米国株市場の動きがポイント

 さらに、少し注意しておきたいのが、最近の米国株市場の動きです。

 先週の米主要株価指数は、週間ベースでNYダウ(ダウ・ジョーンズ工業株平均株価)が0.02%安、S&P500種指数(S&P500)が0.11%安、ナスダック(ナスダック総合指数)が0.69%安と、揃って小幅な下落ではあるものの、株価水準自体は最高値圏を維持しています。

図3 日米の主要株価指数の値動き比較(2023年10月末を100)

出所:MARKETSPEEDIIデータを基に筆者作成

 とはいえ、上の図3を見ても分かるように、3月に入ってからの日米の主要株価指数のほとんどが、2月までに見られたような上昇の勢いが後退しているような印象です。

 先週発表された米国の経済統計では、2月分のCPI(消費者物価指数)やPPI(卸売物価指数)が予想よりも強い結果となり、粘り強いインフレ傾向が示されたことや、2月小売売上高や3月NY連銀製造業景況指数なども景気の陰りを匂わせる結果となっています。

 こうした結果を受けて、先週の米10年債利回りは再び上昇しています(下の図4)。

図4 米10年債利回りの推移(2024年3月15日(金)時点)

出所:楽天証券WEBサイトを基に筆者作成

 このように、「景気が減速しつつある中で、物価が高止まりしているのでは」という微妙な警戒感と、足元の金利上昇が最近の株価の重石になっていると思われます。

米半導体2銘柄にも注目

 また、米国株市場では、図3のSOX指数にもあるように、引き続き半導体関連銘柄の動きがカギとなっています。日本株市場でも、日経平均への寄与度の大きい東京エレクトロン(8035)  や、アドバンテスト(6857)レーザーテック(6920)SCREENホールディングス(7735)などは、米半導体関連銘柄の動きに連動しやすい傾向があるため要注目です。

図5 米エヌビディア(日足)とMACDの動き(2024年3月15日(金)時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

 まずは、米半導体銘柄の筆頭格であるエヌビディア(NVDA)の状況からチェックします。

 前回のレポートでは、前週末に出現した大きな「抱き線」によって、トレンド転換への警戒を指摘しましたが、先週の値動きを見ると、抱き線となった8日(金)のローソク足の値幅内での推移が中心となりました。

 売りに押されながらも値崩れすることもなく、天井の兆候となるサインが出ていた割には、しっかりした展開だったと言えますが、上値の重たさが感じられ、少なくとも、エヌビディア株がこれまでのような、株式市場の上値追いのエンジン役となるには、8日(金)の高値974ドルを超えて、抱き線を打ち消すことが必要になります。

 それと、今週は同じく米半導体関連企業のマイクロン テクノロジー(MU)が20日(水)に決算を発表する予定となっており、こちらも注目されることになりそうです。

図6 米マイクロン・テクノロジー(日足)とMACDの動き(2024年3月15日(金)時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

 マイクロン テクノロジーの日足チャートを見ても、エヌビディアと同様に前週末の7~8日にかけて大きな抱き線が出現していますが、同社株の先週の値動きは、25日移動平均あたりまで下値を探りに行くような動きとなっていることもあり、決算を受けて上昇に転じることができるかが注目されます。

日経平均の予想レンジは4万500円~3万7,000円

 最後に目先の日経平均の予想レンジについても見て行きたいと思います。

 上値については先ほども触れたように、3月7日(木)の高値(4万472円)超えが意識されるため、4万500円あたりが目安となり、下値については25日移動平均線からの下放れを想定する必要があるため、移動平均線乖離(かいり)率を使って確認して行きます(下の図7)。

図7 日経平均移動平均線乖離率(25日)のボリンジャーバンド(2024年3月15日(金)時点)

出所:MARKETSPEEDIIデータを基に筆者作成

 先週末15日(金)時点の25日移動平均線乖離率はマイナス0.28%と、25日移動平均線からやや下回っているところに位置しています。

 ボリンジャーバンドでもマイナス2σ(シグマ)を下抜けているため、今週以降の日経平均が下方向への動きを強めた場合には、下向きに広がるマイナス2σに沿って低下していくため、図7を過去に遡ってみても分かるように、マイナス5%あたりまで乖離が進行する展開も想定しておく必要がありそうです。

 先週末時点の25日移動平均線の値が3万8,817円でしたので、マイナス5%乖離は3万6,876円となり、3万7,000円の節目が下値の目安として機能しそうです。

 これまで見てきたように、今週の株式市場は日米の金融政策イベントの通過で、株価が反発する可能性は高いと思われるものの、株価上昇の強さと持続力が問われること、米国株市場に不安の火種もくすぶっているため、冷静に相場に臨む必要がありそうです。

※来週(3月25日)は、当連載は休載です。次回は4月1日になります。