投機の仕業……ではない

 綿花をはじめとした金や原油などのコモディティ(商品)、株式、通貨などさまざまな市場において、急騰と呼ばれる値動きが見られたとき、それは「投機筋が動いたからだ」と言われることがあります。投機筋が急に資金を流入させたり、急に資金を引き上げたりしたことが、価格の急騰・急落の要因になることがあるためです。

 以下は綿花価格の急騰時における、投機筋の買い越し幅の推移です。買い越し幅とは、買い枚数-売り枚数で計算され、買い越し幅が大きければ大きいほど、投機筋の買い圧力が強いことを、小さければ小さいほど、売り圧力が強いことを意味します(枚とは取引の最低単位)。

 図:綿花先物価格と綿花先物市場における投機筋の買い越し幅

出所:CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)・CFTC(米商品先物取引委員会)のデータをもとに筆者作成

 価格が急騰する場面は、投機筋の買い越し幅が大きくなる傾向があることから、綿花の急騰時も投機筋の買い越し幅が大きくなっているのではないか?という想像が頭をよぎりますが、実際には以下のグラフのとおり、綿花価格の急騰時、投機筋の買い越し幅は大きくなっていませんでした。つまり、この綿花価格の急騰は、投機筋の仕業ではなかったと言えます。