「誰かのせいにしない」。年金にも政府にも期待するな

 アルバイトの話に戻ると、あなたはたぶん、「バイト料をもらった」つもりでいるだろうけど、実際には価値をつくり出した対価として「稼いだ」ものであり、オーナーから「もらった」ものではないよね。

 チョコレート会社の従業員たちも、給料を会社からもらっているのではなくて、製造現場でチョコレートを作ったり、カカオ豆を仕入れる係として働いたり、梱包したり、お店へ運んだりして価値をつくり、その対価としてお金を稼いだ。社長から給料をもらったわけではない。

 ここが大切なところですが、「お金はもらうものではなく、稼ぐもの」なのです。もらうものだと思い込んでいるから、休みなく働かされるブラック企業に対して文句を言いつつ辞めることができない、なんてことが起きます。給料をもらえなくなるから、どんな状況に追い込まれても会社に依存してしまう。

 でも給料を稼ぐ(稼ぐ能力が必要ですが)ことができれば、すぐに転職できます。会社と働く人の立場は、対等。価値を提供するのは、あなたです!

 チョコレート会社に話を戻すと、「会社は全て自分たちでつくり出して利益を得たわけではない」ことも肝に銘じておかなければなりません。カカオ豆は農家が育てたし、チョコレート工場にある製造機械は機械製造会社が造り、チョコレートを運ぶ車は自動車会社が造り、その燃料は石油会社が精製した。

 世の中はチームで動いているわけ。だから利益を独占しようと考えてはいけません。今のパナソニックの創業者で経営の神様と呼ばれた松下幸之助さんも、「自分の生み出した価値の10%が自分のものになればいい」という考え方を持っていました。会社として動いている以上、自分で全てをできるわけではないし、みんなで配分しようということですね。

 さて、給料はもらうものではなく、自分で稼いだものという理屈がわかれば、老後に受け取る年金だってアテにしてはいけないことがわかるはずです。今の日本の公的年金制度は、加入を義務づけているから、それを否定するつもりはないけれど、頼る一方ではダメ。

 公的年金制度の仕組みは、現役世代が納める保険料で、その時々の高齢者世代に年金を給付する「賦課(ふか)方式――世代間の支え合い」で成り立っています。

 だからといって、現役世代に頼る、国に頼ると考えてはいけません。豊かな老後の生活を送るためには、自分が現役世代のうちに自分で稼いで十分な蓄えを持たなければなりません。

 みんながそういう考えを持って「自立」すれば、社会にお金の余裕が生まれて、障害のある人のように社会的に不利な立場にある社会的弱者を助けることができます。