金融政策イベント通過後の株価は上昇しやすい?

 では、今週注目の日米の金融政策イベントが、株価の方向性にどのような影響を与えそうなのかが気になるところです。

 結論から言ってしまうと、現時点での状況を整理すれば、金融政策イベント後の株価は上昇しやすいと思われます。

 18日(月)~19日(火)に開催される日銀の金融政策決定会合ですが、事前の報道にもあるように、「マイナス金利の解除」が行われる見込みです。これについては、すでに先週までの日経平均の値動きに織り込まれており、実際にマイナス金利の解除が決定されても、株式市場に与えるインパクトは限定的になると思われます。

 このほか、「YCC(イールド・カーブ・コントロール)の見直し」や「ETF(上場投資信託)の買い入れ停止」なども注目されていますが、こちらもすでに報じられている情報です。

 となると、今後の視点は、「マイナス金利解除後も追加の利上げが実施されるのか?」へと移っていくことになります。ただし、国内の物価上昇の背景にあるのは、経済成長に伴う需要拡大というよりも、国際的な資源価格の高騰や円安に拠るところが大きいことを踏まえると、当面は緩和的な政策運営を続けていくと思われます。

 こうした政策運営姿勢が、会合後の植田日銀総裁の記者会見などで確認できれば、安心感による買いのきっかけになりそうです。

 また、日銀会合に続く、FOMCについても、市場では政策金利の据え置きがほぼ規定路線という予想です。

 今後の利下げ開始時期をはじめ、FRB(米連邦準備理事会)における、景気やインフレに対する認識、QT(量的引き締め)緩和の議論の動向などを、パウエルFRB議長の記者会見や、FOMCの結果と同時に公表される「ドット・チャート(FRBメンバーの金利&経済見通し)」などを材料に消化しつつ、こちらも日銀と同様にハト派であれば、安心材料となりそうです。

 もちろん、植田日銀総裁や、パウエルFRB議長からタカ派的な発言が出てくるケースには注意が必要ですが、金融政策イベントだけで判断するならば、イベント通過で買いを入れやすい状況になる可能性は高そうです。

株価が反発できても、上値を追える勢いについては微妙か

 しかしながら、仮に日米の金融政策イベントを通過して、株式市場が上昇していく展開となった場合、より重要になってくるのが、「株価が反発できても、上値をトライできるほどの勢いが出てくるか?」です。

 日経平均で言えば、先ほどの図1にもあるように、「3月7日(木)の取引時間中につけた高値(4万472円)を超えることができるか?」ということです。

図2 日経平均(日足)と多重移動平均線(2024年3月15日(金)時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

 上の図2は日足の日経平均チャートに多重移動平均線を重ねたものです。

 多重移動平均線については、前回のレポートでも紹介しましたが、短期から中期までの異なる移動平均線(2日から28日までの2日間刻み)を複数(14本)描くことで、トレンドの強弱や変化を探るのに使われます。トレンドが発生している時は多くの移動平均線が同じ方向を向き、移動平均線の束の幅が広くなっていきます。

 図2を見ても分かるように、足元の状況は株価が移動平均線の束の下限あたりまで下落し、束自体の幅も狭くなりつつあります。また、75日移動平均線と株価の距離は大きく離れている状態が続いています。

 チャートをさかのぼると、ちょうどこれに似た状況が昨年の6月あたりにも見られます。この時は、移動平均線の束の下限あたりで株価が反発したものの、3万4,000円の節目の株価水準や6月の高値を上回ることができず、再び反落してしまい、その後は10月末までの下落トレンドへとつながって行きました。

 そのため、金融政策通過の安心感だけでは、短期の需給的な思惑による株価の上振れがあったとしても、上値トライを持続するだけの買いの強さを取り戻すには新しい買い材料が必要かもしれません。