裁定買い残高1兆円超えをどうみるか?

 裁定買い残高が1兆円を超えたことは、外国人投機筋の先物買い建てが増えてきていることを示します。そのことを理由に、「外国人投機筋の買いが増えているので、そろそろ相場はピークアウトか」とコメントするストラテジストもいます。

 確かに、2021~2022年は、裁定買い残高が1兆円を超えたところで、株式相場がピークアウトすることを繰り返していました。

 ただし、1兆円という裁定買い残高は、長い目で見て決して高い水準ではありません。過去には3兆円から4兆円まで増えたこともありました。米景気がソフトランディング(軟着陸)し、2024年にかけて世界景気が回復に向かうならば、裁定買い残高は2兆円に向けてさらに増加していくと予想されます。

 一方、米景気がハードランディング(景気の急激な失速)となり、2008年のリーマン・ショック並みの世界景気後退が起こるならば、日本の景気は腰折れし、裁定買い残高が減少に向かう可能性もあります。

 裁定残高だけから、先行きの予想はできませんが、投機筋の動きが丸見えとなるので、しっかり見ていく必要があります。

 今後、裁定残高の変化で気付くことがあれば、本コラムで継続して報告します。

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