今期4兆5,000億円の最高益を見込むトヨタ

 トヨタ株の史上最高値更新が続いています。3月6日も一時3,772円をつけ、最高値を更新しました。

 トヨタ株の上昇に弾みがついたのは、2月6日に今期(2024年3月期)の連結純利益見通しを前期比83.6%増の4兆5,000億円に引き上げてからです。2022年3月期の最高益(2兆8,501億円)を1兆6,000億円以上、上回る見通しです。

<トヨタの連結純利益推移:2021年3月期~2024年3月期(会社予想)>

出所:トヨタ決算資料より楽天証券経済研究所が作成

 ただ、今期の業績は、さまざまな追い風を同時に受けてできた「追い風参考値」ともいえます。特に、円安の強い追い風を受けています。

 半導体不足が解消して生産が増加した恩恵もあります。これまで在庫不足で、売りたくても売れない状況が続いていましたが、今期は生産増加による「生産益」と、売り逃していた販売取り戻しの恩恵が同時に出ています。

 来期以降の業績にはいくつか不安もあります。まずは為替です。このまま1ドル=150円前後の相場が続くならばいいですが、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)が今年、利下げに転じると、それをきっかけに円高に転じる懸念もあります。

 また、連結子会社ダイハツ工業による車両試験不正や、持分法適用会社豊田自動織機によるディーゼルエンジン認証不正が明らかになるなど、グループの品質管理問題も気になるところです。

 さらに新たに持ち上がった不安として、米国が2022年6月に施行した「ウイグル製品輸入禁止法」の影響もあります。ドイツのフォルクスワーゲンの新車数千台が、中国の新櫃ウイグル地区で作られた部品を使っている可能性があることから、米国の港で押収されました。

 自動車産業のサプライチェーン(供給網)は世界中で複雑に絡まり合っており、フォルクスワーゲンだけでなく、世界の自動車大手全てが、この問題で影響を受ける可能性があります。

 こうした不安がある中でトヨタ株が勢いよく上昇するのは、次世代自動車に対するイメージの変化が大きいと思います。EV・テスラへの過大な評価が修正されるとともに、トヨタ・ホンダおよびトヨタが世界トップの技術を有するハイブリッド車が見直されている影響が大きいと思います。