物価安定の目標2%実現には、名目雇用者報酬4%の伸びが必要

 もう一つ重要な点は、名目雇用者報酬をCPIで割った実質雇用者報酬の伸びが、そのCPIと同じになっているという事実です。つまり、名目雇用者報酬の伸びがCPIの2倍になっていないと、そんなことは起きません。

 上の米国の例でいえば、CPIの上昇率が年率2.4%のペースで上昇していて、実質雇用者報酬の伸びも同じ2.4%になっているのですから、名目雇用者報酬が4.8%伸びているということになります。実際そうなっています。したがって、物価安定の目標「2%」を持続的・安定的に実現させたければ、名目雇用者報酬を4%持続的に伸ばす必要がある、という結論になります。

 それでは、日本の名目雇用者報酬がこの先4%で伸びていく可能性はあるのでしょうか。図表3に日本の名目雇用者報酬の前年比を80年代から掲載しました。赤い点線が4%ラインですが、賃金が回復してきた最近でも2%台後半、まだまだ距離があります。今の日本にとって4%という伸びは、相当高いハードルのように見えます。

<図表3 日本の名目雇用者報酬の伸び>

(注)シャドーは景気後退期。
(出所)内閣府、楽天証券経済研究所作成