商品自体に罪はない。L夫人が誤った3つの決断

 L夫人のように、結果的に大きく損失が出たとしても、商品自体が悪いわけではありません。高い利回りの債券や高金利の通貨から得られる運用益を手軽に期待できる商品であり、個人投資家ではなかなか手が出せないオプション戦略の一つであるカバードコール戦略を加えることで、通常の投資にオプションプレミアム収益を上乗せすることができる、いわば富裕層だからこそ運用できる商品の一つです。しかし、L夫人は、3つの失敗から、大きな損失と後悔を味わうことになりました。以下、失敗を分析していきます。

失敗【1】投資目的と商品の特徴が一致しなかった
 L夫人の意向は、「夫の遺産を大事に守るため、高いリターンではなくても安定的に運用したい」という、守りの運用でした。しかし、L夫人が保有した通貨選択型ハイイールド債ファンドは、利回り商品ではありますが、選択する通貨の変動や為替の変動の影響も受けます。カバードコール戦略もオプションプレミアム収益という安定収益獲得に着目することもできますが、価格上昇分はギブアップする代わりに下落時は含み損としてそのままリスクを負ってしまうという戦略です。安定運用を期待した選定としては認識と商品の特徴に大きなずれがあったと言わざるを得ません。

失敗【2】直感的に分からない商品を選んでしまった
 プロではない一般の投資家が、投資信託などの金融商品の細かい仕組みや、想定される市場の変化に価格がどう動くか、100%理解することは困難です。ですから、まず直感的に分かりにくいな、と思った商品はどんなに良い点を強調されても避けた方が無難です。予想と異なる動きをした時に、なぜそのような価格変動になったのか、今後はどう考えたら良いのか、とても判断が難しくなってしまいます。L夫人は損益が膨らみ始めたとき、どうしてよいか分からず非常にストレスを感じていました。中長期で保有することが多い投資信託は、分かりやすさとコスト面を考えてなるべくシンプルな商品の方が良いでしょう。

失敗【3】耳当たりの良いキーワードに乗ってしまった
 売れ筋商品や新商品という、耳当たりの良い印象的なキーワードには気を付ける必要があります。L夫人も「売れ筋商品です」と言われて提案を受けました。しかし、売る側から見ると、売れ筋商品や新商品は、今売れている、つまり多くの人が買っている商品です。売れる、売りやすいと判断されて商品化されているケースが多く、すでに価格が上昇している可能性があります。それに、売れ筋商品は旬なテーマを捉えたものが多く、旬が過ぎれば解約注文が増えて価格下落圧力が強くなってしまうことがよくあります。純資産残高がとても多い売れ筋商品は、もしかしたらすでにタイミングを逸してしまっている商品なのかもしれないのです。