日本の物価高収束せず米国と逆転か!円高ドル安になりやすい環境に

 日銀の政策決定会合前には政策に影響を与える日本の6月CPIが21日に発表されます。5月CPIでは変動の大きい生鮮食品を除いた総合指数は前年同月と比べ3.2%上昇しました。上昇率は4月(3.4%)から縮小しましたが、上昇は21カ月連続となりました。昨年4月から日銀が物価目標とする2%を越えた状態が続いています。

 6月の予想は5月から横ばいの3.2%上昇とのことですが、もし、予想通りなら、米国の6月のCPIは3.0%なので日米物価上昇率が逆転することになります。米国CPIが昨年6月にピークの9.1%を付けた時には7%近くの開きがありましたが、逆転を迎えるかもしれません。

 ところで、日本の5月CPIの生鮮食品を除いた総合指数の上昇率は3.2%で、4月(3.4%)から縮小しましたが、この縮小には政府の政策が大きくかかわっています。

 総務省の試算では、電気・都市ガス料金の抑制策と全国旅行支援によって1.0ポイント押し下げる効果があったとのことで、この政策効果がなければ、5月時点で物価上昇率は米国と逆転したことになります。5月のエネルギー価格は8.2%下落し、4月の下落幅(4.4%)から拡大しました。電気代も17.1%下落と、4月の下落幅(9.3%)より大きくなっています。

 また、ガソリン価格抑制の政府の補助金は6月以降、段階的に縮小され、9月末に終了する予定となっています。

 加えて大手電力7社が6月使用分からの電気料金を値上げしたことも、6月以降のCPIに反映されるため、日本の物価はなかなか下がらない環境が続きそうです。この環境が続く限り、市場の日銀への政策修正期待は続き、ドル円の頭が重たくなる状況が続きそうです。

 米国の物価高の鈍化は金融引き締めが緩まる方向に動き、日本の物価上昇は金融緩和が引き締め方向に動くということになります。すなわち、ドルは売られやすくなり、円は買われやすくなるということになります。植田総裁が政策修正期待をけん制する発言を繰り返しても、物価がこの方向に動く限り、市場の期待はくすぶり続けるということになります。

 しかし、米国の物価が再び上昇し始め、日本の物価が下がり始める場合は市場の期待が後退することが想定されます。日本の物価が下がり始めなくても上昇しなくなった時も同じようなシナリオが想定されるため注意する必要があります。