「中央銀行」起因の上昇圧力増強

 世界的な金(ゴールド)の調査機関であるワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の統計によれば、2022年の中央銀行の金(ゴールド)の買い越し量(購入-売却)は過去最高でした。リーマンショックが発生した2008年から、急激に売り越し(純売却)幅が小さくなりはじめ、2010年以降、買い越し(純購入)が続いています。

 筆者は、そのリーマンショックが、ウクライナ危機勃発の遠因であると考えています。そう考えると、2008年以降、非西側の中央銀行がこぞって金(ゴールド)の保有量を増やし始めた背景を、各段に説明がしやすくなるためです。その思考の流れは以下です。

図:リーマンショックを起点に考える、西側・非西側間の「分断」と金(ゴールド)相場への影響

出所:筆者作成

 現に、以下の通り、非西側の代表格と言えるロシア、中国、インド、トルコなどの中央銀行の金(ゴールド)保有高は、非西側の「脱西側(脱ドルの意味を含む)」が進んだと考えられるリーマンショック後に、急増しています(分断起因の「見えないリスク」も意識された可能性あり)。

図:2008年以降、増加が目立った国(中央銀行)の金(ゴールド)保有量 単位:トン

出所:WGCのデータをもとに筆者作成

 WGCのデータによれば、2023年第一四半期の中央銀行の金(ゴールド)積上げ量(購入-売却)は、第一四半期として過去最高でした。

 ウクライナ危機、枠組み乱立、高インフレなど、いくつもの大きな混乱が同時発生している中で、非西側の中央銀行たちは、今後も混乱に乗じ、したたかに、保有量を増やしていく可能性があります。この点は、年末、さらに長期視点の金(ゴールド)相場への上昇圧力を強める要因になり得ます。