新興国・途上国の穀物需要が二倍に!?

 以下は、「人口」を考慮した世界三大穀物の消費量(人口一人あたりの消費量)の推移です。世界三大穀物の消費量(合計)を、先進国の人口(合計)、新興国・途上国の人口(合計)、それぞれで割った値です。

図:世界三大穀物(トウモロコシ、米、小麦)の一人あたり消費量 単位:キログラム

出所:USDA(米農務省)・国連(国際連合)のデータおよびIMF(国際通貨基金)の資料をもとに筆者作成

 筆者の推計によれば、先進国の一人あたりの消費量(トウモロコシ、米、小麦合計)は、年間およそ579キログラムです(2023年)。肉や乳製品など(家畜のエサとなり)間接的にトウモロコシを消費したり、米や小麦など直接的あるいは直接的に近いかたちで消費したりしたことを想定しています。一日あたりおよそ1.6キログラムです。

 このおよそ579キログラムは、新興国・途上国の2倍強です。新興国・途上国の食文化が先進国並みになった場合、新興国・途上国の穀物需要(合計)は2倍強に跳ね上がります。

 先述のとおり、人口急増の波が今後60年間は続く可能性があるため、食文化が完全に先進国並みにならなくても、新興国・途上国の穀物需要は増加し、穀物の需給構造をじわじわと引き締め方向に可能性があります。

「おいしいものを食べたい」「食べ続けたい」という、人類の根源的な欲求が絡んでいるため、いったん増加した需要は減少しにくい(需給引き締まりが長期化する可能性がある)と言えそうです。

 新興国・途上国が先進国のような食文化を目指さない場合はその限りではありませんが、「おいしい」を追求することは人間の性(さが)であるため、新興国・途上国は先進国の食文化を目指すと考えられます。