日銀政策修正が取りざたされる中、財務官が利上げに異例の言及

 中東情勢の混乱は、原油の9割を中東に依存する日本にとっても大きな影響を及ぼす可能性があります。原油が上昇し高止まりすれば、日本の物価も高止まりし、加えて世界経済後退は日本にも影響が及びます。日本銀行による大規模金融緩和政策の修正タイミングはかなり後退することが予想されます。

 インフレ下の景気後退局面となり、政策のかじ取りの難しい局面となりそうです。原油上昇によって日本の貿易赤字は拡大し、景気後退によって日銀の政策修正が後退することから円安が一段と進むシナリオも想定されます。そうなる前に日銀の政策修正への期待が高まるかもしれません。

 政府の為替政策の実務を取り仕切る財務省の神田真人財務官は16日、気になる発言をしました。一般論との前置きはありましたが、為替相場が激しく下落した場合には、国は「金利を上げることによって資本流出を止めるか、為替介入で過度の変動に対抗する」と省内で記者団に語りました。通貨安を止める手段として日銀所管の利上げに言及したことは異例です。

インフレ再燃なら円安進行、世界経済の後退強まれば円安一服も

 IMFの日本の成長率予想は2023年をインバウンド(訪日客)による消費で、7月予想から0.6%引き上げ2.0%としましたが、2024年はこれまでの景気刺激策の効果がなくなるため1.0%と据え置きました。中東の地政学リスクの高まりでどの程度の影響があるのか、来年1月時点の見通しに注目したいと思います。

 イスラエルとハマスとの衝突を受けて、サウジアラビアはイスラエルとの国交正常化交渉を凍結するとのことです。中東和平はかなり後退し、中東の地政学リスクが今後の波乱材料として長引きそうです。

 このような情勢の中、原油上昇によってインフレリスクが再燃し、金利が再上昇するのか、それとも世界経済後退によって原油はそれほど上昇せず、インフレ再燃も起こらないシナリオになるのかどうか現時点では判断できません。インフレ再燃となれば円安が再び進行し、世界経済後退が強まれば円安が一服する、という両方のシナリオを頭に入れて今後の情勢を見ていきたいと考えています。 

 18日には、バイデン大統領がイスラエルを訪問する予定です。現職の米大統領が紛争地の当事国を訪問するのは極めて異例のことです。ガザ地区の病院爆発でヨルダン訪問は延期となり、パレスチナ自治政府のアッバス議長との会談も中止となったのは残念ですが、中東情勢に何らかの出口を示すのかどうか注目です。

 また、同じ18日に中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席とロシアのプーチン大統領が北京で会談する予定です。