再生可能エネルギー先進国としての中国

 徐々にかつ長期視点で、再生可能エネルギーのシェア上昇が始まっている可能性があると述べました。このシェア上昇の可能性をけん引している国はどこでしょうか。以下は、再生可能エネルギーの一つ「風力」による発電量(上位五カ国)の推移です。

図:風力による発電量(上位五カ国) 単位:1兆ワット/時

出所:Energy Instituteのデータをもとに筆者作成

 Energy Intelligence(BPの統計を引きついだ機関)の統計によれば、2022年の風力による発電量の世界一位は中国(世界シェア36%)でした。同二位のドイツの六倍強です。中国が風力発電の分野で圧倒的な存在感を示し始めたのは、2010年ごろからでした(ちょうど、欧州が脱炭素を強化し始めたタイミングと符合)。

 中国が再生可能エネルギー由来の発電の分野で圧倒的であるのは、風力だけではありません。「太陽光」においても、圧倒的です。以下は、「太陽光」による発電量(上位五カ国)の推移です。

 中国の「太陽光」による発電量は世界一位です(世界シェア32%)。同二位の米国の二倍強です。欧州が脱炭素を提唱し始めた2010年ごろはドイツが先行していましたが、2015年ごろからは中国が急速に同発電量を増やし始めました。

図:太陽光による発電量(上位五カ国) 単位:1兆ワット/時

出所:Energy Instituteのデータをもとに筆者作成

 中国における風力や太陽光などの発電量が他国に比べて多いのは、石炭依存度が高くて排出するCO2の量が多いため、それを相殺できる仕組みを強化したがっていたこと、再生可能エネルギーの分野で他を圧倒して、脱炭素を推進する欧米と対等に渡り歩く影響力を確保すること、ビジネス的な観点から当該分野の先駆者になることを目的としていたこと、広い国土に恵まれ、再生可能エネルギー(特に自然由来)を確保しやすいことなどが、その背景に挙げられると、考えられます。

 こうした背景もあってか、中国は「再生可能エネルギー先駆者」としての地位を確立しているように見えます。