日米とも総合インフレ率がコア・インフレ率を下回る「クロス」発生

 日米とも、一時高まったインフレ率が、低下しつつあります。日米とも、総合インフレ率が、コア・インフレ率(日本はコアコア・インフレ率)を下回る「クロス」が発生しました。エネルギー価格の前年比上昇率がマイナスに転じたためです。

 まず、下図の、12日に米労働省が発表した3月の総合インフレ率(CPI(消費者物価指数)前年比上昇率)と、コア・インフレ率(コアCPI前年比上昇率)をご覧ください。

 3月の総合インフレ率は2月(6.0%)から3月(5.0%)へ一気に1.0ポイントも低下しました。一方、コア・インフレ率は2月(5.5%)から3月(5.6%)に上昇しました。このため、クロスが発生しました。

 なお、コアCPIとは、変動の大きいエネルギー・食品を除いたCPIのことです。

米インフレ率(CPI総合・コア指数前年比上昇率)推移:2020年1月~2023年3月

出所:米労働省より楽天証券経済研究所が作成

 次に、4月21日に総務省が発表した、3月の日本のインフレ率(CPI総合指数とコアコア指数の前年比上昇率)をご覧ください。日米のインフレ率を比較する場合、米国のコアCPIと、日本のコアコアCPIを比較する必要があります。ほぼ定義が同じだからです。

日本のインフレ率:2023年3月

出所:総務省統計局より楽天証券経済研究所が作成

日本の総合インフレ率、コアコア・インフレ率推移:2020年1月~2023年3月

出所:総務省統計局より楽天証券経済研究所が作成

 米国の悪いインフレはようやく収束しつつあります。一方、日本の良いインフレは拡大しつつあります。

 悪い・良いとは、景気・企業業績・株価にとって、という意味です。米国は行き過ぎたインフレが、景気・企業業績・株価に悪影響を及ぼす懸念がありますが、ようやく低下しつつあります。

 日本にもやっとインフレの風が吹き始めました。コアコア・インフレが3.8%まで上昇したのは、企業業績に追い風です。値下げばかりで値上げができない国だったのに、値上げが受け入れられる国になったことは、企業業績にとって干天の慈雨です。

 エネルギー価格上昇の輸入インフレがマイナスになる中、コアコア・インフレの高止まりが続けば、企業業績・株価にプラスです。