先週末16日(金)の日経平均株価は3万3,706円で取引を終えました。前週末終値(3万2,265円)からは1,441円の大幅高だったほか、節目の3万3,000台にも乗せてきました。週足ベースでも10週連続の上昇です。

 今週は、国内では5月の消費者物価指数、米国でも同じく5月の住宅関連指標(住宅着工件数・中古住宅販売)などがあるものの、全般的に経済指標の公表が少なく、19日(月)の米国株市場や、22日(木)の中国株市場が休場となります。

 日米欧の金融政策イベントをはじめ、注目の経済指標が相次いでいた先週と比べると、今週は手掛かり材料が乏しく、株式市場は市場のムードの変化に敏感に反応しやすい展開が見込まれまれます。そのため、日本株を取り巻く環境の強さを保てるかどうかが今週の焦点になります。

 そこで、まずはいつものように先週の日経平均の状況から確認していきます。

先週の日経平均は天井サインを退けて、バブル後の高値を更新

図1 日経平均(日足)の動き (2023年6月16日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて先週の日経平均の値動きを振り返ると、週を通じて上昇基調が続きました。

 前回のレポートでは、天井サインとされる「包み足(抱き線)」が6月7~8日の取引で出現し、「上昇基調を維持するためには、この時の高値(7日の3万2,708円)を早い段階で超える必要がある」と指摘しましたが、13日(火)の段階であっさりクリアし、その後の3万3,000円台乗せの上昇へとつながった格好です。

 また、ローソク足の並びを見ると、陽線(終値が始値よりも高い線)が目立っています。しかし、実は日々の動きを追っていくと、取引時間中に前日比でマイナスとなっていた場面も多くあり、プラスに切り返す買いの強さが感じられる半面、次第に売りも増えつつある印象も残しています。

 また、前回のレポートでは、下の図2にもあるように、日経平均の上値目標の計算値についても紹介しました。

図2 日経平均の目標値計算(2023年6月16日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週の上昇によって、日経平均はVT計算値(3万3,004円)超えを達成しました。

 ただ、次の目標値であるV計算値(3万6,747円)やN計算値(3万9,037円)までの距離はかなり残っているため、今週も上昇基調が続いた場合には、ひとまず、節目の3万4,000円を目指すことになりそうです。

 ちなみに、16日(金)の現物取引終了後の日経225先物取引では、取引時間中に3万4,000円ギリギリまで上昇する場面がありました。

目先の日経平均の想定レンジは3万4,600円~3万1,500円

 そこで、目先の日経平均の想定レンジについて考えていきます。こちらも前回と同じく、25日移動平均線乖離率の推移をボリンジャーバンド化したものを参考にします(下の図3)。

図3 日経平均の移動平均線乖離率(25日)のボリンジャーバンド(2023年6月16日取引終了時点

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 ちなみに、前回のレポートでは、前週末(6月9日)時点の値をベースに計算し、上値を目安として紹介しました。

 具体的には、25日移動平均線が3万715円、乖離(かいり)率がプラス5.05%でしたので、「プラス10%まで乖離した際には、3万3,786円までの上昇もあり得る」としていましたが、先週の高値が16日(金)の3万3,772円でしたので、上値の目標はほぼ想定通りだったと言えます。

 もっとも、先週の乖離率の推移をたどっていくと、12日(月)がプラス5.12%、13日(火)がプラス6.49、14日(水)がプラス7.44%、15日(木)がプラス6.79%、16日(金)がプラス6.91%となっていて、実際にはプラス10%まで乖離はしませんでした。

 しかし、日々切り上がっていく移動平均線から5%を超える乖離率をキープしながら、株価が上昇していきました。

 今回も一応、先週末16日時点の値で計算していくと、25日移動平均線が3万1,528円ですので、プラス10%乖離で上値の目安が3万4,680円となります。

 反対に、下落に転じた場合には、マイナス2σ(シグマ)や0%乖離(つまり25日移動平均線まで)が目安となります。先週末16日(金)時点のマイナス2σは3万2,453円です。

 また、ボリンジャーバンドの幅が狭くなっている点にも注目です。こうしたバンドの幅が狭くなる状況を「スクイーズ」と言いますが、相場が大きく動き出した際、それに伴ってバンドの幅も拡大していくため、スクイーズの出現は「そろそろ大きく動きそう」という予兆を感じさせるサインとなります。

 さすがにスクイーズだけでは、どちらに動き出すかまでは分かりませんが、足元の乖離率がプラス方向に進んできたことを考慮すれば、乖離の修正に動く可能性は高そうですので、意識しておきたいところです。

 次に、足元の株価上昇の強さについても考えていきます。

目先の焦点は株価と13週移動平均線との関係

図4 日経平均(週足) (2023年6月16日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図4は前回のレポートでも紹介した、日経平均の週足チャートですが、株価の下落トレンドから底打ち、そして上昇トレンドに至った過程を示しています。

 前回は、足元の上昇トレンドと、コロナショック後の上昇トレンドとの比較をしました。コロナショック時は、いわゆる「値幅調整」後に、移動平均線が期間の短い順に並ぶ「パーフェクト・オーダー」が出現して上昇トレンド入りし、今回については、「時間調整」後にパーフェクト・オーダーが出現して上昇トレンド入りしています。

 今回注目するのは、上昇トレンドにおける株価と13週移動平均線との関係です。図を見ても分かるように、現在の株価と13週移動平均線との距離がかなり空いています。乖離率で見ていくと、週末16日(金)時点でプラス13.33%です。

 また、ここまで乖離が進んだ局面をチャートで過去にさかのぼって探っていくと、コロナショック後の反発局面の2020年6月5日にプラス16.64%まで乖離が進む場面がありましたが、その後に上値が重たくなり、しばらくもみ合いが続いて乖離が修正されていきました。

 今回も株価の上昇が一服して、移動平均線のキャッチアップを待つ時間調整となるのか、もしくは株価が下落して移動平均線に近づく値幅調整となるのかは分かりません。

 そして、週足ベースで10週連続の上昇を見せている日経平均も、アベノミクス開始時には12週連続上昇の記録もあり、まだまだ上昇していく可能性もありますが、この両者の乖離傾向はそう遠くない未来に修正されていくことになります。

 となると、気になってくるのが、「今の相場がいったん天井をつけた後の相場展開がどうなりそうなのか?」です。こちらについては、相場の波(波動)で考えていきたいと思います。

今の相場の流れでつけた天井が当面の高値となる可能性も

図5 「エリオット波動」で捉えた日経平均(週足) その1(2023年6月16日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図5は、先ほどの図4と同じ日経平均の週足チャートを、「エリオット波動」の視点で見たものになります。

 エリオット波動とは、簡単に言ってしまうと、株価の上げ下げの状況を一定のルールに基づいて測定し、相場の動きを波(波動)として捉えて、今の相場状況が、「どのようなリズムで動いてきたのか」や、「足元の状況が相場の波のどこに位置しているのか」、「今後どうなりそうなのか?」などを考えていく手法です。

 また、エリオット波動については、同じチャートでも、人によって測定するポイントが異なることも珍しくなく、客観性に欠ける面もありますが、コロナショック時の安値(2020年3月19日週)を起点とした場合、2022年3月11日週の安値をつけたところで1サイクルが終わり、現在はそこから始まった次のサイクルの「3波」を形成している途中に位置していると考えられます。

 細かい状況や分析はいったん脇において、図5で注目したいのが、「3波」と「5波」の位置関係です。2022年3月11日週を起点とした1サイクル目の3波と5波はほぼ同じ水準となっています。

 足元のサイクルについても、3波が終わって調整を迎えた後、5波の株価上昇の展開となっていきますが、前回のサイクルと同様に、5波が3波につけた高値を超えきれない可能性も考えておく必要がありそうです。

 なお、チャートをさらにさかのぼって、もう1サイクル過去の状況を見ても、5波でつけた高値が3波を超えきれていない状況となっています(下の図6)。

図6 「エリオット波動」で捉えた日経平均(週足) その2(2023年6月16日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 コロナショック時のサイクルから、もう1サイクル前の起点となるのが、2016年の6月になります。

 いわゆる「ブレグジット(英国のEU[欧州連合]離脱)」が話題となっていた時だったのですが、この時も5波がと3波を大きく上回ることができませんでした。

 直近の2サイクルの傾向から、今回も、5波の上昇が訪れた際に3波の高値水準で上値が重たくなる可能性があり、「足元の相場がつけた高値が、当面の天井になるかもしれない」という意識が強まるかもしれません。

図7 「エリオット波動」で捉えた日経平均(月足) (2023年6月16日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 さらに、上の図7の月足チャートでもう1サイクル過去にさかのぼってみると、今度は「アベノミクス相場」時となりますが、このときは5波が3波を大きく上回っています。

 今の相場がアベノミクス相場のような大相場となれば、次の5波が大きく伸びる格好となり、図2のV計算値(3万6,747円)やN計算値(3万9,037円)の達成もあり得ると思います。

 とはいえ、確かに足元の相場は強いものの、果たしてそこまでの大相場になりそうなのかについては、現時点ではまだ見えていません。

 したがって、現在の相場の視点は「どこまで株価が上昇しそうか?」に向かいがちですが、本当に注意したいのはさらにその先で、相場が調整局面に入ったとき、「時間調整なのか、それとも値幅調整なのか」の違いによって押し目買いのポイントやタイミングが異なってくることや、株価が再び上昇した時の上値が重たくなりそうな可能性など、相場の難易度がグッと高くなるのは、「今の相場が天井をつけた後」になりそうです。