米国株式と世界株式の長期総収益(円)実績を比較する

 日本居住者(投資家)にとり「オールカントリー」と呼ばれる世界株式に分散投資するインデックスファンドがいいのかS&P500が象徴する米国株式に連動を目指すインデックスファンドがいいかについて議論が盛んです。

 参考までに、図表2は米国株式(S&P500)、世界株式(MSCI世界株式指数)、日本株式(TOPIX(東証株価指数))の総収益指数(配当込みトータルリターン指数)の推移について1994年1月を100としたドルベースと円ベースのパフォーマンスを比較したものです。米国株式(円)の総収益は約30年で24.2倍に膨らんできたことが分かります(2024年1月末時点)。

 これは、同じ期間の世界株式(円)の約11.5倍、日本株式の約2.5倍を大きく上回る市場実績です。時期によって優劣が一時的に変わっても、S&P500がリスク(リターンのブレ)を加味した長期リターンではドルベースでも円ベースでも優勢だったことが分かります。

 もちろんこれらは過去の市場実績であり、米国株式や世界株式のこれからの長期リターンを正確に予測することは困難です。

 ただ、今後も中長期で「米国株式の優位性」とみられる(1)イノベーション(技術革新)進展に伴う生産性改善と利益成長が期待できる市場であること、(2)起業家が幾度失敗しても「再チャレンジ」が認められるアニマル・スピリットが浸透していること、(3)経営者(CEO)の多くが株主還元を常に意識した経営を行っていること、(4)多様な移民の流入で総人口も労働人口も増え続けていること、(5)新興国を含む世界の経済成長(市場拡大)を取り込もうとするグローバル(多国籍)企業が多いことなどに大きな変化はないと思われます。

 今後想定される景気や金利の変動、大統領選挙の行方、地政学リスクなどの不確実性に起因するノイズ(需給の乱れ)で米国株価が一時的に下落する場面があれば、押し目買いや積み増し買いの好機と考えています。

<図表2>米国株式、世界株式、日本株式の長期市場実績を比較

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1994年1月~2024年1月31日)