4月の中国経済統計は前年同月比で増加も市場予想を下回る

 それでは、ここから統計局が発表した2023年4月の統計結果を見ていきましょう。左が最新の数値、右が2022年4月の数値です。

中国の主要な経済指標

  2023年4月 2022年4月
工業生産 5.6% ▲2.9%
小売売上高 18.4% ▲11.1%
固定資産投資(1-4月) 4.7% 6.8%
不動産開発投資(1-4月) ▲6.2% ▲2.7%
中国国家統計局の発表を基に筆者作成。工業生産、小売売上高は前年同月比。固定資産投資、不動産開発投資は1-4月累計の前年同期比。▲はマイナス。

 まず、2023年4月は前年同月と比べて、工業生産、小売売上高が大幅に伸びていることが分かります。ただ、2022年4月は前年同月比マイナスと大きく低迷したため、その反動で2023年の伸び率が大きいのは当たり前です。むしろ、5.6%増、18.4%増という数値はそれぞれ市場予想の10.9%増、21.0%増を下回りました。

 固定資産投資は1-4月で4.7%増と、市場予想の5.5%増に届きませんでした。1-3月の5.1%増と比べても伸び率が鈍化しています。さらに、2022年を通じて10.0%減と過去最悪を記録した不動産開発投資は、1-4月で6.2%減となり、1-3月の5.8%減と比べて減少率が広がっています。

 そして、この期間懸念されてきた雇用動向です。ここで改めて説明しますが、中国政府が公式に発表する失業率は、(1)調査できる範囲における、(2)農村部を含まない数値です。よって、実際の失業率は発表される数値よりも高いと見るべきです。

中国の雇用統計

  2023年4月 2023年3月 2022年4月
調査失業率(除く農村部) 5.2% 5.3% 6.1%
同25~59歳 4.2% 4.3% 5.3%
同16~24歳 20.4% 19.6% 18.2%
中国国家統計局の発表を基に筆者作成。数字は前年同月比。▲はマイナス。

 その前提で、2023年4月の失業率は5.2%と、直近の3月(5.3%)、前年同月(6.1%)と比べて改善しています。景気指標と見てよい25~59歳、すなわち労働適齢人口のそれも2023年4月は4.2%となり、直近の3月(4.3%)、前年同月(5.3%)に比べて改善しています。

 気になるのは若年層で、2023年4月、過去最高となる20.4%を記録しました。夏には過去最多の1,160万人の大学卒業生が市場に流れ込んでくる見込みで、この20.4%という数値がさらに上昇する可能性も大いにありです。

 若年層の失業率上昇が、そのまま景気悪化を招くわけでは必ずしもありませんが、中国では、各家庭子供の教育には巨額の投資をするのが常です。せっかく育て、費やしたのに、大学や大学院卒業後職に就けない、起業もできないという状況が固定化してしまえば、当然個人消費や成長率にも影響してきますし、何より国家の将来を担う若者の士気を悪化させ、場合によっては、深刻な社会不安を招くようなリスクも考えられます。いずれにせよ、若年層の失業率が前代未聞に上がっている現状は、中国経済にとっての実質的リスクと見るべきです。