有事ムードは見えないリスクに昇華

 では、金(ゴールド)に長期視点の投資妙味はないのでしょうか。筆者は金(ゴールド)にも投資妙味があると、考えています。以下の通り、短中期のテーマの一つ「有事ムード」が超長期視点の「見えないリスク」に昇華(さらに高度な状態へ飛躍すること)しつつあると考えるためです。

 足元、イスラエルとハマスの戦争も、ウクライナ戦争も、「有事ムード」を強め、資金の逃避先と目される金(ゴールド)を物色する動機となり、相場に短中期的な上昇圧力をかけています(別途文脈起因の下落圧力が強まった時、これらの上昇圧力は相殺され、相場は下落することがある)。

図:金(ゴールド)市場を取り巻く7つのテーマ(2023年11月時点)

出所:筆者作成

 ただ、足元の諸情勢を見てみると、これらの戦争が、全く別の地域にマイナスの影響を及ぼしていることが分かります。先月、国連(国際連合)の安保理(安全保障理事会)と総会では、戦争を停止するための決定打を示すことができませんでした。常任理事国のいずれかが反対したためです。ウクライナ戦争勃発以降続いている「国連の機能不全」は続いたままです。

 西側と非西側の間で分断が深まっている中での決議は、「どちらに属しているかを公表する」機会になっているといえます。決議のたびに、西側・非西側のリーダー格の国々の顔色をうかがう国が現れ(スタンスを示したくない国が投票を棄権する場合もあり)、世界が一つになることが困難になってしまっています。

 こうした傾向はウクライナ戦争勃発以降、続いています。国連の機能不全は、戦争を止めさせる第三者が不在であることと、ほぼ同義です。

図:世界(西側・非西側)の分断深化が与える金(ゴールド)相場への影響

出所:筆者作成

 各国の世論に目を向けると、パレスチナ人を支持するかユダヤ人を支持するかで、二分されている国・地域があります。

 中東からの移民が多い欧州では、国のトップはユダヤ寄り、一部の市民はパレスチナ寄り、米国では歴史的背景を踏襲して年配の人がユダヤ寄り、戦争に反対する若者がパレスチナ寄り、などという具合です。特に米国では、来年の米大統領選にも影響を及ぼし得る話です。

 また、戦争が続いていることでエネルギーや食料の価格が高止まりし、インフレ(物価高)が世界各地で国の財政や人々の生活をむしばんでいます。インフレ対策と称し、各国政府は国民に莫大(ばくだい)な額の補助金を付与しています。

 また、米国の主要都市の一部で治安の悪化が深刻化しているとの報道がありますが(サンフランシスコの繁華街など)、リモートワークが進んで街が空洞化したことのほか、インフレも治安悪化の原因であると考えられます。

 国連の機能不全、欧米での国内世論分断、長期化するインフレによる社会問題急増…。こうした西側・非西側の分断起因の事象は束になり、超長期視点のリスクを膨張させていると考えられます。

 こうしたリスクは戦争のような目に見える分かりやすいリスクではないため、「見えないリスク」であると考えます。今まさに、激化の一途をたどる「有事ムード」は、超長期視点で金(ゴールド)相場を支え得る「見えないリスク」に昇華しつつあると、言えるでしょう。

 超長期視点で、金(ゴールド)は有望な投資対象であり続けるでしょう(米国の利上げなど別文脈の短中期的な下落圧力に要注意)。それでもなお、金(ゴールド)が割高だと感じる方は、金(ゴールド)に比べて割安なプラチナに注目いただくと良いように思います。

[参考]貴金属関連の具体的な投資商品例

長期:

純金積立(当社ではクレジットカード決済で購入可能)

純金積立・スポット購入

投資信託(当社ではクレジットカード決済、楽天ポイントで購入可能)

ステートストリート・ゴールドファンド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
三菱UFJ 純金ファンド

中期:

関連ETF

SPDRゴールド・シェア(1326)
NF金価格連動型上場投資信託(1328)
純金上場信託(金の果実)(1540)
NN金先物ダブルブルETN(2036)
NN金先物ベアETN(2037)
SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)
iシェアーズ ゴールド・トラスト(IAU)
ヴァンエック・金鉱株ETF(GDX)

短期:

商品先物

国内商品先物
海外商品先物

CFD

金(ゴールド)、プラチナ、銀、パラジウム