「荒野の七人」の堅調はAI革命の進展を反映する動き

 今年の初めは米国の多くの専門家(ストラテジストやエコノミスト)の大勢が米国株の見通しに慎重でした。

 米国経済の景気後退入りを不安視していたことに加え、S&P500の時価総額ウエートで約3割を占めるに至った「荒野の七人」(大手テック株7社=アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、テスラ:時価総額の降順)の年初来騰落率平均(+104.9%/11月29日)がS&P500を上回り、ナスダック相場をけん引する展開が想定以上だったことが主因です。

 昨年末に登場したチャットGPTに代表される「生成AIブーム」が始まり、マイクロソフトやエヌビディアは11月に上場来高値を更新しました。ソフトとハードの一体開発および、それらを使うための端末、アプリ、データセンターなどを含む総合的な研究開発力・技術力が問われ、AIビジネス拡大から収益を得ると期待される大手テック株は本年復調を鮮明にしました。

 図表2は、総務省の「情報通信白書(令和5年版)」で引用された「世界AI市場規模(売上高)の長期見通し」です。AIの市場規模は2030年には1兆8,470億ドル(約277兆円)に達し、本年の市場規模(推定:2,080億ドル)の約8.9倍に急拡大していくと予想されています。

<図表2>AI市場の規模は急拡大していくと見込まれている

(出所) Statistaによる長期予測をもとに楽天証券経済研究所作成

 AI市場の急拡大を収益化しそうなテック株の業績拡大は来年も続きそうです。図表3は、ナスダック100指数とS&P500ベースの予想EPS(1株当たり利益)を巡る市場予想平均を示したものです。

「荒野の七人」だけで時価総額ウエートの約6割を占めるナスダック100指数ベースの業績見通しは2024年に前年比19.2%の増益、2025年は15.6%増益と過去最高益を更新していく見通しです(Bloomberg集計)。

 生成AIは中長期でAGI(汎用AI:Artificial General Intelligence)に進化していくと見込まれ、製造業、サービス業、金融業、医療業界などで導入が進み、産業の効率性や企業の生産性を向上させて業績の拡大に寄与すると考えられています。

 ナスダック100指数ベースでのEPS拡大が主導してS&P500ベースのEPSも2024年と2025年に過去最高益を更新していくと予想されている点に注目したいと思います。

<図表3>ナスダック100の利益成長がS&P500の最高益更新をリードへ

(出所)Bloombergの集計に基づき楽天証券経済研究所作成(2023年11月29日)