三大割安株が2020年まで低迷、2021年から好調な理由

 三大割安株が2020年まで不人気だったのは、それまでの経済環境が逆風だったからです。2021年以降、株価が好調なのは、経済環境が追い風になったからです。

【1】金融株

 2020年まで世界的に金利低下が続いたため、金融株が売られました。金利が低下すると銀行などの金融株は利益が出しにくくなるというイメージがあったからです。実際には低金利でもしっかり利益を稼ぐ金融株は多数ありました。きちんと利益も配当も出しているのに、金利低下で株価の低迷が続いたため、金融株には割安株が多くなりました。

 2021年以降、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)が急激な利上げを行い、ドル金利が上昇に転じたことによって世界的に金融株が上昇に転じると、日本の金融株も上昇し始めました。

 日本銀行も2022年12月に、0%近辺に抑えていた日本の長期(10年)金利の上限を0.25%から0.5%程度に引き上げると、日本の金融株の上昇が加速しました。

 日銀が長期金利を0%近辺に誘導するこのYCC(イールドカーブ・コントロール、長短金利操作)政策によって、これまで国内の銀行は痛めつけられてきました。昨年12月のYCC修正に加え、日本のインフレ率が上昇してYCC自体を撤廃する機運も出てきていることが株価の追い風となっています。

日米長期(10年)金利の月次推移:2007年1月~2023年5月(24日)

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

【2】資源関連株

 2020年まで世界的に原油などの資源が慢性的に供給過剰で価格下落が続いたため、資源関連株は不人気でした。それでも資源関連株はそこそこ利益を出していましたが、株価低迷が続いたため割安株が多くなりました。

 2021年以降、世界景気回復で資源価格が上昇を始め、さらに2022年2月24日にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、エネルギー価格が急騰すると、資源価格の上昇に弾みがつきました。その後、資源価格は下落に転じていますが、それでもまだ全般的に高止まりしているため、資源関連株の株価は堅調に推移しています。

 以下、CRB指数の動きから、それが分かります。CRB指数とは、エネルギーや貴金属、農産物などの価格を幅広く取り込んだ指数で、世界的な資源・穀物価格の推移を表す代表的指数です。

CRB指数の月次推移:2000年1月~2023年5月(23日)

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

【3】製造業が低迷した理由

 2020年まで、世界的にデフレが広がったことが製造業にとって逆風でした。モノは一時的に不足しても、すぐに大量生産されて供給過剰になって、価格が下がってしまうのが、当たり前でした。

 製造業では稼げない時代になったと考えられていたため、自動車・鉄鋼・化学などの製造業株は、そこそこ利益を出しても株価の低迷が続きました。自動車などの製造業には、割安株が増えました。

 2021年以降、米国や欧州を中心に、深刻なインフレが起こったことが、製造業全般に追い風となりました。当初はエネルギー・穀物中心の物価上昇でしたが、次第に賃金・物価全般に上昇が広がっており、それが製造業全般の業績を押し上げる段階に入っています。

 インフレは製造業に追い風です。値下げが当たり前だった製造業で、値上げが通るようになると、業績にプラスです。原料高に対応した値上げができずに業績が悪化する製造業もありますが、製造業全般を見渡すと、値上げや数量増の恩恵で増益となる銘柄が増えています。

 ただ、欧米と比較すると日本ではまだ製造業による価格転嫁が十分には進んでいません。日本の製造業株は、金融株や資源関連株ほどには上昇していません。

日米インフレ率(CPI総合指数前年比上昇率)の推移:2020年1月~2023年4月

出所:米労働省および総務省より楽天証券経済研究所が作成