私が考えるサステナブル投資

 2022年以降、脱炭素を目指すESG投資のパフォーマンスは不振でした。ひとくくりにESG投資といってもいろいろな種類があるので、全て不振だったとはいえませんが、少なくとも欧州を中心に作られた環境基準に忠実に従ったファンドのパフォーマンスは不振でした。

 一方、私が考えるサステナブル投資は、昨年も好パフォーマンスです。私の考えるサステナブル投資では、昨年株価が急騰したLNG(液化天然ガス)関連株に、積極投資するからです。私は、脱炭素を進めるには二つのステップが必要と考えています。

【1】脱炭素の第1ステップ

 第1ステップでは、自然エネルギー発電の拡大を目指すもののまだ発電量が少ないので、一気に脱炭素を進めることはできません。そこで、まず「脱石炭」を徹底するとともに、LNG(液化天然ガス)の活用、省エネ環境技術の活用、原子力発電の活用が重要になります。

 既存の化石燃料の効率利用を徹底しながら、自然エネルギーへの転換をはかっていくのが、第1ステップです。

 自然エネルギー発電を拡大するために、ガス火力発電は必要です。なぜならば、太陽光・風力発電など自然エネルギーは出力が安定しないからです。発電量が急に拡大したり縮小したりすると、無駄に電気を捨てたり、大規模停電を起こすリスクが高まります。そうならないように機動的に出力を調整する「調整電源」が必要です。

 現時点で、自然エネルギーの急な拡大縮小に合わせて出力を調整できるのは「ガス火力発電」しかありません(将来的には水素発電がその役割を担いますが、それは第2ステップの話です)。

【2】脱炭素の第2ステップ

 第2ステップで、自然エネルギーの発電量が急拡大した後、天然ガスや原子力発電への依存を低下させ、最終的に自然エネルギーだけで人類が使うエネルギーを全てまかなう「エネルギー循環社会」を実現します。

 欧州中心に作られた環境投資基準は、当初、一気に第2ステップを目指すものとなっていました。天然ガスを含め全ての化石燃料に関連するビジネスを「悪」とする考えがありました。現実的でない基準を作ってきた矛盾が、2022年に噴出したと私は考えています。

 ただし、EU(欧州共同体)内でも、最近は現実的な議論が行われるようになっています。原子力と天然ガスをESGの対象に含めるか議論が行われた結果、現段階では、EU公式見解として、原子力と天然ガスをESGの対象としています。原子力と天然ガスをESGに含めることに欧州では根強い反対論がありますが、公式見解は現実路線に寄っています。

 EUもようやく認めたように、今は第1ステップなので、脱石炭を進めるために、LNG活用企業が重要な役割を果たす段階です。中国やインドなど石炭火力発電への依存が高い国を全てガス火力発電に切り替えるために、LNGの開発投資は重要です。

 中東の油田で利用されずに焼却処理されているガスをLNGに切り替え、もれなく使っていくことは地球環境にとって重要と考えています。

サステナブル投資が重要の考えは不変

 ESG投資、サステナブル投資が重要という私の考えは変わりません。私が考えるESG基準で私はファンドマネージャー時代に投資銘柄を選別してきました。2014年以降、楽天証券でストラテジストとなってからも、その考えで推奨銘柄を選別してきました。

 2021年末からINPEX(1605)を買い推奨してきたのも、三菱商事(8058)を長く買い推奨してきたのも、その考えの一環です。両銘柄とも、今でも買い推奨を継続しています。

 これからも、私の考える基準で、サステナブルな地球に貢献していくと判断する企業を、いろいろご紹介していく所存です。

▼著者おすすめのバックナンバー

2023年7月6日:かぶツミ活用!利回り4%のINPEXに積み立て投資、エネルギー安全保障上の重要企業
2023年4月11日:利回り3.8~4.8%!エネルギー安全保障に貢献する高配当利回り株3選