執筆:窪田真之
今日のポイント
- 3日発表の6月日銀短観は好調。大企業製造業・非製造業DIとも改善が継続。7月後半に始まる4-6月決算は好調が見込まれる。
- 日米政治不安や、米国でのIT・ハイテク株下落が日経平均の上値を抑える一方、日本の企業業績回復が、上値トライの期待をつなぐ要因となっている。
(1)6月の日銀短観は強い内容
3日に、日本銀行が発表した大企業DI(業況判断指数)は、強い内容でした。日米政治不安、米国のIT・ハイテク株下落が、日経平均の上値を抑えていますが、日本企業の業績回復が続いていることが、日経平均上値トライの期待をつなぐ形となっています。
日銀短観で一番注目が高い、大企業DI(業況判断指数)は以下の通り、製造業・非製造業ともに好調でした。
日銀短観、大企業DI(業況判断指数)推移:2012年3月―2017年6月
(出所:日本銀行)
大企業製造業・非製造業DIは、日本の上場企業の業績動向をよく表します。6月のDIが強かったので、今月後半から発表が始まる4-6月決算は好調が見込まれます。
(2)製造業でDIが高いのは素材・機械産業
大企業・製造業で、DIが特に強かった業種を挙げると、以下の通りです。
大企業・製造業で、DIが高かった業種、低かった業種
DIが高い主な業種 | 2017年6月 |
---|---|
非鉄金属 | 34 |
汎用機械 | 29 |
石油・石炭製品 | 25 |
ガラス・セメント製品 | 24 |
DIが低い主な業種 | 2017年6月 |
---|---|
造船・重機 | ▲ 11 |
繊維 | 3 |
(出所:日銀短観2017年6月)
大企業・製造業でDIの水準が特に高いのが、非鉄金属・汎用機械などです。素材・機械産業の好調が際立っています。原料安(資源価格下落)の恩恵がようやく業績にプラス寄与するようになってきたと考えられます。
3月からのDI改善幅で見ても、素材・機械産業が目立ちます。上昇上位は、石油・石炭製品(3月+6から6月+25へ、19上昇)、鉄鋼(3月0から6月+16へ、16上昇)などです。
素材・汎用機械は、これまで業績が改善しても買われにくいセクターでした。IT・ゲーム・半導体・IOT関連株など人気業種と異なり、将来の成長性が見込みがたいことが、株価が買われにくい理由です。
ただ、株式市場では、足元、IT関連など成長株が利益確定売りで下がり、割安株を見直す動きが出つつあります。3日の東京市場では、日銀短観DIの発表を受けて、鉄鋼、石油・石炭製品、非鉄など素材セクターの値上がり率が高くなりました。このままバリュー(割安)株物色が続き、業績モメンタムが強い素材・機械が買われるのか、あるいは、この流れは長続きせずIT・ゲーム・半導体物色に戻るのか、今後が注目されます。
(3)大企業・非製造業でDIが高いのは、建設・不動産・サービス業
大企業・非製造業で、DIが特に強かった業種を挙げると、以下の通りです。
大企業・非製造業で、DIが高かった業種、低かった業種
DIが高い主な業種 | 2017年6月 |
---|---|
建設 | 48 |
不動産 | 35 |
対個人サービス | 31 |
対事業所サービス | 30 |
DIが低い主な業種 | 2017年6月 |
---|---|
電気・ガス | ▲ 3 |
小売 | 10 |
(出所:日銀短観2017年6月)
今、建設・不動産が絶好調であることが、わかります。ただし、両セクターは、業績が好調でも買われにくいセクターとなっています。現在が業績好調のピークに近く、先行き、反動で悪化するという見方があるからです。
不動産は、循環的にブームと不況を繰り返しています。前回の不動産ブームは、2007年でした。その直後から、不動産市況が下落し、不動産不況に入りました。不動産業が再び回復し始めるのは、アベノミクスが始まった2013年からです。そこから回復が続き、現在、都市部は再び不動産ブームの様相を呈しています。
ただ、不動産市況にやや過熱感があること、また、2018年に都心部でオフィスビルの大量供給があることから、不動産セクターは業績好調でも、上値は重くなっています。
同様に、建設・土木セクターも、業績好調の割りに、株価は買われにくくなっています。2020年まで仕事は豊富にあるものの、それ以降、仕事量が減っていくと考えられることが、懸念されています。
バリュー(割安)株を見直す動きが出ていますが、建設・不動産セクターを見直す動きは、今のところ出ていません。建設・不動産を見直す流れがこのまま全く出ないのか、今後が注目されます。
なお、非製造業で好調な、サービス産業については、株式市場でも注目が高まっています。人手不足が常態化する中で、料金引き上げが通る分野が増えてきているからです。人手不足によるサービス業のインフレ(料金引き上げ)は長期化するとの見方もあり、サービス業への注目が、高まっています。