増担保規制による影響の具体例は?
具体例を挙げて説明していきましょう。
証券会社の口座にて、時価200万円分の現物株式と、現金40万円を保有しているケースで考えます。現物株式は、掛け目80%で、信用取引の担保として使うことができます(代用有価証券と言います)。
したがって、代用有価証券200万円×80%=160万円と、現金40万円の200万円の担保(委託保証金)が使えることになります。
何も規制のない銘柄を200万円分信用取引で買おうとすると、必要な証拠金は200万円×30%=60万円です。200万円の保証金で賄え、まだ140万円分の余力があります。
もし、この銘柄に増担保規制の第一次措置が実施されると、その銘柄を200万円分買うのに必要な証拠金が200万円×50%=100万円、うち現金担保が200万円×20%=40万円必要となります。
証拠金の余力は100万円ありますが、現金担保の余力はもうなくなってしまいます。そして、信用取引ができる残りの枠が、規制がないときに比べ少なくなっていることがお分かりいただけますでしょうか。
さらに、増担保規制の第二次措置が実施されると、200万円分買うのに必要な証拠金は200万円×70%=140万円、うち現金担保が200万円×40%=80万円必要です。
こうなると、現金担保が不足してしまいますから、この銘柄を200万円分信用取引で買うことはできなくなってしまうのです。
増担保規制により実際に株価は下落するのか?
このように、増担保規制が厳しくなると、信用取引で必要となる証拠金が膨らむため、その銘柄の信用取引での売買を控えようとする動きが強まります。その結果、過度な信用取引が抑制され、株価の急激な上昇も落ち着いてくるようになるのです。
最近では、Abalance(3856)や、アースインフィニティ(7692)が、増担保規制をきっかけに株価が大きく下落しました。
このように、増担保規制の第一次措置が実施された銘柄の株価は値下がりすることも多いですが、中には増担保規制にはびくともせず、株価の上昇が続くものもあります。
そうなると、第二次措置、第三次措置と続いていくことになりますが、さすがに筆者の経験上、第三次措置まで実施された銘柄の株価は天井をつけて下がることがほとんどです。
Abalance(3856)の日足チャート(2023年2月10日~5月10日)
アースインフィニティ(7692)の日足チャート(2023年2月10日~5月10日)
保有株が増担保規制の対象となったらどうするか
では、自身が保有している株が増担保規制の対象となったらどのように対応すればよいのでしょうか?
個人投資家が中長期投資の対象とする銘柄は、増担保規制の適用を受けるケースは多くないですが、それでもテーマ株的要素が現れるなどの理由で、信用取引を中心に売買が活発化し、株価が急騰するようなことはあります。
増担保規制の第一次措置が適用される場合、株価は天井を付けて下がることもありますし、ほとんど影響なく株価上昇が続くケースもあります。
ただ、増担保規制は株価を下落させて過熱感を落ち着かせるために行う意味合いが強いので、基本的には「売り目線」でいた方がよいと思います。
とはいえ、株価が調整せずに上昇を続ける可能性もあるので、例えば増担保規制発動で半分売り、残りは5日移動平均線割れになったら売る、といったようにご自身でルールを決めておくのが良いでしょう。
なお、増担保規制が適用される銘柄は、株価の高騰により25日移動平均線からの上方乖離(かいり)率が大きくなっているケースが多いです。この状況では25日移動平均線割れで売却とすると、実際に25日移動平均線を割り込むころには利益が大きく削られてしまいます。
したがって、25日移動平均線を割り込むより前の、株価が高い状態で売却するようなルールを設定しておくことをお勧めします。
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