有事沈静化後も別の材料が下支えする

 異なる意図を持ち、外貨準備高を管理したり、その中にある金(ゴールド)を保有したりしている先進国と新興国の中央銀行ですが、当該調査では今後の方針を問う質問もなされました。

 5年後、米ドル、金(ゴールド)の保有比率がどの程度になると思うかについて質問がなされました。米ドル(現在の保有比率51%)については、先進国、新興国ともに、多くがドルの保有比率は低下すると回答しました(先進国と新興国合わせて55%が低下するとした。昨年は42%だった)。

図:5年後、中央銀行のドルの保有比率(現在51%)はどうなると思いますか?

出所:WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)の資料をもとに筆者作成

 先進国の中央銀行の半分弱(46%)、新興国の中央銀行の半分強(51%)が、5年後、ドルの保有比率が低下すると考えています。抜粋されたコメントの要旨は以下です。

・グローバルな舞台で他国の重要性が増す中、対米投資は現在より若干減少するだろう。
・過去数十年、準備通貨を多様化させ、米ドルへの依存度を下げることが主流だった。
・米ドルは依然として基軸通貨として支配的である。

 以下は「金(ゴールド)(現在の保有比率15%)」についてです。先進国、新興国ともに、多くが金(ゴールド)の保有比率は上昇すると回答しました(先進国と新興国合わせて62%が上昇するとした。昨年は46%だった)。

図:5年後、中央銀行の金(ゴールド)の保有比率(現在15%)はどうなると思いますか? 

出所:WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)の資料をもとに筆者作成

 先進国の中央銀行の4割弱(38%)、新興国の中央銀行の6割強(64%)が、5年後、金(ゴールド)の保有比率が上昇すると考えています。抜粋されたコメントの要旨は以下です。

・現在のリスクシナリオは、金(ゴールド)のような比較的安定した資産の増加を示唆する。
・金(ゴールド)は歴史的に、不確実性の高い時期に比較的安定した資産と見なされてきた。
・中期的には金(ゴールド)の準備高は若干減少すると見ている。

 先述のとおり、「中央銀行」は、金(ゴールド)市場を取り巻く7つのテーマの1つです。時間軸は「中長期」です。WGCの調査結果は、金(ゴールド)市場に、少なくとも5年という長期視点の、「中央銀行」起因の上昇圧力がかかることを示唆していると、筆者は考えています。

 西側・非西側の分断が長期化すれば、中央銀行の金(ゴールド)保有は数十年単位で旺盛な状態が続く可能性すらあると、筆者は考えています(仮に有事が沈静化しても、別の長期視点のテーマが価格を下支えする可能性がある)。

 有事をきっかけに金(ゴールド)に関心を寄せられた方も、そうでない方もぜひ、金(ゴールド)の長期的なテーマにご注目ください。金(ゴールド)相場が壮大なスケールの上で成り立っていることを実感いただけると、思います。

[参考]貴金属関連の具体的な投資商品例

長期:

純金積立(当社ではクレジットカード決済で購入可能
純金積立・スポット購入
・投資信託(当社ではクレジットカード決済、楽天ポイントで購入可能)
ステートストリート・ゴールドファンド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
三菱UFJ 純金ファンド

中期:

関連ETF
SPDRゴールド・シェア(1326)
NF金価格連動型上場投資信託(1328)
純金上場信託(金の果実)(1540)
NN金先物ダブルブルETN(2036)
NN金先物ベアETN(2037)
SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)
iシェアーズ ゴールド・トラスト(IAU)
ヴァンエック・金鉱株ETF(GDX)

短期:

商品先物
国内商品先物
海外商品先物
CFD
金(ゴールド)、プラチナ、銀、パラジウム