米国ETFの押し目を狙う投資戦略

 米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏は、「みなが貪欲な時に恐れを抱け。みなが恐れを抱いている時に貪欲であれ。」(Be fearful when others are greedy and greedy when others are fearful.)と述べています。バフェット氏の本意は、株式相場の底値を判断するのは困難であっても、市場が「恐怖感」で覆われているときこそ「好機」であるということです。

 図表3は、個人投資家の注目度が高い主な米国ETF(上場投資信託)を「年初来騰落率」の降順で示したものです。夏から秋にかけての株価下落で取引価格が下がったものの、年初来騰落率で最高位にあるのは半導体株ETF(SMH)ナスダック100指数連動型ETF(QQQ)です。

 SMHの組入れ銘柄1位は、生成AI向け半導体最大手のエヌビディアです。また、QQQはGAFAM(アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ)にエヌビディアとテスラを加えたビッグテック(偉大なる7銘柄:The Magnificent Seven)が組入れ上位を占めています。

 これらナスダック上位銘柄は、世界のイノベーション(技術革新)をけん引する企業群であるだけでなく、生成AIが「AGI」(汎用人工知能=人類の知性や判断力に匹敵するAI)に進化する過程で、AIが幅広い産業(製造業、サービス業、金融業など)に導入されることで企業の効率性や生産性を改善させるプラットフォーマーの役割を担うと期待されます。

 また、VOOはビッグテックを上位に組み入れる最大規模のS&P500指数連動型ETFとして有名です。VOOの経費率は世界最低水準(0.03%)で、受益者の投資コスト低減に寄与することが期待できます。

<図表3>主な米国ETFと年初来騰落率(参考例)

米国ETFの参考例<年初来騰落率の降順>

ティッカー ETF名
(略称)
純資産
(百万ドル)
取引価格
(ドル)
年初来
騰落率
分配金
利回り
経費率
(年率)
SMH ヴァンエック半導体ETF 9,290 138.95 36.9% 0.00% 0.35%
QQQ インベスコQQQトラスト・シリーズ1 194,615 350.87 31.8% 0.62% 0.20%
VUG バンガード・グロースETF 88,568 267.51 25.5% 0.62% 0.04%
HACK ピュアファンズISEサイバー・セキュリティETF 1,409 50.96 15.7% 0.19% 0.60%
EPI ウィズダムツリー インド株収益ファンド 1,368 35.87 10.1% 0.17% 0.85%
VOO バンガードS&P500ETF 318,653 384.17 9.3% 1.62% 0.03%
GLD SPDRゴールド・シェア 55,163 184.09 8.5% 0.00% 0.40%
VTI バンガード・トータル・ストック・マーケットETF 297,780 206.79 8.2% 1.62% 0.03%
VIG バンガード米国増配株式ETF 65,525 153.10 0.8% 2.06% 0.06%
VTV バンガード・バリューETF 94,645 134.29 -4.3% 2.74% 0.04%
*上記した米国ETFは来年スタートする新NISA成長投資枠対象です。 (出所) Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2023年10月31日)

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