株価の動きがテクニカルの「節目」でいったんストップする意味

 ここで話を少し戻したいと思います。先ほどは、先週の日経平均が「戻ってきてほしい」節目とされる75日移動平均線のところで上昇がいったんストップしたことについて述べましたが、ここで重要になるのは、「なぜ節目で株価の動きが止まるのか?」です。

 その理由として、以下が挙げられます。

  1. テクニカル分析で意識される節目は、値動きの目標や目安になる
  2. まだ、見極めるべき材料があり、ひとまず様子をうかがっている

 まず、1についてですが、キリの良い株価水準をはじめ、テクニカル分析の移動平均線やトレンドラインなどの節目は、多くの投資家が意識する目標や目安の地点となります。そのため、株価が節目に到達することで、反対売買が出やすくなることが考えられます。

 こうした反対売買を消化し、節目を突破できれば、「新たな相場入り」となって、トレンドの方向感を強めて行くことになりますが、節目を突破できなければ、節目は引き続き、サポート(支持)やレジスタンス(抵抗)として機能することになります。

 次に、2については、結果や動向次第で相場の地合いがガラリと変わりかねない、イベントや材料を控えているため、とりあえず様子見という状況です。足元の相場は、1よりも2の要素が強いと思われます。とりわけ、今週の株式市場は、イベントが多い海外市場のムードに左右されやすい地合いが想定されます。

今週の注目点1:米国の決算動向

 10月相場は中盤に入り、企業決算シーズンが本格化しつつありますが、米国では今週も企業決算が相次ぎます。

 具体的には、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーをはじめとする大手金融機関、EV(電気自動車)のテスラ、動画配信サービスのネットフリックス、P&GやJ&Jなどの生活関連株などが注目され、台湾の半導体受託製造企業のTSMCも決算を予定しています。

 ちなみに、ここではチャートを紹介しませんが、テスラの日足チャートを見ると、先週末時点では25日・50日移動平均線のところに株価が位置し、「三角保ち合い」を形成しつつある状況であるほか、ネットフリックスのチャート(日足)も、200日移動平均線や、2021年の高値と2022年の安値の下げ幅に対する38.2%戻しの水準に株価が位置しているなど、テクニカル分析の節目を意識しながら決算の発表を待っているような印象です。

 TSMCも株価が75日移動平均線のところに位置しているため、決算後に株価が大きく動き出す可能性があります。

今週の注目点2:米国の金利動向と地政学的リスク

 また、先週の株価上昇の主因として、米国の金利低下傾向が挙げられます。

 前週末に公表された米9月雇用統計では、非農業部門雇用者数が予想以上の増加となったものの、平均時給が予想よりも伸びなかったことで米金利の上昇が限定的にとどまったほか、中東で発生した、パレスチナのイスラム勢力とイスラエルとの武力衝突をきっかけとするリスクオフムードが金利の低下材料となり、そして、最近になって米FRB(連邦準備制度理事会)高官からタカ派姿勢の後退を示唆する発言が相次いだことも重なって、「足元の金利上昇がピークアウトしていくのでは?」との見方が強まった格好です。

図4 米10年債利回り(日足)の動き(2023年10月13日時点)

出所:楽天証券WEBサイトを元に筆者作成

 上の図4で、米10年債利回りの推移を確認すると、確かに10月3日をピークに低下していることが分かりますが、金利の水準自体はまだまだ高いですし、25日移動平均線が今のところサポートとして機能しており、金利上昇のトレンドは依然として継続していると言えます。

 また、米金利動向に影響を与えるものとして注目された、9月分の米CPI(消費者物価指数)は、前年比で3.7%上昇と、市場予想を上回る結果となりました。

 今回のCPIの結果は、米FRBによる利上げ観測を大幅に高めるほどではなかったものの、賃金や住居費などの高止まりによって、インフレの減速傾向が順調ではないことが確認されました。

 これまでのインフレ率の低下は、高騰していたエネルギー価格の下落が寄与してきましたが、中東の地政学的問題が他の産油国まで拡大してしまった場合には、原油価格が上昇してしまうことも考えられるため、インフレの再燃には注意が必要です。

今週の注目点3:中東情勢、中国の経済指標、国内政治

 そして、この中東の地政学リスクが不確定な材料として大きな存在となっています。ガザ地区での地上戦への移行をはじめ、イスラエル北部では、レバノンのイスラム組織「ヒズボラ」の参戦警戒や、他のアラブ諸国を巻き込む状況など、今後の状況が拡大する事態となれば、収束への道筋が見えにくくなってしまう懸念がくすぶっています。

 また、今週は中国で7-9月期のGDP(国内総生産)や、9月分の経済指標が18日(水)にまとめて公表される予定です。中国では最近でも、不動産大手の碧桂園の外貨建て債務の支払いが不履行の見込みとなったり、電気自動車(EV)メーカーの威馬汽車科技集団の経営破綻観測が報じられるなど、同国の景気動向には要警戒です。

 このほか、日本の国内政治についても、今週20日(金)に臨時国会が召集され、経済対策の中身や解散総選挙をめぐる思惑などが関心を集めそうです。

 したがって、今週の株式市場は、株価の戻り期待は一応継続してはいるものの、相場の地合いはかなりナーバスになっており、状況によっては、「はしご外し」的な株価の急落の可能性もあるため、仮に株価が上昇した場合でも、早い段階で利益確定売りも出やすく、先週に見せたような力強い株価上昇はあまり見込めないかもしれません。