米国高配当株3:フォード・モーター(F)

 全世界に約17万3,000人の従業員を擁する世界第7位の自動車メーカーです。

「フォード」、「リンカーン」のブランドを中心にトラック、スポーツ・ユーティリティ・ビークル(SUV)、商用バン、乗用車、高級車をコネクテッド・サービスとともに開発・提供しています。

 2023年1月1日より新たな営業モデルと報告構造を導入したことで、「フォード・ブルー事業(Ford Blue)」、「フォード・モデルe事業(Ford Model e)」、「フォード・プロ事業(Ford Pro)」、「フォード・ネクスト事業(Ford Next)」、「フォード・クレジット事業(Ford Credit)」の五つのセグメントで業績を報告することになりました。

 現在フォードは、ピックアップ、バン、商用車、新型エスケープの好調により、2023年は6カ月連続で米国で最も売れているブランドとなっています。

 時価総額は600億ドルで、日本円で約8兆3,000億円となっています(1USD=138円換算)。

事業の注目ポイント

 事業の中心は「フォード・ブルー事業」で、続いて「フォード・プロ事業」、「フォード・クレジット事業」、「フォード・モデルe事業」、「フォード・ネクスト事業」となります。

※直近の四半期決算(企業HPより)、筆者作成

「フォード・ブルー事業」では、伝統的なガソリン車とハイブリッド車を中心に取り扱っており、リンカーンやマスタングなどのブランドを取り扱っています。また、「フォード・プロ事業」では法人顧客向けにカスタマイズされたガス自動車、ハイブリッド車、電気自動車、高付加価値サービス事業を提供しています。

競合他社

 競合他社として、トラック、クロスオーバー、自動車および自動車部品の設計、製造および販売を行い、全世界でソフトウエア対応サービスやサブスクリプションを提供するゼネラル・モーターズ(GM)、フル電気自動車およびエネルギー生成・貯蔵システムの設計・開発・製造・販売・リースを行い、ならびに製品に関連したサービスを提供する会社であるテスラ(TSLA)などがあります。

株式の注目ポイント

 株価は年初の水準を3割程度上回って推移しており、配当は昨年より増配しています。

 フォードの業績は好調だったものの、市場の期待には届かなかったこともあり5月下旬まで年初近辺の株価で推移していました。その後、来年初めから北米にあるテスラの充電設備を利用できるようにする協定を結んだと発表があったことで株価は大きく上昇しています。

 テスラの急速充電設備「V3 スーパーチャージング」に適応可能になるとともに、2025年以降はアダプターなしで直接スーパーチャージャーに接続できるような仕様にする計画が発表されたことで、株価は発表前と比較して3割程度上昇しています。

 現在、自動車の販売件数が堅調に推移していることもあり今後も株価の値上がりが期待されます。

業績動向

 2023年5月2日開示の四半期決算では、1株利益・売上ともに市場予想を上回りました。

 サプライチェーンの混乱緩和に伴い、ピックアップトラックやスポーツ・ユーティリティ・ビークル(SUV)に対する旺盛な需要への対応が可能となったことで業績が改善し、売上は前年同期比20%増となりました。

 しかし、株価はほとんど反応せずその後のテスラとの協定締結や販売台数増加のニュースがあったことで株価上昇となりました。会社側は「Ford Model e」の営業利益率が2024年末までにプラスに転じる見通しとしており、EV「マスタング・マッハE」の値下げを発表し売上の強化をすすめるなど好調な業績が期待されています。

 次回2023年7月27日に開示予定の四半期決算で、市場予想を上回る決算を発表できるか注目です。

注意点

 中国で需要減速に直面する中で、現地事業をより少ない投資で運営できるよう再編し、EVを含め商用車事業を強化する方針ですが、中国でさらなる需要減速の可能性がある点には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:0.60ドル
配当利回り:4.25%
株価:14.09ドル(約1,900円)

 この銘柄、権利落ち日は7月中旬の予定(権利実施は9月上旬)です。

 配当利回りは718日時点で4.25%、株価は14.09ドルでおよそ1,900円から購入できます(1USD=138円計算)。

 2020年からの最高値は23.98ドル、最安値は4.01ドルとなっています(終値ベース)。

米国高配当株4:インベスコ(IVZ)

 20カ国以上にオフィスを構える世界的な独立系投資運用会社で、2023年3月31日現在、世界中の顧客のために1兆4,830億ドルの資産を運用しています。

 株式、債券、オルタナティブ資産を、単一国、地域、グローバルに幅広い能力を提供し、多様な投資ビークルを通じて提供することで、18年前に運用資産が約4,000億ドルだった時から大きく拡大しています。

 日本でも有名なNASDAQ100をベンチマークにする「QQQ(Invesco QQQ Trust Series 1)」もインベスコが手掛ける運用商品です。

 時価総額は81億ドルで、日本円で約1兆1,100億円となっています(1USD=138円換算)。

事業の注目ポイント

 事業は「資産運用事業(investment management)」の単一事業となります。

 その中で運用資産の中心は「株式投資(Equity)」で、続いて「債券投資(Fixed Income)」、「短期金融市場(Money Market)」、「オルタナティブ投資(Alternatives)」、「分散投資(Balanced)」となっています。

「株式投資」では資産の大半をETFなどのパッシブ運用が占めており、「債券投資」では債券をさまざまな形で運用しています。

競合他社

 競合他社として、投資管理会社であるフェデレーテッド・ヘルメス(FHI)、グローバルな民間市場投資ソリューションを提供するハミルトン・レーン(HLNE)、オルタナティブ資産運用会社であるブルー・アウル・キャピタル(OWL)などがあります。

株式の注目ポイント

 株価は年初近辺の水準で推移しており、配当は今年に入って増配しています。

 業績は堅調であるものの、3月のUBSによるクレディ・スイス買収劇やシリコンバレー銀行(SVB)破綻によって金融株全体の株価が下落し、インベスコの株価も下落前の水準に戻っていません。しかし着実に資金は流入しており、四半期普通配当を7%増額し1株当たり0.20ドルとするなど株主還元も積極的にすすめています。

 今後は、運用資産の増加による投資管理手数料の増加によって業績が拡大することで株価の上昇が期待されます。

業績動向

 2023年4月25日開示の四半期決算では、1株利益は市場予想を上回りましたが、売上は市場予想をわずかに下回りました。

 決算発表後の株価の変動はほとんどなく、おおむね市場予想通りの結果となりました。

「アジア太平洋」地域での資金流入は横ばいでしたが「米国」および「欧州、中東およびアフリカ(EMEA)」地域からの資金流入が拡大しており、会社側も債券、機関投資家向けサービス、ETFはいずれも長期にわたる強力な資金流入が続いていることから、業界全体の成長率が依然低い中でインベスコの進歩は際立っているとしています。

 今後もETFを中心とした資金流入の拡大とそれに伴う投資管理手数料の増加によって業績が拡大することが期待されます。

 次回2023年7月25日に開示予定の四半期決算で、市場予想を上回る決算を発表できるか注目です。

注意点

 コモディティ、通貨、株式ロング/ショート、ファンド・オブ・ファンズ、民間直接不動産、公共不動産などを取り扱うオルタナティブ資産クラスからは資金が流出しており、今後も不動産やコモディティの下落による資金流出の可能性がある点には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:0.80ドル
配当利回り:4.54%
株価:17.60ドル(約2,400円)

 この銘柄、権利落ち日は8月中旬の予定(権利実施は9月上旬)です。

 配当利回りは718日時点で4.54%、株価は17.60ドルでおよそ2,400円から購入できます(1USD=138円計算)。

 2020年からの最高値は29.33ドル、最安値は6.70ドルとなっています(終値ベース)。