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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
【日本株】日経平均どうなる?米国の悪いインフレ、日本の良いインフレいつまで?

米景気不安あっても日本株は堅調

 先週(4月17~21日)の日経平均株価(225種)は、17日(月)から49円上昇して、21日(金)には2万8,564円をつけました。

 米景気への不安で米国株の上値が重い中、日経平均が相対的に強い状況が続いています。

日経平均とナスダック総合指数の動き比較:2021年末~2023年4月20日

出所:2021年末の値を100として指数化、QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 米景気悪化の不安、米利上げが続く不安から米国株の上値が重くなっていますが、日本の経済環境は、米国とは異なります。

 日本はインフレが米国ほど深刻でないこと、日本は大規模金融緩和が続いていること、リオープン(経済再開)による消費回復がこれから期待できることなどから、外国人投資家が目先、相対的に日本株を選好する可能性があります。

日米とも総合インフレ率がコア・インフレ率を下回る「クロス」発生

 日米とも、一時高まったインフレ率が、低下しつつあります。日米とも、総合インフレ率が、コア・インフレ率(日本はコアコア・インフレ率)を下回る「クロス」が発生しました。エネルギー価格の前年比上昇率がマイナスに転じたためです。

 まず、下図の、12日に米労働省が発表した3月の総合インフレ率(CPI(消費者物価指数)前年比上昇率)と、コア・インフレ率(コアCPI前年比上昇率)をご覧ください。

 3月の総合インフレ率は2月(6.0%)から3月(5.0%)へ一気に1.0ポイントも低下しました。一方、コア・インフレ率は2月(5.5%)から3月(5.6%)に上昇しました。このため、クロスが発生しました。

 なお、コアCPIとは、変動の大きいエネルギー・食品を除いたCPIのことです。

米インフレ率(CPI総合・コア指数前年比上昇率)推移:2020年1月~2023年3月

出所:米労働省より楽天証券経済研究所が作成

 次に、4月21日に総務省が発表した、3月の日本のインフレ率(CPI総合指数とコアコア指数の前年比上昇率)をご覧ください。日米のインフレ率を比較する場合、米国のコアCPIと、日本のコアコアCPIを比較する必要があります。ほぼ定義が同じだからです。

日本のインフレ率:2023年3月

出所:総務省統計局より楽天証券経済研究所が作成

日本の総合インフレ率、コアコア・インフレ率推移:2020年1月~2023年3月

出所:総務省統計局より楽天証券経済研究所が作成

 米国の悪いインフレはようやく収束しつつあります。一方、日本の良いインフレは拡大しつつあります。

 悪い・良いとは、景気・企業業績・株価にとって、という意味です。米国は行き過ぎたインフレが、景気・企業業績・株価に悪影響を及ぼす懸念がありますが、ようやく低下しつつあります。

 日本にもやっとインフレの風が吹き始めました。コアコア・インフレが3.8%まで上昇したのは、企業業績に追い風です。値下げばかりで値上げができない国だったのに、値上げが受け入れられる国になったことは、企業業績にとって干天の慈雨です。

 エネルギー価格上昇の輸入インフレがマイナスになる中、コアコア・インフレの高止まりが続けば、企業業績・株価にプラスです。

日本は米国よりも景況が良好

 米国株の上値はまだ重いままと思われます。3月のISM(米サプライマネジメント協会)景況指数で、米景気の冷え込みが懸念された影響も残ります。

ISM景況指数:2018年1月~2023年3月

出所:米ISM供給公社のデータをもとに、楽天証券経済研究所が作成

 一方、日本は相対的に景況が良好です。日本銀行が3日に発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)では、大企業・製造業の景況感を表すDI(業況判断指数)が+1と大きく低下しましたが、まだマイナスにはなっていません。大企業・非製造業DIは+20と高水準です。製造業が低く、非製造業が高いのは米国と同じですが、ともに、米国よりも景況は高い水準です。

日銀短観、大企業製造業・非製造業DIの推移:2018年3月~2023年3月

出所:日本銀行「短期経済観測」より楽天証券経済研究所が作成

日本株の投資判断

 日本株の投資判断は変わりません。日本株は割安で長期的に良い買い場を迎えていると考えています。

 ただし、米景気減速への不安、米利上げが続く不安は残っていることから、一本調子の上昇は見込めないと考えています。時間分散しながら割安な日本株を少しずつ買い増ししていくことが長期的な資産形成に寄与すると考えています。

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