「分断」はある。きれいな事ばかりではない
ヨーテボリ大学(スウェーデン)のV-Dem研究所は、「自由民主主義指数」の最新版(2022年版)を公表しました。この指数は、行政の抑制と均衡、市民の自由の尊重、法の支配、立法府と司法の独立性など、自由や民主主義をはかる複数の側面から計算されています。
0と1の間で決定し、0に近ければ近いほど、民主的な傾向が弱い(民主的ではない)、1に近ければ近いほど、民主的な傾向が強いことを示します。
以下は、同指数が0.8以上ある民主的な傾向が強い国と、0.2以下の非民主的な傾向が強い国の数の推移です。
ベルリンの壁崩壊(1989年)や、EU(欧州連合)発足(1993年)前後の、民主的であることが正義、とすら言われた時代は、非民主国家の減少と民主国家の増加が同時進行しました。しかし、2020年以降。逆の傾向が鮮明になっています。世界は再び「分断」に向かいつつあるのです。
図:自由民主主義指数0.2以下および0.8以上の国の数(1947~2022年)
西側諸国が「環境問題」を強力に推進しはじめ、産油国・産ガス国とのあつれきが大きくなったこと、欧米が「人権問題」を強く主張したため、独裁国家からの反発が強くなったこと、などが「分断」の背景にあると考えられます。つまり、「西側」と「非西側」の間にある溝が、年々深まっているのです。
日本で暮らしていると、こうした意識は生じにくいですが、世界全体を俯瞰すると「分断」は、存在するのです。
また、「分断」をきっかけに起きている「争い」は、(1)物理的争い(戦争、紛争)、(2)政治的争い(枠組、関税)、(3)思想的(人権、環境)などに分類できます。「分断」は、目に見える・見えないに関わらず、「争い」のきっかけになるのです。
「分断」の解消が、同危機や「インフレ」の沈静化に最も有効な手段です。制裁(不買い、ビジネス撤退、関税引き上げなど)は、直接的な沈静化策ではありません。
「インフレ」の沈静化のために、ウクライナ危機を終わらせなければならないのです(今の日本では、この議論が欠けている。インフレとウクライナ危機が別物として語られている)。