金(ゴールド)市場にも負の出来事

 小頻度の大規模な負の出来事の影響を受けた経験がある市場があります。金(ゴールド)市場です。戦争という負の出来事が発生し、資金の逃避先として注目を集め、価格が一時的に急騰しました。1970年代後半の出来事です。このことで多くの人が知る「有事の金買い」というイメージが生まれました。

「いつも雪」は共通テスト日の大都市での大雪、「有事の金買い」は世界を驚かせる規模の戦争という、ともに小頻度の大規模な負の出来事によって醸成されました。イメージを醸成するきっかけとなった出来事が小頻度であるため、危機感が保持され、イメージが持続しています。

「いつも雪」も「有事の金買い」も、それらを醸成した大規模な負の出来事が、それを目の当たりにした多くの人の心と頭に刻み込まれているため、現在でも否定されることはほとんどありません。

 情報網が極限まで発達した現代社会では、良くも悪くもイメージが拡散しやすい状態にあります。このため、一度醸成された強いイメージは社会に居座る傾向があります。

 全国的に共通テストの日に降雪が確認されにくくなっていても「いつも雪」が支持されているのと同じように、市場環境が変化して有事だけが価格動向を左右する要因だと言い切れなくなっても「有事の金買い」は支持されています。確かに有事は今でも重要なテーマですが、現在は同時に有事以外にも注目しなければならないテーマが複数あることに留意しなければなりません。

図:小頻度の大規模な負の出来事が生んだイメージと実態

出所:筆者作成

 以下の図のとおり、現在の金(ゴールド)相場の動向は、有事だけで説明することはできません。戦争という過去に起きた小頻度の大規模な負の出来事が生んだイメージである「有事の金買い」は、1970年代後半は金(ゴールド)相場を説明するのに十分な効果がありました。

 しかし現在は、戦争が目立っていなくても、米国の金融緩和や新興国の台頭、中央銀行の買いなどが目立てば金(ゴールド)相場は勢いよく上昇することがあります。それが何よりの証です。今、有事は金(ゴールド)相場の全部ではありません。一部です。

図:ドル建て・円建て金(ゴールド)価格の推移(過去およそ半世紀)

出所:LBMAおよび国内大手地金商のデータをもとに筆者作成

「今ここ」が重要、安易に過去に頼らない

「いつも雪」と「有事の金買い」は、きっかけが小頻度の大規模な負の出来事であるという共通点を持っています。それ以外の共通点に、シンプルで連想しやすいことが挙げられます。これは前回のレポートでまとめた「昭和」の考え方です。

「脱昭和」がこれからの投資スタイルになじむという趣旨で書きました。その意味では「脱いつも雪」そして「脱有事の金だけ」は、社会人として、そして投資家として目指すべき像であると、筆者は考えます。

「脱昭和」を目指すための具体的なアクションの一つに、「以前はどうだった?という考えを減らす」ことが挙げられます。時代の変化が激しい昨今においては、過去を振り返ることで分析を誤ることがあります。

 2022年のように有事が勃発しても金(ドル建て)価格が上昇しなかった例を見れば、過去に頼り切ることがリスクになり得ることが分かります。いったん頭の中をゼロにして、目の前で起きている今の事象と向き合うことが大変に重要です。このことは金(ゴールド)投資に限ったことではありません。

 仮に金(ゴールド)相場を分析する際は、有事ムードをその一つとし、投資スタイルに合わせて以下のテーマに注目するとよいでしょう。短中期であれば「有事ムード」「代替資産(株の代わり)」「代替通貨(ドルの代わり)」の三つ、中長期であれば「中国・インドなどの宝飾需要」「中央銀行」「鉱山会社」の三つ、超長期であれば「見えないリスク」の一つです。

 短期売買の際に四半期に一度公表される「中央銀行」の金(ゴールド)保有量を参照することは、なじまないといえます。

図:金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年 筆者イメージ)

出所:筆者作成

 以下は貴金属関連の投資商品の例です。用途に応じ、ご注目いただけましたら幸いです。

[参考]貴金属関連の具体的な投資商品例

長期:

純金積立(当社ではクレジットカード決済で購入可能)
純金積立・スポット購入
投資信託(当社ではクレジットカード決済、楽天ポイントで購入可能。新NISAに対応)
ステートストリート・ゴールドファンド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
三菱UFJ 純金ファンド

中期:

関連ETF(新NISAに対応)
SPDRゴールド・シェア(1326)
NF金価格連動型上場投資信託(1328)
純金上場信託(金の果実)(1540)
NN金先物ダブルブルETN(2036)
NN金先物ベアETN(2037)
SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)
iシェアーズ ゴールド・トラスト(IAU)
ヴァンエック・金鉱株ETF(GDX)

短期:

商品先物
国内商品先物
海外商品先物
CFD
金(ゴールド)、プラチナ、銀、パラジウム