「疑う」ことが、もはや常識に

 足元、生成AIは驚きや称賛を集めていますが、同時に、批判や警戒の対象になっています。以下は、話題の生成AIに「原油相場はなぜ下がらないのですか?」と尋ねたときに生成された回答です。

 一見、流暢に答えている生成AIですが、よく見ると「軽薄」感が否めません。具体的な言及が少なく、回答から事象の全体像を把握することができない、一部に誤解を招きかねない「言い過ぎ」が散見される、羅列された回答に「時間軸」「影響度」がない、各事象がこれまでどのように影響を与えてきたのかわからない(今後の展開のイメージが湧きにくい)、などの問題があるためです。

 特に、市場分析で重要な「時間軸」への考慮がない点は、重大な欠点であると、筆者は感じています。「代替エネルギー」という長期の時間軸のテーマと、「投資家の期待」という超短期の時間軸になり得るテーマが「並列」に扱われている点は、読み手に大きな(大きな)誤解を与えかねません。

図:生成AIの問題点(現時点)

出所:各種情報源より筆者作成

「わかった気になる」「それっぽい」は、人間が持つ特技である「深い思考」を奪います。人間から深い思考を奪ったら何が起きるでしょうか。このようなことは断じてあってはなりません(「深い思考」があるから、夢を描いたり、誰かを想ったり、心に豊かさをはぐくんだりできるのです)。

 生成AIが台頭しつつある世の中で、わたしたちがすべきことは、「正しく疑う」ことです。簡単に言えば、うのみにしないことです。こうした思考が、人間の正常な思考を維持するのです。