米株下落の理由(1)米利上げ加速の不安

 株式市場は、パウエルFRB議長の発言から先行きの金融政策の示唆を得ます。議長の発言が最近変わるので、その都度、今後の利上げがどうなるか、市場のセンチメントが変わっています。最近、話題になったのは、以下三つの発言です。

【1】2月1日:FOMC後の記者会見

「ディスインフレ(インフレ収束)が始まっている」と発言。株式市場で利上げ停止が近づいているという解釈が広がりました。

【2】3月7日:米上院で議会証言

「必要であれば利上げ幅を再び拡大することもあり得る」と発言。株式市場では3月21~22日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、0.5%の利上げが実施される可能性が高いとの解釈が広がりました。

【3】3月8日:米下院の公聴会での証言

「3月のFOMCでどうするかは、まだ何も決定していない。今後のデータ次第」と発言。上院公聴会のパウエル発言を受けて、市場で「3月FOMCで利上げ幅を0.5%に拡大する示唆」との解釈が広がっていることに対し、「まだ決まっていない」としました。

 株式市場では、依然として0.5%の利上げの確率が高いとの解釈が優勢ですが、2月の雇用統計やCPIを見極める必要があるとの見方も出ました。

 利上げが加速する不安が出る中、3月10日に発表された米雇用統計は強く、利上げ幅が0.5%に拡大する不安は残ったままです。

非農業部門の雇用者増加数(前月比):2019年1月~2023年2月

出所:米労働省より作成

 非農業部門の雇用者増加数は31.1万人で、事前予想(20万人強)を上回りました。1月が50万人を超え、雇用が想定以上に強いことを印象づけました。3月も雇用の強さを再確認する内容でした。

完全失業率:2014年1月~2023年2月

出所:米労働省より作成

 失業率は1月より0.2ポイント上昇して、3.6%となりました。実質完全雇用で、コロナ前の3.5%とほぼ同水準で、強い内容でした。

 平均賃金は前月比で0.2%の伸びでした。市場予想(0.4%増)より低く、賃金の伸びは落ち着いてきていると見られました。2月の米雇用統計を総括すると、雇用増が大きく、雇用は強いことが再確認されたものの、賃金はやや落ち着いてきたと見られました。