEVは問題なく使用できますが、まだ極寒での利用に慣れていないオーナーが多かったことが、問題につながりました。

 EVの問題として、寒冷地ではヒーターを使う必要があるために、電費(電気1kWh当たりの走行距離)が著しく低下することが挙げられます。EVの強みが、寒冷地では逆に弱みとなっています。

 電気モーターとエンジン(内燃機関)を比較すると、モーターはエネルギー変換効率の高さで内燃機関を凌駕(りょうが)します。無駄な熱や音を出さない分、動力エネルギーへの変換効率が高い。一方、内燃機関では、熱や音で失われるエネルギーが大きい。

 ところが、寒冷地では、熱が出ることが逆に有利に働きます。内燃機関から出る熱の一部は、車内暖房などに使われます。またボンネットが熱を持つので、ボンネットに雪が付着しにくく、運転者の視界が守られます。

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