今週注目される株価材料は?

 続いて、イベントや経済指標など、今週の株価材料についても確認していきます。

 米国では、月初恒例の米雇用統計(9月分)の公表を週末6日(金)に控える中、ISM景況指数が2日(月)に製造業、4日(水)に非製造業の予定で発表されます。

 国内では、日銀短観(7-9月期調査分)をはじめ、安川電機の決算、経済政策と解散総選挙、為替介入への思惑などが注目されそうです。ちなみに、中国では国慶節の連休により、本土株市場が週を通じて休場となります。

 また、懸念されていた米議会での予算をめぐる動きが落ち着いたことは市場に安心感をもたらしそうです。

 もっとも、11月半ばまでの「つなぎ予算」が可決されただけですので、近いうちに再び米議会のゴタゴタを見せつけられることになるかもしれませんが、ひとまず「政府機関の一部閉鎖」や、「経済指標の発表延期」、「米国債の格下げ懸念」などが回避されたことは好材料と言えそうです。

 しかも、先週の株式市場は軟調な場面が目立っていただけに、今週は「下げ止まりからの株価反発力の強さ」が試されることになりますが、その点を考える上で、先週の米国株市場の動きについても確認する必要がありそうです。

米国株の上昇が継続していくための条件

 まずは、先週の米S&P500とNASDAQについて見て行きます。前回のレポートでは、両者とも「トリプル・トップ(三尊天井)」の形成が焦点となっていました。

図4 米S&P500(日足)とMACD(2023年9月29日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週のS&P500はトリプル・トップが完成し、「ネックライン」を下放れる動きから、週末にかけてやや持ち直す動きとなりました。週末29日(金)の取引時間中には再びネックラインをうかがう場面もありましたが、上抜けできなかった格好です。

 今週はこのネックラインの突破がポイントになりますが、株価が跳ね返されてネックラインが抵抗(レジスタンス)となった場合には、下値を探る展開になることも考えられ、前週に続いて警戒モードが続いています。

図5 米NASDAQ(日足)とMACD(2023年9月29日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週のNASDAQについては、上の図5でも確認できるように、ネックラインがサポートとなって、トリプル・トップの完成がひとまず回避された格好です。また、週末にかけて値を戻す展開は先ほどのS&P500と同様ですが、NASDAQについては週足ベースで小幅ながら上昇に転じています。

 S&P500もNASDAQも週末にかけて上昇する場面がありましたが、その背景となっていたのは、「米金利の低下」と「原油価格の上昇一服」です。

 そのため、10月相場に入ってからの米国株市場は引き続き、株価の重石となっている「金利高」、「原油高」、「ドル高」の3点セットの動向を確認しながらという相場地合いに変化はなく、今週も3点セットの組み合わせ次第で株価が上下することになりそうです。

 とはいえ、米金利も原油価格も、チャートからはまだ上昇基調を続けていることが読み取れるため、足元で株価が上昇したとしても、金利や原油価格のトレンドにも変化が見られないのであれば、長続きしない可能性は高いと考えることができそうです。

図6 米10年債利回りの推移(日足)(2023年9月29日時点)

出所:楽天証券WEBサイトより筆者作成

図7 WTI原油先物(週足)とMACD(2023年9月29日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 さらに、米国株自体に割高感があることも気掛かりな点です。

図8 米NASDAQ100(週足)とイールドスプレッドの推移(2023年9月29日時点)

出所:Bloombergデータを元に筆者作成

 上の図8は、NASDAQ100の週足株価と、イールドスプレッドの推移を示したものです。

 イールドスプレッドとは、株式益回りと債利回りの差を示したもので、リスク資産の株式と安全資産の債券とで、利回り的にどちらに魅力があるのかを見るのに用いられます。以前のレポートでは、S&P500のイールドスプレッドのチャートを紹介したことがあります。

 先週末29日(金)時点における米NASDAQ100の株式益回りと米10年債利回りのイールドスプレッドは、マイナス0.75%となっており、利回り的に債券市場の方に魅力があり、現在のNASDAQ100はかなり割高と見ることができます。

 本来であれば、リスク資産である株式の方がリターン的に優位なのが普通ですので、今後のイールドスプレッドが上昇していくには、(1)株価が下落、(2)企業が利益を伸ばす、(3)10年債利回りが低下するかが必要になってきます。今月の半ばからは日米で決算シーズンが本格化するタイミングでもあり、今後は企業業績への注目度が高まることになります。

 したがって、10月相場の行方は、米国株の割高感がどのように解消されていくのか、そして、比較的堅調とされる日本株がその中でどこまで強さを発揮できるのかがポイントになりそうです。