FRB議長議会証言や雇用統計公表控え、米利下げ時期探る一週間

 一方で、米国が景気後退しないで軟着陸し、物価上昇の鈍化も一服感が強まれば、米国の緩和開始時期は後ろ倒しになって、ドル高が強まるかもしれません。FRBが3月19~20日に開くFOMC(米連邦公開市場委員会)では1月時点よりも緩和時期の後ろ倒しを示唆するかどうかが焦点になります。今週は、その兆しが察知できるかもしれないイベントが待ち構えています。

 FRBのパウエル議長が6、7日に半期に一度の議会証言を行います。6日は下院金融サービス委員会で、7日には上院銀行委員会です。パウエル氏は1月には、3月の早期利下げを否定した一方、「政策金利は金融引き締めサイクルのピークに達している。経済が想定どおりに進展すれば、年内に利下げに転じるのが適切だろう」と述べました。2月に発表された経済指標を受けて、1月時点より利下げ時期について慎重姿勢を取るかどうか注目です。

 ただ、3月19、20日のFOMCまでには8日発表の米2月雇用統計、12日の米2月CPI(消費者物価指数)があります。それらのデータ次第で証言の内容と変わる可能性には留意する必要があります。

 そして、今週8日公表の米2月雇用統計にも着目したいです。非農業部門雇用者数(NFP)は過去2カ月、市場予想を上回っています。米雇用統計の結果が弱くなければ、19、20日のFOMCで示される今年の金利見通しで利下げがこれまでの見方の3回よりも少なくなるのではないかとの観測が浮上してきます。今年の利下げ回数が2回や1回へと少なくなり、利下げ開始時期も後ろ倒しになるのではないかとの見方です。

 FRBが昨年12月に示した今年2024年の金利見通しでは利下げが3回あるとの内容でした。現在の市場の見方も同じとなっています(市場の見方は当初年6回の利下げとなっていましたが、現在はFRBの見通しに寄り添った形になっています)。ゼロ回になるとの観測(今年利下げなし)も一部ではありますが、まだこの観測は時期尚早と思われます。今年の利下げ回数が減れば、ドル高に反応することが予想されます。

 NFPは2カ月連続で市場予想を上回っていますが、先週1日発表の2月ISM(米サプライマネジメント協会)製造業景況指数が予想を下回り(47.8)、その構成要素である雇用指数が前月(47.1)より低下し、45.9と昨年7月以来の低水準となったことは気になるところです。

 5日に発表された2月ISM非製造業景況指数も予想を下回り(52.6)、その雇用指数も低下しました(前月50.5→48.0)。これらの指標からNFPが予想を下回ることも想定しておいた方がよいかもしれません。NFPが予想を下回り、予想を大幅に上回った1月分(35.3万人)が下方修正され、平均時給(前月比+0.6%、前年比+4.5%)も伸びが続かない場合は、先月の反動の動きからドルが大きく売られることも予想されます。

 8日の米雇用統計公表前の6日には2月ADP雇用統計、1月米雇用動態調査も発表されます。

ECB理事会後に6月の利下げ見方強まるか焦点

 また、今週は7日のECB(欧州中央銀行)理事会も重要です。ECBの利下げ開始時期も関心を集めていますが、6月利下げを後押しする見解が出るのかどうか注目したいと思います。

 物価上昇は鈍化が続いていますが、サービス価格が高止まりをしているため、早期利下げに慎重姿勢を示す可能性もあり、注意する必要があります。利下げに慎重ならば、為替相場は対ユーロで円安に動き、対ドルでの円高を抑制する可能性があります。