米つなぎ予算期限間近、政府機関の閉鎖懸念で市場混乱も

 今週に入って、米長期金利の低下が一服し、戻している状況(利回り上昇)となっています。この動きに伴って、ドル相場も1ドル=150円台に上昇しています。米長期金利が再び5%を目指すなら、1ドル=152円を目指す勢いが出てくると思いますが、米景気の先行き不透明感からそこまでの金利上昇は難しそうです。7日の米10年債利回りは再び4.5%台に低下しています。

 米国2023年7-9月期GDP(国内総生産)は前期比年率換算で4.9%増と伸び率が加速しましたが、今後は減速するとの見方が大勢となっています。これまでの利上げの影響や金融環境引き締まりによってどの程度「経済の重し」となるのか注目です。速報性があることから市場が注目しているアトランタ連邦準備銀行のGDPナウは、2023年10-12月期GDPを2.1%増と予測しています(11月7日時点)。

 また、11月17日は米国つなぎ予算の期限を迎えます。17日までに歳出関連法案が可決されるのかどうかがポイントです。連邦議会が混乱すると、再び米政府機関閉鎖や米国債の格下げが懸念され市場も混乱します。ドル安、債券安(金利上昇)、株安のトリプル安にならなければ良いのですが。

米利下げ期待、景気後退で高まる可能性も、ドル上値重く

 一方、ユーロ圏の7-9月期GDPは実質年率0.4%減と3四半期ぶりにマイナスとなりました。ユーロ圏のGDPの3割を占める最大の経済国ドイツは前期比0.1%減となっており、先行きも低迷を続ける予想となっています。

 ドイツがこういう状況ですから、ユーロ圏の回復は遠いかもしれません。インフレが急低下していることから(9月4.3%→2.9%)、米国よりも早く利上げ打ち止めから利下げモードに入ってくるかもしれません。

 また、中国は景気後退から回復傾向が見られましたが、もたついている状況が続いています。7日には、中国の原油需要の先行き不透明感から、国際的な取引指標となるWTI原油先物は急落し、1バレル=80ドルを割れました。

 10月末から11月初めの日米それぞれの金融会合では年内の日米金融政策の方向が再確認されたことから、方向の違いによる円安の構図は11月も続きそうです。ただ、世界経済の先行きの不透明感が高まっていることが波乱材料になることが予想されます。

 景気の減速はFRBの金融政策にも影響を与えるため、FRBの関心も今から年末、来年にかけて、インフレ抑制から景気全体に移ってくるのではないでしょうか。

 市場の焦点もFRBによる追加利上げの有無から、どの程度の期間高金利を継続するのかに移っていくと考えられます。市場予想以上に米景気が後退すれば、この期間が短縮される可能性や、パウエル議長が否定する利下げ期待が高まる可能性があります。ドルの上値も重くなることが予想されます。

 日本政府の為替政策の実務を取り仕切る財務省の神田真人財務官の「スタンバイ」発言もあり介入警戒感もくすぶり続けることから、一方向の円安というよりも上下に乱高下しながら徐々にドルの頭が重たくなってくるのではないでしょうか。